Twenty-six Memorise
それから何週間後、も大分、学校に馴染み始めたころ、待ちに待ったハロウィン・仮装パーティが始まった。その日の雰囲気創りは完璧だった。
は、マグルが創り出した魔女像に扮したハーマイオニーと一緒に大広間に向かった。ハリーとロンはバンパイアと神父に扮して先に大広間に行っていた。
談話室から大広間に向かう途中、はジロジロと周りから見られているのを感じた。しかし、ハーマイオニーの影に隠れようとすると、サッとハーマイオニーが移動してしまって隠れることができない。どうやら、ハーマイオニーはが恥ずかしがって隠れようとしているのに気付いているらしい。
途中、マルフォイやパンジーとすれ違ったが、彼らも他の人と同じようにをジロジロ見ただけだった。
永遠に大広間につかないのでは、とが絶望的に思った矢先、やっと大広間の扉が見えた。
「うわー!」
大広間のグリフィンドール寮のテーブルについたとたん、の周りに人が集まった。一方、隣に座ったハーマイオニーは迷惑そうにする様子もなく、楽しげに周りと会話していたが、目の前のハリーは仏頂面だった。
、とっても可愛い!」
の逆隣に座ったジニーが笑顔でそう言った。
「ジニーもそう思う?私たちの最高傑作なの!」
ジニーからニ、三席離れたところでラベンダーが声をかけた。
「ハーマイオニー、君がセットしたんじゃないの?」
ハーマイオニーの目の前に座っていたロンが聞いた。
「みんなでやったのよ。を可愛くしようって。みんなを可愛くするのには大賛成で、意見をまとめるのは苦労したわ」
ハーマイオニーがしみじみする横で、は先程の着替えの様子を思い出した。ハーマイオニーもラベンダーもパーバティも自分が気に入らなければ他人が整えた髪型や、服の型を構わず変えていく様子にあたって、ハーマイオニーの感想が正しいとは言えない。
、可愛いね」
ポンと肩をたたかれ振り向くと、アレン・フラシスだった。彼の恰好をじっと見たが、何かの仮装をしているようには思えない。
「アレンはなんの仮装してるの?」が首をかしげた。
「マグルの男性の正装さ。わざわざバンパイアや神父の恰好をする人の気がしれないね」
アレンはチラリと挑戦的な目をハリーとロンに向け、に「また後でね」と言うと彼は自分の友人たちと席についた。
「なんだ、あいつ!」
ロンが離れたところで友人と笑い合っているアレンをにらみつけた。
「ほっとけよ、ロン」ハリーが静かに言った。
「アレンはが好きなのよ」ジニーが口を挟んだ。
「嘘だろ?」
ロンはジニーの言葉を鼻で笑ったが、は――本当に好きなのかどうかは別として――アレンが自分と付き合いたがっているのは知っていた。ただ、そのことをみんなに言うつもりはなくて黙っていた。
「でも、はハリーが好きだし、ハリーはが好きだろ?割り込む隙間なんてないさ。ま、心配いらないよ。がアレンと付き合う確率は0だね」
勝手に話を完結したロンにハーマイオニーはやれやれとため息をついた。
「アレンがこのまま何のアプローチもしないで指をくわえて見てるなら、なんの心配もいらないけど、そうとは限らないでしょ」
ハーマイオニーは熱弁した。
「それに、私たちはの身を任せられているのよ?何かあってからじゃ困るわ」
「わかってるよ、冗談だよ・・・・・」ロンが急いで言った。
そのとき、ダンブルドアが立ち上がり、大広間は静かになった。ダンブルドアはハロウィン・仮装パーティの開始を宣言するとまた席に座った。とたんに大広間はまた賑やかになり、テーブルの上には色とりどりの食べ物で埋めつくされた。
は自分でも驚くほどたくさん食べた。デザートも一通り食べ、ハーマイオニーやジニーとしゃべっていると、ハロウィン・仮装パーティは終わりを告げられた。
ハリーとロンとハーマイオニーと一緒に大広間を出るとき、ちらっと振り返ると、狼を真似た姿をしたルーピンと目が合った。ルーピンはに手を振り、またはルーピンに頭をちょこんと下げた。しかし、内心では、ルーピンの姿が洒落にならないと、一人突っ込んでいたがルーピンに聞こえるはずもない。
、可愛いね」
「一緒に写真撮らない?」
は大広間から玄関ホールに向かう短い距離で、たくさんの男の子にそう声をかけられた。可愛い、と声をかけてくれた子には会釈を、写真を、と声をかけてくれた子には写真を撮らせてあげた。
それにいちいち付き合っているハリーたちも偉かったが、嫌な顔一つせずに行動するも優しいと思ったハーマイオニーだった。
しかし、そんな中にも下心丸出しの男子生徒もいるわけで、の手を握り、誘いをかけた。
「一緒に散歩なんてどうかな?」
「ちょっと外に行ってみない?星がきれいだよ」
もそれには流石に戸惑いを隠せなくて、どうしよう、とハリーを見上げた。
は僕らと一緒の方が楽しいって」
すると、必ずハリーはそう答えた。もちろん、確かにそれはにとって嘘ではなかったが、男の子たちは信じなかったようで悪態をつきながら自分たちの寮に帰って行った。
「まったく。自分たちの彼女を相手に口説きなさいよ」ハーマイオニーがつぶやいた。
「ホントだよ」
珍しくハリーが疲れたような声でそう言ったので、は申し訳なく思った。
「ごめんなさい」
が謝ることないよ」
しかし、その返事はハリーから出たものではなく、たった今現れたルーピンから発せられた言葉だった。
「ル、ルーピン先生!」
四人とも飛び上がった。
「ひどいなぁ。そんなに驚くことはないだろう?」
ルーピンはひどく傷付いた、という顔をしたが、目は笑っていた。
「ところで
ルーピンはに向き直ると苦笑いした。
「ジェームズがさ、君の仮装姿の写真を送れってうるさいんだ――正しく言えばジェームズの守護霊だけどね」
ルーピンが振り返った先には確かにジェームズの守護霊が浮いていた。
「あ、良いですよ」
はにっこり笑った。しかし、それはさっきまで他の男の子に向けていたものとは違い、温かみがあった。
「そう?じゃあ、お言葉に甘えるよ」
ルーピンはカメラを構えて、一人を写した。
「ありがとう、。きっと近々、ジェームズからこれのお礼の手紙でもくるんじゃないかな――それと、ハリー」
ルーピンがにっこりとハリーに笑いかけた。
に手を出す男は片っ端から退治しろって」
それじゃあ、とルーピンはご機嫌そうに自分の事務所に歩いて行ってしまった。
「絶対、その意見は父さんだけのものじゃない気がするけど」
ハリーは再びため息をつくと、もう四人以外いなくなった階段を上り始めた。

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