「本当?」
は遠退きそうになる意識を必死に繋ぎとめながらアレンを見つめた。
「本当さ。嘘はつかないよ」
アレンはにこっと笑った。
「ねえ、。よりを戻さない?僕、が記憶なくても好きだからさ」
はじっとアレンを見つめた。逆隣ではハーマイオニーたちがハロウィン・仮装パーティーの話で盛り上がっている声が聞こえた。
「ごめんなさい、アレン。今は返事出来ないわ。私、あなたがどんな人か知らないし・・・・・」
「いいよ」
アレンは笑みを絶やさなかった。
「そんな返事だろうと思ったし。また君に告白するよ――もちろん、君が十分に僕を知った後にね」
「ちょっと、席代わってくれるかな。まだ僕たち、夕食食べてないんだ」
アレンの後ろに立っていたのはハリーだった。練習が大変だったのか、顔が赤い。
「ああ、ごめん、ハリー。今、どくよ――じゃあね、」
アレンはの頭をポンポンと撫でると、ハリーに不敵な笑みを向けて立ち去った。しかし、ハリーも怯むことなく、アレンをにらみ返した。
「アレン・フラシスだろ?今の。、いつ知り合ったの?」
ロンが身を乗り出してに聞いた。ハリーを挟んでいるので、身を乗り出さない限り、が見えないのだ。
「たった今。話し掛けられたの」
は今の話をハリーたちに聞かれていないか不安だった。
「あいつがに何の用があるっていうんだ?」
ハリーのその言葉にはひそかに胸を撫で下ろした。どうやら聞かれてはいないらしい。
「ごめん、ハリー、ロン。私、ハーマイオニーにちょっと話があるの。先に談話室に戻っているわ」
はハーマイオニーに「ちょっと話が――」と言ってラベンダーたちから引き離した。
ハーマイオニーはの張り詰めた雰囲気を察して、大広間を出るまで声をかけなかった。
「どうしたの、?」
ハーマイオニーが人気のない廊下になってやっと、早足で前を歩くに問い掛けた。
「ねえ、記憶がなくなる前の私は誰かと付き合ってたの?」
は立ち止まるとハーマイオニーを振り返った。
「・・・・・どうしたの?いきなり」
ハーマイオニーは眉をひそめた。
「お願い、教えて」
の真剣な眼差しに、ハーマイオニーはたじろいだ。
「――わからないわ。でも、私の知っている限りなら、いないと思う。でも、あなたがみんなに秘密で付き合っていたのなら――」
ハーマイオニーは思わずから目をそらした。こんなに必死な眼差しなのに、自分は役に立たないことが辛かった。
「わからないわ」
「そう・・・・・」
は少し肩の力を抜いた。
「そう。ならいいの。ありがとう、ハーマイオニー」
はニッコリと笑った。もしアレンと付き合っていたとしても公認だったわけではないらしい。ならば、真偽は自分で確かめるしかない。彼女に、否、彼女たちにこれ以上、迷惑はかけられない。
はさっきとは打って変わって、楽しそうにハーマイオニーに問い掛けた。
「そうだ、ハーマイオニー。仮装パーティどんな仮装する?」
「そうね――」
ハーマイオニーも彼女が気まぐれで先程のようなことを聞いたのではないとわかっていたが、追求はしなかった。ただ、何か異変があったことだけはしっかり胸に刻み込んだ。
その後、二週間、アレン・フラシスから声をかけられることはなく、すれ違っても他の生徒と同じように短い挨拶を交わすだけだった。また、あれからに手紙が送られてくることはなく、「闇の印」のことも頭の隅に追いやられた。
それからさらに二週間過ぎて、ホグワーツは十月を迎えた。みんなの頭の中といえば仮装パーティのことばかりで、誰が何を着ていく、というような話が飛び交っていた。
「ねえ、は仮装パーティに何を着ていくの?」
ある日曜日、がロンとハーマイオニーのチェスをハリーと一緒に眺めていると、ディーンとシェーマスが話し掛けてきた。
も大分グリフィンドール生に溶け込んで、だいたいの人の名前はもう覚えていた。
「わかんない。でも変な恰好だけはしないと思うわ」が答えた。
「僕、は天使かプリンセスの仮装が似合うと思うな」
シェーマスがにこにこ笑いながら言った。
「ネビルもそう思わない?」
シェーマスがそばで宿題をやっていたネビルに話をふると、ネビルはちゃんと話を聞いていたようではっきりと頷いた。
「私がそんな仮装したって似合わないよ」
は一向にシェーマスの言葉を本気にする様子がない。
「似合うって。が天使かプリンセスの仮装して似合わないって思うやつは目がトロール並だね」
ディーンがそう言うと「そうだね」と、チェスをやっていたはずのロンから相槌の音が聞こえた。
「私が思うに、今のは天使って言うよりお姫様だと思うわ」
ハーマイオニーが話に加わって、はチェスの試合が終わったのだとわかった。
「シリウスに手紙を送ったら、可愛いドレスを送ってくれると思うよ」ロンが言った。
「ハリーはどう思う?」
はずっと話に加わらず、黙っているハリーに声をかけた。すると、ハリーはしばらく黙った後、ため息混じりに言った。
「はどんな恰好しても似合うって」
そうは言ったものの内心、ハリーはおもしろくなかった。ダンスパーティなどで真っ先に他の男子生徒に話し掛けられるのはだし、目を離すと他の男子生徒からダンスを誘われているしと、に可愛いらしい恰好をさせると良いことがないのは重々承知している。
しかし、ここで「には可愛らしい恰好はさせない」と宣言したとしても、具合が悪いのは明らかハリーの方だ。ハリーがを好きだというのは薄々と滲み出ているが、まだ確定される程まではきていない。そんな中で「可愛い恰好反対」などと言ったら、自分はが好きだと宣言しているようなものだ。
ハリーがそんなことを思っている間にも話はどんどん進んでいったらしく、ハロウィン・仮装パーティにはプリンセスの仮装をすることになっていた。
ハリーが頭を抱えたのは言うまでもない。
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