「、大丈夫?」
の目がゆっくりと開かれたのを見て、ハリーが心配そうに問い掛けた。
「・・・・・あれ?」
は何度か瞬きすると、自分がどこかのベッドの上で寝ていることに気がついた。
「気がついたか?」
ハリーの背後でシリウスも心配そうな顔をしてこちらを見ているのに気がついた。
「どこか痛いところとか、ある?」優しい声が聞こえたかと思うと、頬に温かな手が触れた。だった。
「私・・・・・」
は厨房にいたときのことを思い出したが、そこからどうやってこのベッドに移動したのかまったく記憶がなかった。また記憶喪失になったのかと不安そうな顔をするとシリウスが言った。
「スネイプとの個人授業のときに倒れたんだ――何故だかは知らない。リーマスが口を開かないんでね――スネイプが寝かせてれば、いずれ目が覚めると言うからお前のベッドで様子を見ていたんだ」
は記憶がなくなる一瞬前、確かに眩しい閃光に包まれた記憶があった。
「が目を覚ましたってみんなに言ってくるわ」
がホッとしたように立ち上がり、シリウスに言った。
「シリウス、セブルスに相当怒っているでしょうけど、彼を恨まないで。仕方なかったのよ、きっと・・・・・」
はそう言い残し、部屋を出ていった。
「、スネイプと何をやってたんだい?」ハリーが聞いた。
「・・・・・よくわからないわ」
は正直に答えた。『失神呪文』とか『盾の呪文』とか、結局自分に習得できたものはなに一つないのだから。
「スネイプのやつ」シリウスが憎々しげに呟いた。
「シリウス、駄目だよ。父さんも言ってたでしょう?の世話はスネイプに一任されてるから、僕たちが口を出すことじゃないって」ハリーはなだめるようにシリウスの腕を叩いた。
「口は出さない――」シリウスがぶっきらぼうに言った。
「――手は出すがな」
「シリウス、それじゃ一緒でしょ?」ハリーが苦笑した。シリウスもそれにつられて少し笑った。大分、機嫌は治ったらしい。
「、心配したよ!」
そのとき、勢い良くドアが開き、ジェームズがに抱き着いた。
「わ!」
は自分の体勢に赤面した。ベッドに寝ているの上に、ジェームズが馬乗りになっている。
「おい、ジェームズ!」
シリウスがジェームズをベッドから引きずり落とした。
「シリウス、一体なんなんだい?」ジェームズがふて腐れたようにシリウスを見上げた。
「なんなんだ、じゃねえよ!」シリウスはジェームズをにらみつけた。
「に抱き着くな、触れるな、
話し掛けるな!」
「――父さん、今、シリウスすっごく気が立ってるから・・・・・」
ジェームズが呆気にとられた顔をしていると、ハリーがフォローした。
「あぁ、スニベリーのことで?」
ジェームズがニヤリと笑った。
「あいつ、さっきダンブルドアから少しだけ小言をもらったよ。それに、もスニベリーの肩を持ってるように見えたけど、意外にもけっこう怒っているみたいだよ」
「でも、はスネイプのこと、かばってたけど」ハリーが口を挟んだ。
「シリウスがスネイプにケンカを吹っかけないようにだってさ」
ジェームズはクスクスと笑って、シリウスを見たあと、を見た。
「もう起き上がれるかい?」
はジェームズが差し出してくれた手を掴み、恐る恐る起き上がった。そして、そのままベッドから下りるとジェームズが安心したような微笑みを浮かべてに言った。
「うん、後遺症はなさそうだね」
「もし、あったらあいつはただじゃおかない」シリウスが吐き捨てた。
「も大変だね、こんな怒りっぽい父親で」
ジェームズが突然そう言うと、ハリーは思わず噴き出した。
「パパは十分すぎるほど優しいですよ」
しかし、はジェームズのおふざけには乗らず、真面目な顔をしてそう答えた。
「父さん、とシリウスは固い絆で結ばれてるから、父さんの入る隙間はないよ」
ハリーがクスクスと笑った。以前のならこういうとき、必ずジェームズの冗談に乗ったが、今のはそうする余裕がなかった。
「僕も娘が欲しかったなあ」ジェームズがうらやましげに言った。
「じゃあ、僕はシリウスの子供になろうっと」
ハリーがシリウスに抱き着くと、とうとうジェームズには味方がいなくなった。ジェームズは観念して真面目に役目を果たす気になったらしい。やれやれとため息をつきながらも、を厨房へと連れていった。
厨房には既にスネイプの姿も、ダンブルドアの姿もなく、ただ静かにリーマスととリリーが座っていた。
「、大丈夫?」
まず心配そうな顔をして駆け寄ってきたのはリリーだった。
「リリー、は無事よ」が椅子に座ったままリリーに声をかけた。
「それは知ってるわ、」リリーが答えた。
「そうじゃなくて、ジェームズに連れてこられたから心配なのよ――何もされてない?」
リリーの真剣な心配様に、流石のも緊張を解いてハリーやシリウスと一緒に笑った。
「リリー、一体、僕のこと、何だと思ってるんだい?」ジェームズがふくれて言った。
「、お腹へったでしょう?何か軽く食べた方がいいわ」
は未だにクスクス笑っているシリウスやリーマス、ハリーを横目に、キッチンへと歩いて行った。
「、手伝うよ」ハリーはシリウスの脇から飛び出し、のいるキッチンへと行った。
「それで――」夕食が始まると、真っ先にリリーが口を開いた。
「――はまだスネイプとの個人授業をするの?」
「みたいだよ」リーマスが誰も口を開かないうちに答えた。
「危険じゃないかしら」が心配そうに言った。
「今回は運よく気絶するだけで済んだけど・・・・・あたりどころが悪かったら死んでたわ」
「それはどんなときも同じだよ、」リーマスが表情固く言った。
「どういうこと?」リリーが眉をひそめた。
「ホグワーツにいたって、家にいたって、怪我をするときはするし、生きるときは生きる。そして、死ぬときは死ぬ――」
しばらくの沈黙の後、ジェームズが明るく言った。
「僕はが当分死なない方に賭けるね。彼女はまだやり残していることがある。それを成し遂げるまでは死ねないよね」
はジェームズの言葉に、ただ場の雰囲気を変えるためだけに頷いた。
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