Seventeen Memorise
、元気?
そう、誕生日プレゼントにシルバー・リング貰ったのね。多分、シリウスたちは知ってたんだわ。
あのね、誕生日に父親からシルバー・リングを貰ったっていうことは、幸せになれるのよ。そういうジンクスがあるから。
私たちも、あなたの誕生日パーティーに行けたらよかったのに。でも、ロンのお母様が許してくれなかったのよ。
もうすぐ新学期が始まるけど、あなたたちは新学期の教科書買いに、いつダイアゴン横町に行くの?

じゃあ、お返事待ってるわ。ハーマイオニー

、スネイプが君を呼んでる」
の部屋をノックして、ハリーが部屋に入ってきた。
「今行くわ」
はハーマイオニーからの手紙をたたみ、引き出しにしまった。シリウスたちから貰ったリングに、そんなジンクスがあるなんて知らなかった。
はそんなことを考えながら、ハリーと一緒に厨房まで降りて行った。たった今、会議が終わったようで、まだちらほらと騎士団のメンバーが残っていた。
「ハリー、ありがとう」ジェームズが立ち上がり、二人を席に座らせた。
・ブラック」
スネイプがシリウスの睨みを無視しながらを呼んだ。
「気安くわたしの娘の名前を呼ばないでほしいのだが」シリウスが言った。
「残念ながら、貴様の注文に一々取り扱っている暇など、我輩にはない」
スネイプは冷たく言い放った。
「授業は明日の夕方、会議が終わってから、厨房で行う」
がうんともすんとも言わないうちに、スネイプはさっさと厨房から出ていった。に拒否権はないらしい。
「あいつめ」
シリウスが嫌悪感をつのらせた。しかし、他の大人たちはすでにいつものことだと分かっているので、シリウスに構う者はいなかった。
「ハーマイオニー、なんだって?」
ハリーがに話し掛けた。
「誕生日パーティーに行きたかったって」が答えた。
「それと、いつ新学期の教科書を買いに行くの?って――新しい教科書って、私も必要?」
「もちろんさ」
ハリーとの間に、ジェームズが口を挟んだ。
「君だって七年生になるんだから」
「でも、魔法が使えないわ」
が困ったようにジェームズを見上げると、ジェームズの大きな手が、優しくの頭に置かれた。
「大丈夫。僕らも手伝うよ、君が魔法をコントロール出来るように。そしたら、新学期に魔法が使えるさ」
ね?と、ジェームズはに笑いかけた。
「でも、いつ買いに行こうかしら。まさか、またこの子たちを連れていくわけにはいけないし・・・・・」
リリーが頭を悩ます横で、ハリーが不満そうな声を上げた。
「行けないの?」
「当たり前でしょ」が答えた。
「この間行っただけでも冷や汗ものだったのに――だって、迷子になったのよ」
はちょっとすまなく思った。彼らが自分を心配してくれているのは十分に分かっている。
「もちろん、のせいじゃないわ――どっかの誰かがしっかりしていないから」
リリーはそう言いながらジェームズをにらみつけた。
「分かってるよ、リリー。確かにあれは僕の責任だ」
ジェームズもその事実を珍しく重く受け止めているようだった。
「ま、分かってるならいいけれど。とにかく、あなたたちはダイアゴン横町に行っては駄目よ」
頑として、もリリーも譲らなかった。確かに子供を心配する親としては当然だった。また、子供も不満だったが、いつになく心配そうな母親にさらに心配はかけられなかった。後日、の手紙には「ダイアゴン横町に行けない」と書き連ねられた。

次の日の夕方、はスネイプと約束した通り、会議後、厨房にいた。何故だかルーピンも一緒だった。
「さて、それでは授業を始めるとする。まず、君に教えておきたいのは『盾の呪文』と呼ばれるものである」
スネイプは杖を取り出すと、ルーピンに顎でしゃくってみせた。ルーピンもスネイプが何を必要としているか、分かったようで杖を取り出すと、スネイプに向かって「失神呪文」を仕掛けた。「失神呪文」は先週、誕生日を迎える前、ルーピンに教えて貰った最後の呪文でもあった。
スネイプが失神する、と面白半分、恐怖半分で見ていると、スネイプの周りになにか壁のようなものがあるらしく、スネイプが術にあたることはなかった。
「以上が『盾の呪文』だ。やってみろ」
スネイプが横暴にもそう言うと、ルーピンが口を出した。
「セブルス、呪文も教えてないのにいきなり『やってみろ』はないんじゃない?」
スネイプはルーピンを軽く睨み、威嚇した。そして口元を緩ませ、言った。
「我輩はてっきり、おまえがすでに教えていると思ったが?」
ルーピンは一瞬、苦々しげな表情になったが、シリウスのように取っ組み合いを始めるような子供ではなかった。
「わたしは、ダンブルドアから、よく使われる闇の魔法を教えて、が知っているようにしてほしいと言われた。君も知っているはずだ」
「それらに対する防衛術を教える余裕はなかったようだな」
スネイプがせせら笑った。ルーピンがスネイプに我慢していることは手に取るように分かったが、に助け舟を出す勇気と知恵はなかった。
しばらくルーピンとスネイプが睨み合った後、ルーピンがの方を向いて口を開いた。
、『盾の呪文』は君にまだ高度かもしれない。だけど、君はいつだってわたしたちの常識の範囲を越えていた。だから、もしかしたら、今回もまた出来るかもしれない」
ルーピンはさっきとはうって変わって優しくの頭を撫でた。
「呪文は『プロテゴ』だ」
プロテゴ
が小さくつぶやくと、ルーピンが満足そうに頷いた。
「呪文を言うのくらい、赤ん坊でも言える」スネイプが嫌味っぽく言った。
「実際に術が成功してから褒めるべきであろう?――構えろ、ブラック」
スネイプは何をイライラしているのか、荒々しくにそう言うと、杖を構えた。
「さあ、。今の通りに呪文を言えば、絶対大丈夫だよ」
は震えそうになる腕を抑えながら、スネイプと向き合った。の心には、ルーピンの優しい言葉が響いた。

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