Sixteen Memorise
「ハッピーバースデー、!」
の誕生日には不死鳥の騎士団のほとんどのメンバーが集まった。しかし、ロンとハーマイオニーの姿はなく、代わりにビルがいた。彼の手には二人から預かったようなプレゼントがあった。
「おめでとう、。これであなたも大人ね」
が嬉しそうに言った。しかし、その顔には少しだけ不安そうな影があった。
「ありがとう、ママ」
しかし、はそれに気付かないフリをして、に笑顔を向けた。周りを見渡してみると、少し心配そうな、不安そうな顔をしているのはだけではなかった。リリーやルーピンも、なんだかと同じ表情をしている。
一方、シリウスとジェームズはというと、の誕生日を盛り上げようと、騎士団のメンバーと笑いあっている。そんな中、一つの黒い影がの側に近寄ってきた。

「えっと・・・・・ビル、よね?」
は自分の頭をフル回転させて、彼の名前を思い出した。
「覚えてくれたんだね」ビルがにこやかに言った。
「どうしたの?」
がビルに問い掛けた。
「おめでとう、って言おうと思ってさ」
「ありがとう」が笑顔になった。
「ロンとハーマイオニーからプレゼントを預かったよ」
ビルは腕に抱えていた二つの包みをに手渡した。
「二人から、君におめでとうって」
「なら、あの人たちに伝えて――」
は心から幸せそうな顔をして、ビルを見上げた。
「――ありがとう、って」

ささやかなパーティーが行われ、それが終わると招かれた人々は、ちらほらと家路についた。残ったのは、この家に住む五人の大人たちとハリー、そして、スネイプだった。
「さあ、そろそろ本題に入ろう」
ジェームズが明るい声でそう言ったが、部屋の雰囲気を暗くした。
「シリウス、君から話した方が一番良いんじゃない?」
ジェームズがシリウスを振り返ると、シリウスはスネイプと睨み合っている最中だった。
シリウス!が怒ると、シリウスは渋々、スネイプから視線を外した。
「俺は認めないからな」シリウスが吐き捨てた。「こいつがに教えるなんて」
「シリウス、駄々をこねないで。闇の陣営のことを一番知っているのは彼なのよ」がため息まじりに言った。
「だからなんだ。こいつから教わるくらいなら――」
「失礼だが、我輩は忙しいのでね。さっさと用件を済ませてもらいたいのだが」スネイプが冷たく口を挟んだ。
「ごめんなさい、セブルス」が謝った。そして、に向き直り、言った。
、あのね、成人したらこの世界で自由に魔法が使えるようになることは知っているでしょう?」
の言葉には頷いた。
「あと何週間かで、あなたはホグワーツに戻るけれど、魔法をコントロールする力を習得するのは早ければ早い方がいいの」
はここで一回黙ると、の観察をした。どうやら話にはついていけているようだ。
「だから、残りの数週間、セブルスがコントロールする方法をあなたに教えるわ。それと――」
はチラリとシリウスを見た。
「――闇の陣営に対抗する方法も」
「どういうこと?」
が首を傾げると、ジェームズが優しく言った。
「手っ取り早く言って、いままでの授業の延長線みたいなものさ。ただ、僕らは教えない。教師はスネイプってわけ」
「こいつに教わって、まともな知識がつくのか?」
シリウスが不愉快そうに鼻を鳴らした。
「シリウス!」が睨んだ。
「我輩はこれで帰る」
スネイプは口を開いたかと思うと、黒いマントをひるがえし、玄関ホールへ歩いて行った。が慌ててその後を追う。
「セブルス、待って」
の後ろ姿をシリウスは睨みつけた。
「可愛い奥さんが心配なら、スネイプと仲良くすれば?」
ルーピンがクスクス笑った。傍目から見れば可愛いくらいの嫉妬なのだが、本人は本気なのだろう。それに、どう考えても、が一番好きなのはシリウスだ。
「やだね」シリウスが言った。
、もしスニベリーから変な事をされたらすぐ言うんだ。いいな?」
は誰のことを言っているのかわからなかったが、きっと、スネイプのことだろう。はシリウスの真剣そのものの眼差しに押されて、頷いた。
「あいつ、今に見てろよ。俺はあいつを信用なんかしないからな」
は我が親ながら、ここまでくると呆れるしかなかった。
「スネイプは前、闇の陣営側だったんだ。俗に言う、『死喰い人』さ」ハリーが、どうみても面白がってシリウスに賛同をするジェームズを見ながら、に耳打ちした。
「『死喰い人』って?」
「ヴォルデモートの手下たちだよ。彼らが自分たちのことをそう呼んだ」
ルーピンが二人の間に割り込んだ。
「どうしてそんな人がホグワーツに?」が尋ねた。
「ダンブルドアがスネイプを信用している。心を入れ換えたってね。ま、もだけど」
ルーピンが玄関ホールの方に視線を向けた。まだは帰ってくる気配がない。
「それに、彼は今、騎士団の本会議で闇の陣営側の情報を流してくれている」
「先生は、彼を信用してますか?」
の率直な質問に、ルーピンは一瞬、なんて答えようか迷った。
「わたしは、多分彼を信用している――といっても、ダンブルドアが信用しているからだが」
「ママが信用しているからではないんですね」がおかしそうに笑った。
はお人よしで、彼女の目から見たら、ほとんどの人が善人に映るからね。あんまり信用ならないよ」ルーピンがクスクスと笑った。
そのとき、やっとが玄関ホールから戻ってきて、に言った。
、誕生日のプレゼントよ」
その言葉で、あたりはまた幸せそうな雰囲気になった。
に水色の紙に包まれたアルバムを手渡した。
「ありがとう、ママ」が笑顔を向けた。

そして、もう一方から名前を呼ばれ、そちらを見ると、シリウスとジェームズとルーピンがにこにこと立っている。
「右手の小指、貸してみろ」シリウスが言った。
がその通りに手を差し出すと、シリウスはの小指にシルバーの指輪を通した。
「わたしたちからのプレゼントだ」

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