Thirteen Memorise
「ハリー、、ここよ!」
一際賑わっている店の前にハーマイオニーがロンと一緒に立っていた。
「やあ、二人とも元気だったかい?」
ルーピンは気さくにロンとハーマイオニーと挨拶を交わした。
「ずいぶん繁盛してるんだな」シリウスが言った。
「彼らは、僕らより悪戯っ子らしいね」ジェームズはさりげなくの手をひいて店の中に入っていった。
中はお客で満員で、商品棚に近づくこともできない。は人波に押され、ジェームズとはぐれてしまった。
右も左も知らない顔で、は余計に不安になった。記憶がなくなってからというもの、人見知りするようになっていたのだ。
か?」
そのとき背後で声がした。振り向くと知らない顔の男性が自分を見下ろしていた。
「あの、あなたは――」
が控え目に聞くと、その男性は納得したように手を叩き、についておいで、と声をかけた。
はついて行くべきか迷ったが、悪い人に見えなくて、彼についていくことにした。
「あぁ、いたいた」
彼は独り言のようにそう言うと、「ジョージ!」と声をかけた。ジョージと呼ばれた人物が振り向くと、は彼ら二人の顔がそっくりなのに気がついた。
「例の事件の被害者、さ。連れとはぐれたらしい。というか、迷子か?」
「迷子じゃないです」がムキになって答えた。
「冗談だよ」
二人は同じタイミングで、同じ仕草で笑った。
「それじゃあ自己紹介しないとな。覚えてないんだろう?」
「あんまり記憶がないことに触れるな」
突然、の肩に手が置かれたかと思うと、シリウスが背後に立っていた。
「やあ、シリウス、元気?」
二人は綺麗にハモってそう聞いた。
「もちろん。そっちも元気そうだな」
「繁盛してるからね!――そうだ、にプレゼントがあるんだ」
そう言って、左にいた男の人はどこかに行ってしまった。
「彼はジョージ。僕はフレッドさ」
が不安げに二人を見比べていると、フレッドがにこやかに言った。
「ロンの双子の兄さ――ロンは知ってるよね?」
はこくんと頷いた。
「この子は家に出入りしているのメンバーと学校の友人の何人かの名前は覚えたよ」シリウスが口を挟んだ。
「へぇ。じゃあ僕らが悪戯っ子だってことも?」
ジョージが手に箱を持って現れた。
「ビルから聞いたわ」が答えた。
「ビルのおしゃべり」
フレッドが苦々しげに言うと、シリウスが笑った。
「それで、わたしの娘に何をくれるのかな?」
フレッドとジョージは待ってました、とばかりに顔を見合わせ、ニヤッと笑った。
「タランチュラじゃないだろうな?」シリウスが眉を潜め、はその姿を想像してシリウスの影に隠れた。
「やだな、シリウス。いくらなんでも僕らはにそんなことしないよ。もっと良いものさ」ジョージが自信たっぷりに言った。
「ピグミーパフ。ミニチュアのパフスケインだ」
が恐る恐る箱を受け取り、開けると、中にはふわふわしたピンクの毛玉がいた。
「可愛い」が小さくつぶやくと、二人は満足そうに笑った。
「やっと見つけた」
そのとき、背後で声が聞こえ、振り向くとジェームズやリーマス、、リリーが立っていた。
「シリウス、よかった。何処に行ったのかと思ったよ」ジェームズが言った。
「まったく。シリウスが見つけてくれてよかったわ」
リリーがジェームズをにらみつけた。
「たまにはシリウスも役に立つね」ルーピンがシリウスの肩を叩いた。
「ねぇ、、手に何を持ってるの?」
がそう聞いて、やっとが手にピグミーパフを持っていることに気付いた。
「可愛いわね」リリーがチョンチョン突くと、ピグミーパフがふわふわなのがよくわかった。
「シリウスが買ったの?」
「僕らからのプレゼントさ」
ジェームズの問いにフレッドとジョージがハモって答えた。
「名前は『シリウス』」
「え?」
フレッドとジョージの言葉に驚いたのはシリウスだけではなかった。
「どういうことだい?」ルーピンが聞いた。
「だって、四人ともさっきから『シリウス』って連呼してるから――」
「きっと、ピグミーパフは自分の名前が『シリウス』だって思ったよ」
フレッドとジョージはそう言ってが持っている箱を覗き込んだ。
「な、シリウス」
ピグミーパフはまるで返事をするように自分の体を揺らした。
「シリウス・・・・・私のパパとおんなじ名前」
が独り言のようにそう呟くと、が気まずそうにに謝った。
「ごめんなさい、
「どうして謝るの?」
しかし、には、何故気まずいのか、何故謝るのか、わからなかった。
「私、ピグミーパフの名前は『シリウス』で良いと思うよ」
が明るく言うと、四人の大人たちはホッと胸を撫で下ろした。しかし、シリウスだけは違う。自分の名前がピンクの毛玉と同じで不満げだ。
「シリウス、ここは大人になって」
ジェームズがこっそりシリウスに耳打ちした。
シリウスは一瞬、ムスッとしたものの、気を取り直しての笑顔に素直に喜んだ。

そのあと、いろんなお店を回り、漏れ鍋でロンとハーマイオニーと別れる頃には、もうクタクタだった。
「じゃあまた学校でね!」
煙突飛行粉でロンとハーマイオニーは隠れ家に帰っていった。そして、たちはマグルの交通機関を使って帰った。なんせ、が魔法界のことを忘れてしまったのだ、煙突飛行粉なんかで帰ったら、ちゃんと家の煙突に出るかわからないし、飛行訓練をまだしていないので箒は無理で、姿くらましをするには荷物が多過ぎるし、はやり方を忘れてしまっているから。
家に着くとは真っ先にカゴからピグミーパフのシリウスを出してやった。そしてフワフワした感触を楽しむようにギュッとシリウスを抱きしめた。
傍らではシリウスとジェームズ、ルーピンがその様子を温かく見守っていた。
「ピグミーパフのシリウスが気に入ったようだね」ルーピンが微笑んだ。
「流石、シリウス」
ジェームズがクスクスと笑うとシリウスはジロリと睨んだ。
「誰の所為だ」
「良いじゃない、シリウス」ジェームズがニヤニヤと言った。
「これでに『パパ』って呼ばれる正当な理由が出来たよ――家にシリウスが二人もいたら大変だからね。ね、パパ!」
ゴツンと音がして、が三人の大人に目を移すと、ジェームズが頭を押さえてシリウスを恨めしげに見ているところだった。

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