Five Memorise
スネイプに連れられて着いたさきは校長室だった。中に入るとダンブルドアがマクゴナガル先生とシリウスとジェームズと共にいた。
「ハリー、何があったのか話してくれるかの?」ダンブルドアはすべてを見通したようにハリーに聞いた。
ハリーは当惑しながらも、自分がさっき目の前で見た光景をすべて語った。もちろん、マルフォイが何を言ったのかも、自分が何を言ったのかも、が何を言ったのかも、すべてだ。
「ふむ」
ダンブルドアはハリーの話が終るとしばらく考え込んだ。そのそばで、シリウスとジェームズはそわそわと目線を合わせていた。
「セブルス、ひとまずは問題はなかったのじゃな?」ダンブルドアがやっと口を開いた。
「はい、校長」スネイプが答えた。
「よろしい。マクゴナガル先生、スネイプ先生、シリウス、ジェームズ、まずは三人だけで話をさせてもらえるかね」ダンブルドアは少し心配そうな瞳でを見ながら四人に言った。
四人はそれぞれに頷くと、校長室から出ていった。
「さて、。君に聞きたいことがある。昨日、目覚めてから、一度でも自分で使おうと思って魔法を使ったかね?」
「えっと・・・使ってないと思います」
は小さな声でそう言った。ダンブルドアは軽く頷くと、をジッと見つめて何かをぶつぶつと唱えた。しかし、には何も変化は起きない。
」ダンブルドアが重々しく口を開いた。
「君の魔力や能力は記憶を失ったからと言って、なくなってはいないようじゃ。そればかりか、自分で制御出来なくなり、力が増大しておる」
には何のことだか、あまりピンとこなかった。
「あの、私、問題児ですか?」
「いやいや、そうではない」ダンブルドアが微笑んだ。
「問題児どころか、君は優等生じゃ。君は学年で一位、二位を争うような実力者じゃよ。君の父君もそうじゃが――しかし、君は特別過ぎた。この続きは夏休み中になるじゃろう。今、君に伝えたいのは感情のままに行動せんように言いたい」
「どういうことですか?」は困ったような顔をした。
「すべてわしの想像じゃが、今回の出来事は確かに君が引き起こしたものじゃ」
ダンブルドアにそう言われると、はシュンとなった。
「別に、君を責めているわけではない。ただ、君が感情に支配され、マルフォイ君に術をかけてしまったということじゃ。今回、たまたま命には別状なかったが、次もそうだとは限らん――君が感情のままに行動するのであればじゃが。人間、努力すればなんだって出来るものじゃよ、」ダンブルドアはキラキラした青い目でを見つめた。
「はい、やってみます」ははっきりと頷いた。
「それはよかった――ところで、ハリー」
ダンブルドアはクルリと視線を変えた。
「一番彼女の近くにいて、一番彼女を制御出来るのは誰だと思うかね?」
「――シリウスですか?」ハリーにはこのあとの展開がだいたい予想がついた。
「本当にそう思うかね?」ダンブルドアは長い指を組んだ。
「先生、でも――」
「ハリー、緊急事態なのじゃよ。君に出来ると見込んだわしの目だけでは信用ならんかね?」
ハリーは小さく「いいえ」と答えた。
「それではハリー、手を貸してはもらえんかね」
ダンブルドアがそう言うと、ハリーはと同じく、でも少しためらいを残しながらはっきりと頷いた。
「ありがとう、ハリー」

二人はダンブルドアの感謝の言葉に送り出された。もう、授業が始まっていて、廊下には人気がなかった。
「朝ごはん、食べ損なっちゃったね」ハリーが小走りにそう言った。
「ごめんなさい、私のせいで」は責任は自分にあると考えているようで、少し沈んでいた。
「僕は大丈夫だよ。がお腹へってないかな、って思っただけ――ついたよ」
途中から走った甲斐あってか、思ったより、変身術の教室に早くついた。
「昨日も今日も会ったけど、ちょっと厳格そうな女の先生の授業。僕らの寮監さ」
が寮について聞こうとする前に、ハリーは教室のドアを開けていた。寮にはついて聞くのはまた今度だな、とは密かに思った。
!」
中に入ると、は驚くほどの歓迎を受けた。
「無事だったんだね!」
はいつの間にか知らない人々に囲まれて当惑した。
「記憶がなくなって聞いたわ!困ったら何でも聞いて」
知らない女の子がに笑いかけた。そのとき、騒いでいても良く聞き取れるような声で「座りなさい」と一言、言い渡された。生徒たちはマクゴナガル先生の機嫌を悪くしないうちに、素直に席についた。
、こっち」
ハリーはの手を引っ張って知らない女の子の隣に座らせた。さっき、声をかけてくれた女の子だった。
「ハーマイオニー、にいろいろ教えてあげて。多分、女の子同士の方が話しやすいだろうし」ハリーはそう言いながら教科書を広げた。
「あ、それと、、今日手ぶらだから」
ハリーは世話好きのハーマイオニーを見通してか、そう言った。
「怪我とか、なかったのかい?」
今度はハリーの隣に座っていた男の子が口を開いた。
「なかったみたい。ただ、記憶だけがすべて飛んでる」ハリーが答えた。
「君の隣にいるのはハーマイオニー・グレンジャー。君と同じく秀才さ。それで、僕の隣はロン・ウィーズリー。いつも四人で組んでる」
「ハーマイオニーは取っている科目の種類が僕たちとは違うけどね」ロンが付け足した。
「丁寧に言わなくったって大丈夫だから」
「勉強でもなんでも、わからなかったら聞いて」
ハリーとハーマイオニーがそれぞれ言った。
「ありがとう」
がにっこり笑ったそのとき、ちょうど終了のベルが鳴った。
「――に関してレポートを木曜日に提出すること」
マクゴナガル先生はそう言って授業を終らせた。すると、とたんには知らない人々に囲まれた。みんなが質問するのは、がハリーに連れられてスネイプの地下にある教室にくるまで続いた。教室に入ると、朝会ったマルフォイと呼ばれた男の子がすでに着席していた。

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