Three Memorise
「僕はジェームズ・ポッター。君のお父さんの親友」
ジェームズが気まずい雰囲気を吹き飛ばすような明るい声で言った。そんなジェームズの言葉にシリウスが「悪友だ」と突っ込んだ。
思わずは顔が緩んだ。その一瞬が何故かルーピンの目に焼き付いた。
「リーマスもしなよ」ジェームズが促した。
「私はリーマス・ルーピン。狼人間なんだ」
ルーピンはそう言って渋い顔をしたが、なぜそんな顔をしたのかはあまりピンッとこなかった。
「狼人間ってなんですか?」
「満月の夜になったら狼に変身する。狼に噛まれたら誰だってそうなってしまう。そして、未だに治療法は解明されていない。唯一有効なのは魔法薬だ。それを飲むと、体は狼でも心は確かなままでいられる」シリウスがスラスラと答えた。
「魔法薬って言うのは大鍋でグツグツ煮て、いろんな物を混ぜるのさ。さっきいた、黒マントの男はこの学校の魔法薬学の先生」ジェームズは肩をすくめた。
「僕らが学生のころ、あんまり仲がよくなかった。は違うけど」
ジェームズがに視線を投げたので、はどちらがなのかわかった。
「リリーは君のお母さん、の親友。あと、今からダンブルドア――彼はここの校長先生。頼りになるよ――につれてこられるのがハリー。君ととっても仲が良いんだ。で、今はシリウスと、リリー、リーマス、ハリー、僕、それと君とでシリウスの家に住んでるんだ」
ジェームズがみんなの自己紹介をし終ると、ちょうど見計らったように、ダンブルドアがハリーを連れてきた。
「父さん!」
ハリーはとても興奮していた。
が記憶喪失ったって――」
ハリーの目はの赤くなった目、リリーの悲しそうな顔、そして、の不安そうな顔に移り渡った。
「本当なんだね?」
ジェームズが静かに頷いた。
「そして私たち、全員が一致した。おまえにを託したい」
ハリーはしばらく呆然と立ちすくんでいた。
何を僕に?」当惑した表情で答えた。
を、だ。ま、簡単に言うと、子守り役だな」シリウスはサラリとそう言った。
「子守りって、なんで?は入院じゃ・・・・・」
「明日からは退院。そして、記憶がなくても普段通りに過ごす。面倒をみる人がいなければ、可哀想だろう?どうせ具体的にはに生活の流れを叩き込めば良いんだ。取ってる科目、君たち全部一緒だったしね」
ハリーは無茶だ、と思いながらもジェームズの笑顔にただ頷くだけしか出来なかった。
「それでは邪魔者は消えるとしよう。、何か困ったら周りの者に申し出ると良い。きっと力になる」
は、果たして自分が申し出れるのかと思いながら、小さく頷いた。
ダンブルドアはそれを確認すると、静かに部屋を出て行った。
「ハリー、授業は?」が聞いた。
「もうすぐ終るよ。今さら行ったってスネイプに減点される。、大丈夫なの?」
「自分で確かめてみたら?」は溜め息混じりにそう答えた。
」ハリーが恐る恐る声をかけた。大人たちの視線が二人に集中した。
「ハリーさん・・・・・ですか?」
ハリーは予想していたとはいえ、そうとうショックだったようだ。
「あの、ごめんなさい」はさっきから謝ってばかりだった。
「あまり気にしない方がいい。ただ、いきなりだと驚くから・・・・・」
ルーピンが微笑んだ。
「明日の朝、朝食に行く前に寄ってくれないか?流石に一人で出歩かせるのは危険だ」
シリウスはを心配そうに見つめた。
「それで、明日、他の子たちに紹介してあげてくれないか?本当は今日面会させてやりたいんだが、本人も少し落ち込み気味だし――」シリウスはの頬に優しく触れた。の体がビクッと震えた。
「ストレスを貯めるのはよくないから、な」
ハリーはじっとを見つめた。は視線を感じたのか顔を上げると、昔と変わらない会釈をハリーにしてみせた。しかし、ハリーにはそれが余計に切なかった。
の記憶は戻るの?」ハリーが聞いた。
「戻るか戻らないかはわからない」ルーピンが神妙に答えた。
「明日、朝一番で迎えにくるよ」
ハリーが少し寂しそうに呟いた。
「ありがとうございます」が微笑んだ。しかし、まだその表情は堅かった。

ジェームズがを見て微笑んでいた。
「今も昔もこの先も、ずっと味方だよ」
は言っている意味が良く分からなかったが、素直に頷いた。
「僕、まだここにいて良い?」ハリーが突然、言った。
「いたら?一緒に」
珍しくリリーがハリーのサボりを公認した。ハリーはダメもとで聞いていたので、驚いてリリーを凝視した。
と一緒にいたいんでしょう?」が優しく微笑んだ。「頭ごなしに『ダメ』なんて言わないわ」
「ありがとう」ハリーが少し頬を染めた。
はその様子を微笑ましく見ながら、シリウスに話しかけた。
「シリウス、この後どうする?」
「仕事を片付けないとまずいな」溜め息混じりにそう呟いた。
「私、片付けてくるわ、あなたの分まで」
シリウスがの意外な発言に目を見開いた。
「お前、熱あんのか?」
シリウスがそう言うとルーピンがシリウスの足を蹴った。
シリウス!
「冗談だよ――、気をつかうな。俺が女に仕事を任せてヌクヌクと過ごすような男に見えるか?自分の仕事は自分で片付けるよ。ついでに、お前のもやっとくし」
シリウスが微笑んだ。
のそばにいてくれ」
「シリウス、僕の分は?」ジェームズが勢い良くシリウスに抱きつこうとしたが、シリウスは器用にそれを避けた。
「誰がお前の分までやるか!」
「冷たいなぁ」ジェームズがふてくされた。
「僕、リリーの分までやるんだよ?」
だから?」とシリウスが聞いた。
「冗談が通じないんだから」ジェームズは処置なし、と言うように両手を上げた。
「ジェームズ、いいわよ。私のは私が――」
「ダメ。リリーもここにいて。ね?」
ジェームズはリリーをさえぎった。リリーはこういうときのジェームズはとても頼りになるし、頑固なので、素直に任せることにした。
「ありがとう」
を頼んだよ」
は大人たちの会話を聞いていて、どうして自分をそんなに気遣ってくれるのか分からなかった。

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