A warm hug 暖かい抱擁
「妖女シスターズ」が演奏を終えたのは真夜中だった。みんなが最後に盛大な拍手を送り、玄関ホールへの道を辿りはじめた。ダンスパーティがもっと続けばいいのにという声があちこちから聞こえた。
はジョージと一緒にフレッドとアンジェリーナと合流して、グリフィンドール塔に向かった。もジョージとのダンスはとても楽しかったが、アンジェリーナはそれ以上にフレッドとのダンスを楽しんだようだった。
談話室に上がったは、女子寮に向かう階段の前でジョージにおやすみなさいを言うと、ジョージも優しくおやすみと返してくれた。
階段を上り寝室に着くと、そこはすでに薄暗く、パーティやラベンダーは寝ていた。は二人を起こさないように明かりを灯しクツを脱いだ。思ったよりもパーティは楽しかったが、セドリックとマルフォイのことも忘れられない。
銀のティアラとピアスをケースに戻し、ネックレスも戻そうとすると、ケースの底に小さくメモがあるのに気付いた。はゆっくりとメモを開いた。
「リーマスたちから君と何を話したか聞いた。僕が君に言いたいのは一言だけ。僕は君の味方だ。例え、世界中が敵になってもね。君なら絶対乗り越えられる」
ジェームズの筆跡だった。まるでホグワーツにいるの身に何が起こっているのか知っているような言葉だ。何故わかったのか少し不思議だったが、それ以上に嬉しくなった。四年前、ホグワーツに行くのを怖がっていた自分を後押ししてくれたジェームズの声が再び聞こえてくるようだった。
そのとき寝室のドアが勢い良く開き、優雅なシニョンが垂れ下がり、怒りで顔を歪ましたハーマイオニーが戻って来た。
「ど、どうしたの?」
が驚いて、ハーマイオニーに問い掛けると、彼女は怒りすぎで目を赤くさせながら低い声で怒りを込めながら答えた。
「ロンったら、私がビクトールと踊ったのが気に入らないのよ!それなのに、自分が私を誘わなかったことはコロッと忘れて!」
話を聞くうちに、はこの件には関わらない方が良いと判断し、適当に返事を返した。
「――無神経よ!」
「そうね・・・・・」
は自分のベッドに潜り込むと、静かに目を閉じた。思っていたより疲れていたらしく、ハーマイオニーの小言を子守唄に、翌朝まで一回も目を覚まさなかった。

クリスマスの翌日は、みんな朝寝坊した。グリフィンドールの談話室はこれまでとは打って変わって静かだったし、けだるい会話も欠伸で途切れがちだった。ハーマイオニーの髪はまた元に戻ってボサボサだった。がハーマイオニーを問い詰めると、少し照れながら「スリーク・イージーの直毛薬」を大量に使ったのだと、白状した。
「だけど、面倒くさくって、とても毎日やる気にならないわ」
ゴロゴロ喉を鳴らしているクルックシャンクスの耳の後ろをカリカリ掻きながら、ハーマイオニーは事もなにげに言った。
ロンとハーマイオニーは、二人の争点には触れないと、暗黙の了解に達したようだった。お互いにバカ丁寧だったが、仲良くしていた。
「ハグリッドは半巨人だったんだ」
遅めの朝食を食べた後、四人は暖炉の前を占領してくつろぎながら、ハリーとロンが声を抑えながら言った。
二人の話によると、たまたまスネイプとカルカロフに出会い、彼らがお互いをファーストネイムで呼ぶのを不審に思いながらも小道を歩き続けたところ、ハグリッドとマダム・マクシームの密会の現場に偶然鉢合わせし、動くに動けず、二人の話をしっかりと聞いてきたというわけだった。
「マダム・マクシームは半巨人を否定してたけど、絶対にあの人もそうだよ。あの人より骨が太いのは恐竜くらいだけだよ」
ロンはまだ少しショック状態だった。いくらか、ハリーの方が落ち着いて見える。
「まあね、そうだろうと思っていたわ」
ハーマイオニーは肩をすくめた。
「もちろん、純巨人でないことはわかってた。だって、ほんとの巨人なら、身長六メートルもあるもの。だけど、巨人のことになるとヒスになるなんて、どうかしてるわ。全部が全部恐ろしいわけないのに・・・・・狼人間に対する偏見と同じことね・・・・・単なる思い込みだわ」
ロンは何か痛烈に反撃したそうな顔をしたが、ハーマイオニーとまたひと悶着起こすのはごめんだと思ったらしく、ハーマイオニーが見ていないときに、「付き合いきれないよ」と頭を振るだけで満足したようだ。
「ハーマイオニーの言うとおりよ。ハグリッドが半巨人だって、彼は狂暴でも、殺すのを好む人でもないわ――確かに、危険な動物が好きだけど――狼人間のリーマスが優しいように、ハグリッドだって、良い人だわ」
がそう言うと、ロンは再び反撃したそうな顔をしたが、には言い返せないのか、それっきりだった。
午後はそれぞれ単独行動だった。ハーマイオニーはお決まりの図書館で、ハリーとロンは談話室でチェスをしている。は自分に監視の目が無いことを良いことに、学校を少しばかり抜け出すことにした。まだクリスマスの雰囲気が抜け切れず、どこへ行っても、カップルが目に入る。
はクルックシャンクスをバッグに押し込むと、小走りで暴れ柳まで向かった。ここの出入り口を知っているのは四人の他に、父親たちと、スネイプ、そして、ダンブルドアとあの憎たらしいペティグリューだけだ。
は慣れた手つきでクルックシャンクスを放し、暴れ柳を抜けると、「叫びの屋敷」の中に入った。そこは去年と同じく埃っぽく、ただ違うのは去年の少し争った形跡がみられるだけだ。彼らの名前を呼べば、今でもひょこっと近くのドアから顔を出しそうな、そんな暖かさがまだ残っていた。
は「叫びの屋敷」を出て、ホグズミードに向かった。しかし、街中を歩くわけにはいかなかった。一応、にもいけないことをしているという自覚はあるのだ。ホグズミードが見える辺りまでくると、は足を止めた。たくさんの魔法使いや魔女が買い物をしている姿が見える。
そのとき、ザクッという雪を踏む音が聞こえた。は杖に手を伸ばし、神経を集中させた。もう一度、足音が聞こえたとたん、は杖を突きつけながら振り向いた。
「やあ、。杖を降ろしてくれないかな?」
ルーピンが両手を挙げてに笑いかけていた。彼は一人だった。
「ど、どうしたの?リーマス」
は慌てて杖を降ろすと、ルーピンに駆け寄った。
「わたしの方こそ、それは聞きたい質問だね。学校を抜け出したのかい?」
チラッと咎めるような視線を向けて、ルーピンは苦笑した。
「あー、うん――ごめんなさい」
が素直に謝るとルーピンはいつもと同じように笑顔になって、手を差し出した。
「立ち話じゃ、寒いだろう?『叫びの屋敷』に行こう。あそこなら風も入ってこない」
はルーピンがあまり怒らなかったのも気になったが、彼が一人でここにいるのも気になっていた。
「ねえ、リーマス。なんでここにいるの?それも一人で。パパたちは?」
ルーピンは握っている手に少し力を入れて、まっすぐ前を見ながら答えた。
「虫の知らせかな。君のことが心配だった。何か、起きるんじゃないかとね」
「何も変わった事はないわ」
がすぐさまそう答えると、ルーピンはただ笑っただけだった。
二人は「叫びの屋敷」につくと、去年、シリウスとジェームズが生活していた部屋にこもり、ルーピンがビンに火を入れて、部屋を暖めた。
「ダンスパーティはどうだったんだい?」
「楽しかったわ」が言った。
ルーピンの心配そうだった顔が、少し安心した様子になった。
「リーマスたちの方はどうなの?みんな元気なの?」
がルーピンに質問を投げかけると、ルーピンはにっこり笑いながら答えた。
「みんな元気だよ。シリウスは犬の姿で出かけるのが気に入ってきたみたいだし、ジェームズは君たちに会いたいと言っている。リリーとは相変わらず心配性だよ」
は自分の中で何かが湧き上がってくる衝動に身を任せ、ルーピンに抱きついた。
?」
ルーピンが戸惑ったような、心配そうな声で名前を呼んだ。
「大好きよ、リーマス」
がギュッと腕を回すと、ルーピンはそれにあわせるようにを優しく包み込んだ。
「わたしも好きだよ、

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リーマスとの抱擁は私もしたい。笑