Dress robes ドレスローブ
グリフィンドール塔に戻ると、すでに、女の子たちはみんな着替え始めているらしく、そこらへんにいるのは男ばかりだった。急いで寝室に戻ると、ハーマイオニーが髪の毛を結わいるところだった。
「やっときたわね、
ハーマイオニーが振り向いた。しかし、はいつものハーマイオニーとは全く違うハーマイオニーをまじまじと見つめた。
、早く着替えなさいよ!パーティ、始まるわよ」
しかし、そう言われてもじっと視線を反らさないにハーマイオニーは不審そうに眉をひそめた。
「私の顔になにかついてる?」
「ううん、じゃなくて・・・・・」
はやっとハーマイオニーをまじまじと見るのをやめ、そしてニッコリと笑った。
「ハーマイオニー、すっごく可愛い!」
カッとハーマイオニーの頬が赤くなった。
「そんなこと言ったって、なんにも出てこないわよ。ほら、早く着替えて!」
褒められたことが気恥ずかしいのか、ハーマイオニーはのドレスを引っ張り出し、のベッドに広げた。
「素直じゃないんだから」
はクスッと笑って、ドレスに着替えた。そして、去年もらったティアラと今朝もらったピアス、ネックレスをつけた。
「ほら、もう仕度済んだわ」
はクルリと一周回ってみせた。
!信じられない!あなた、もっと着飾れば良いのに」
ハーマイオニーは言うが早いが、をベッドに座らせ、自分はその背後に座り、の柔らかな髪を結わき始めた。
「あなたって人は!」
ハーマイオニーはぶつぶつ言っていたが、はその半分も聞き取れなかった。
「ほらできた。、あなた、可愛いんだからオシャレしなさい!」
いつもは髪の毛ボサボサのハーマイオニーに叱られるのはなんだか釈だったが、は素直にお礼を言った。
「それで、ルーピンはなんて言ってたの?」
ハーマイオニーは突然に問い掛けた。
「私が新聞記事後、手紙をまったく送らなかったから怒ってたわ。でもパパは――」
「シリウスが来ていたの?」
ハーマイオニーが驚いての話をさえぎった。
「ええ。リーマスがダンブルドアに頼んで許してもらったみたい――元気そうだったわ。少し痩せてたけど。リーマスの方もね」
ハーマイオニーは心配そうな顔をしたが、すぐに興味津々に話の続きをにねだった。は二人の話を一部始終ハーマイオニーに聞かせた。
「シリウスもあなたが可愛いのね」
話が終わると、ハーマイオニーがクスッと笑った。
「さあ、そろそろパーティに行かないと」
ハーマイオニーが立ち上がった。
「うん。一緒に行こう」
が笑顔でそう誘うと、ハーマイオニーは少し残念そうな、恥ずかしそうな顔をして、小さな声で答えた。
「私、彼と待ち合わせしてるの」
そうか、とは思い出した。
「気にしないで、ハーマイオニー――そうね、私の方ならきっと談話室で待っていてくれると思うし」
はニッコリと笑った。それと同時に、今晩が早く終わってほしいと願った。
がハーマイオニーと一緒に談話室に降りていくと案の定、ジョージがを待っていた。
「それじゃあ」
ハーマイオニーはジョージを見つけるとすぐに談話室を出ていった。それと同時に、ジョージがに近づいてきて、手を差し出した。
「すごく綺麗だ、
ジョージが至極真面目な顔でそう言うので、は真っ赤になった。
「ありがとう、ジョージ」
小さな声でそう返事をするのが精一杯だった。そして、はジョージの手に自分の手を重ねた。
「それじゃあ、パーティに行こうか」
ジョージはニコッと笑い、の手を握って歩きだした。
「なんか、こうしていると二年前の夏休みを思い出すね」
ジョージがをリラックスさせるように言った。
「うん」
は廊下を歩いているとちらちらと自分が見られているのを感じ、それだけしか言えなかった。
「周りは気にするなよ、。大半は君も見てるけど、君と歩いている俺を見ているだけだからさ」
ジョージの笑顔を見て、は果たして信じていいものなのかわからなかった。しかし、ジョージがそう言ってくれて、気持ちが落ち着いたのも事実だった。
「学校一の美人と歩いている俺が羨ましいのさ」
「私、みんなが思っているほど美人じゃないわ」
サラリとジョージが言ったので、なんだか照れてしまって、とっさにそう言い返していた。
「君は綺麗だよ、
ジョージがニッコリ笑いながらを見つめた。
「君の心が美しいから、君の見た目も美しいんだよ」
今度こそ、は顔から火が出るくらい恥ずかしくなって、俯いた。
ジョージはそんな様子をクスリと笑い、ほら、と言っての気持ちを反らした。
「フレッドがいた」
はまだ自分の顔が赤いのに気付いていたが、顔を上げてフレッドの方を見た。アンジェリーナも一緒にいる。
「よ。そっちの調子はどうだい?」
フレッドが近づいてきたジョージに尋ねた。
「見ての通りさ。さっきから注目されまくってる――俺の隣が学校一の美人だからね」
ジョージがニヤッと笑ってそう返事をした。フレッドもジョージを否定するでもなく、に言った。
、すごく綺麗だよ」
双子そろって同じ台詞をよくも飽きずに、とはちょっと思ったが、どうしても恥ずかしさの方が大きい。
が黙っていると、アンジェリーナがの肩を叩いて言った。
「確かにいつもはこの二人のことを信用しちゃいけないけど、今回ばかりは信用して良いと思うの、。あなた、本当に可愛いわ」
アンジェリーナにまで言われ、はありがとうと素直に言った。
「私がと踊りたいくらいよ」アンジェリーナがフレッドを見ながらぼやいた。
「でも、アンジェリーナもとってもきれいよ」
は心からそう思ってアンジェリーナを見つめた。すると、アンジェリーナは優しい笑顔でを見つめ返し、ありがとうと言った。はそんなアンジェリーナがとても魅力的に思えた。
「まあ、その言葉は聞き捨てならないが、が相手ならしかたない」
フレッドが一歩遅れて少しむっとした様子で、しかし楽しげに言った。
八時になり、大広間のドアが開かれた。はジョージに連れられ、代表選手が脇に立つ大広間のドアをくぐり抜けた。しかしは代表選手の方は見ないようにした。セドリックに合わせる顔がない。
大広間の壁はキラキラと銀色に輝く霜で覆われ、星の瞬く黒い天井の下には、何百というヤドリギや蔦の花綱が絡んでいた。各寮のテーブルは消えてなくなり、代わりに、ランタンの仄かな灯りに照らされた、十人ほどが座れる小さなテーブルが、百余り置かれていた。
はフレッドやリーと同じテーブルに座った。ジョージが気を使って、ロンのテーブルに行こうとしていたのをが止めたのだ。
みんなが席につくと、代表選手たちがパートナーと一緒に入場してきた。どうやら審査員が座っているテーブルに向かっている。
は流石にこの大勢の中、セドリックが自分を見つけるのは不可能だと思い、テーブルから顔を上げた。やはりセドリックはチョウを連れて歩いている。そして優しく微笑んでいるのが見えた。すると、その笑顔を見て切なくなる自分に気がついた。
代表選手たちが審査員テーブルに着席すると、夕食だった。しかし、テーブルには小さなメニューが一人ひとりの前に置かれているだけだった。食べ物らしきものは見当たらない。すると、周りのテーブルの生徒たちが次々に自分の皿に向かって注文し始めた。それを見ても合点した。
「グラーシュシチュー」
が皿に向かってそう言うとグラーシュシチューが現れた。
「やっぱりクィディッチがないと、何だか拍子抜けね。調子狂っちゃう」
アンジェリーナがリーのパートナーのケイティに話し掛けている声が聞こえた。
「そうね。確かに学校対抗試合も楽しいけど」
ケイティはポークチョップを食べながら返事した。
「でも、ダンスパーティがあるなんて素敵じゃない?」
はケイティの言葉に頷けなかったものの、確かに大半の女子生徒たちは楽しんでいると思った。思い思いに可愛い恰好をして大広間に来ている。自分も素直に楽しめたらよかったのに、何故楽しめないのだろう、とはシチューに手を伸ばした。
、それナイフだけど・・・・・」
そのとき、苦笑した声が聞こえ、優しく手に何かが触れた。
「ナイフでシチューを食べるのか?」
ジョージだった。ジョージはのナイフを持った右手を押さえていた。
「あ――ううん、ごめん、ありがとう」
はちょっと赤くなると、今度はスプーンを取った。
「まったく。ドジねえ」
アンジェリーナとケイティがクスクスと笑うと、それがフレッドやリーにも伝染した。
周りの彼らはがナイフとスプーンを取り違えてもほとんど気にしていなかったが、としてはそれほど自分が動揺していることに驚いた。
その間もジョージたちは盛り上がっていたが、はただ相槌をうつだけで、話の半分も耳に入って来なかった。

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ジョージの台詞がクサい。