My partner 私のパートナー
新聞はシリウスもジェームズもリーマスも、そして、もリリーも読んだはずだろうが、何も言ってこなかった。確かにそれで不安にもなったが、には彼らとその話をする勇気もなかった。それに、ハリーもロンもの前ではその話題に触れようとしなかった。ただ、スリザリンの生徒たちがに聞こえよがしに何か言うと、黙らせるように、その生徒たちを睨みつけるだけだった。
学期最後の「魔法生物飼育学」のクラスで、ハリー、ロン、、ハーマイオニーが、リータ・スキーターのインタビューはどうだったと聞くと、ハグリッドがそう答えた。いまやハグリッドはスクリュートと直接触れ合うことを諦めていたので、みんなホッとしていた。今日の授業は、ハグリッドの丸太小屋の陰に隠れ、簡易テーブルの周りに腰かけ、スクリュートが好みそうな新手の餌を用意するだけだった。
「あの女はな、ハリー、俺におまえさんのことばっかり話させようとした」
ハグリッドが低い声で話し続けた。
「まあ、俺は、おまえさんとは一年生のときからずっと友達だって話した。『四年間で一度も叱ったことはないの?』って聞いてな。『授業中にあなたをイライラさせたりしなかった?』ってな。俺が『ねえ』って言ってやったら、あの女、気にいらねえようだったな。おまえさんのことをな、ハリー、とんでもねえヤツだって、俺にそういわせたかったみてえだ」
「だろうね」
ハリーは、そう言いながら、大きな金属ボウルにドラゴンのレバーを切った塊をいくつか投げ入れ、もう少し切ろうとナイフを取り上げた。
「いつまでも僕のことを、小さな悲劇のヒーロー扱いで書いてるわけにいかないもの。それじゃ、つまんなくなってくるし」
「あいつ、新しい切り口がほしいのさ、ハグリッド」
火トカゲの卵の殻をむきながら、ロンがわかったような口を聞いた。
「ハグリッドは、『ハリーは狂った非行少年です』って言わなきゃいけなかったんだ」
「ハリーがそんなわけねえだろう!」
ハグリッドはまともにショックを受けたような顔をした。
「あの人、スネイプをインタビューすればよかったんだ」ハリーが不愉快そうに言った。
「スネイプなら、いつでも僕に関するおいしい情報を提供するだろうに。『本校に来て以来、ポッターはずっと規則破りを続けておる・・・・・』」
「そんなこと、スネイプが言ったのか?」
ロンととハーマイオニーは笑っていたが、ハグリッドは驚いていた。
「そういえば、ハグリッド」ハリーが言った。
「クリスマスに、あのダンスなんとかっていうやつに来るの?」
「ちょっと覗いてみるかと思っちょる。ウン」ハグリッドがぶっきらぼうに言った。
はそれを聞きながら、胸が締め付けられるような思いがした。それに気づいたのか、ハグリッドがに言った。
「気にするな、。誰も、お前さんがあんなだとは思っとらん」
ポンポンとハグリッドの大きな手がの頭をなで、の笑顔を誘った。
「気にしてないわ、ハグリッド」
は笑顔をハグリッドに見せた。
「ありがとう。私なら大丈夫よ」
ハグリッドはそれ以上追求しなかった。
学期最後の週は、日を追って騒がしくなった。クリスマス・ダンスパーティーの噂が周り中に飛び交っていたが、その半分は眉唾だと思った―――たとえば、ダンブルドアがマダム・ロスメルタから蜂蜜酒を八百樽買い込んだとかだ。ただ、ダンブルドアが「妖女シスターズ」の出演を予約したというのは本当らしかった。
何人かの先生方は―――チビのフリットウィック先生もその一人だったが―――生徒がまったく上の空なので、しっかり教え込むのは無理だと諦めてしまった。フリットウィックは水曜の授業で、生徒にゲームをして遊んでよいといい、自分はほとんどずっと、対抗試合の第一の課題でハリーが使った完璧な「呼び寄せ呪文」についてハリーと話し込んだ。ほかの先生は、そこまで甘くはなかった。たとえばビンズ先生だが、天地が引っくり返っても、この先生は「ゴブリンの反乱」のノートを延々と読み上げるだろう―――自分が死んでも授業を続ける妨げにならなかったピンズ先生のことだ。たかがクリスマスごときでおたおたするタマではないと、みんなそう思った。血生臭い、凄惨なゴブリンの反乱でさえ、ビンズ先生の手にかかれば、パーシーの「鍋底に関する報告書」と同じように退屈なものになってしまうのは驚くべきことだった。マクゴナガル先生、ムーディ先生の二人は、最後の一秒まできっちり授業を続けたし、スネイプももちろん、クラスで生徒にゲームをして遊ばせるくらいなら、むしろハリーを養子にしただろう。生徒全員を意地悪くジロリと見渡しながら、スネイプは、学期の最後の授業で解毒剤のテストをすると言い渡した。
「悪だよ、あいつ」
その夜、グリフィンドールの談話室で、ロンが苦々しげに言った。
「急に最後の授業にテストを持ち出すなんて。山ほど勉強させて、学期末を台無しにする気だ」
「うーん・・・・・でも、あなた、あんまり山ほど勉強しているように見えないけど?」
ハーマイオニーは「魔法薬学」のノートから顔を上げて、ロンを見た。ロンは「爆発スナップ」ゲームのカードを積んで城を作るのに夢中だった。カードの城がいつなんどきいっぺんに爆発するかわからないので、マグルのカードを使う遊びよりずっとおもしろい。
「クリスマスじゃないか、ハーマイオニー」
ハリーが気だるそうに言った。暖炉のそばで、肘掛け椅子に座り、本を読んでいるところだった。その足元ではがうつらうつらしている。
「解毒剤のほうはもう勉強してくないにしても、ハリー、あなた、何か建設的なことをやるべきじゃないの!」
そんなハーマイオニーの声ではビクッと目を覚ました。
「たとえば?」ハリーが聞いた。
「あの卵よ!」ハーマイオニーが歯を食いしばりながら言った。
「そんなぁ。ハーマイオニー、二月二十四日までまだ日があるよ」
そんなハリーの声と重ねるようにが欠伸した。
「解明するのに何週間もかかるかもしれないわ。ほかの人が全部次の課題を知っているのに、ハリーだけ知らなかったら、間抜け面もいいとこでしょ!」
「ほっといてやれよ。ハーマイオニー。休息してもいいだけのものを勝ち取ったんだ」
ロンはそう言いながら、最後の二枚のカードを城のてっぺんに置いた。とたんに全部が爆発して、ロンの眉毛が焦げた。
「男前になったぞ、ロン・・・・・おまえのドレスローブにぴったりだ。きっと」
フレッドとジョージだった。ロンが焦げ具合を触って調べていると、二人はテーブルに来て、ロン、ハーマイオニーと一緒に座った。
「ピッグウィジョンを借りてもいいか?」ジョージが聞いた。
「だめ。いま手紙の配達に出てる」ロンが言った。「でも、どうして?」
「ジョージがピッグをダンスパーティーに誘いたいからさ」フレッドが皮肉った。
「俺たちが手紙を出したいからに決まってるんだろ。バカチン」ジョージが言った。
「二人でそんなに次々と、だれに手紙を出してるんだ、ん?」ロンが聞いた。
「嘴を突っ込むな」
フレッドが脅かすように杖を振った。
「で・・・・・みんな、ダンスパーティーの相手を見つけたか?」
「まーだ」ロンが言った。
「なら、急げよ、兄弟。さもないと、いいのは全部取られっちまうぞ」フレッドが言った。
「それじゃ、兄貴はだれと行くんだ?」ロンが聞いた。
「アンジェリーナ」フレッドはまったく照れもせず、すぐに答えた。
「え?」ロンは面食らった。「もう申し込んだの?」
「いい質問だ」
そう言いながら、やおら後ろを振り向き、フレッドは談話室のむこうに声をかけた。
「おーい!アンジェリーナ!」
暖炉のそばでアリシア・スピネットとしゃべっていたアンジェリーナが、フレッドのほうを振り向いた。
「なに?」声が返ってきた。
「俺とダンスパーティーに行くかい?」
アンジェリーナは品定めするようにフレッドを見た。
「いいわよ」
アンジェリーナはそう言うと、またアリシアの方を向いておしゃべりを続けた。口元がかすかに笑っていた。
「こんなもんだ」フレッドがロンに言った。「かーんたん」
フレッドは欠伸をしながら立ち上がった。
「学校のふくろうを使ったほうがよさそうだな、ジョージ、行こうか・・・・・」
二人がいなくなった。ロンは燻っているカードの城の残骸の向こう側からハリーを見た。
「僕たち、行動開始すべきだぞ・・・だれかに申し込もう。フレッドの言う通りだ。残るはトロールと二匹、じゃ困るぞ」
ハーマイオニーは癇に障ったように聞き返した。
「ちょっとお伺いしますけど、二匹の・・・・・なんですって?」
「あのさ――ほら」ロンが肩をすくめた。
「一人で行く方がましだろ?――たとえば、エロイーズ・ミジョンと行くくらいなら」
「あの子のにきび、このごろずっとよくなったわ――それにとってもいい子だわ!」
「鼻が真ん中からズレてる」ロンが言った。
「ええ、わかりましたよ」
ハーマイオニーがチクチク言った。
「それじゃ、基本的に、あなたは、お顔のいい順に申し込んで、最初にオーケーしてくれる子と行くわけね。メチャメチャいやな子でも?」
「あ――ウン。そんなとこだ」ロンが言った。
「私、もう寝るわ」
ぴしゃりと言うと、ハーマイオニーは口もきかずに、さっと女子寮への階段に消えた。
「もう、ロンは余計なこと言いすぎよ」
が伸びをしながらそう言った。
「あれ、寝てたのかと思ったけど」
ハリーは本をパタンと閉じて、を見下ろした。
「あなたたちがうるさくて寝れやしないわ」
「うるさかったのは僕じゃないけどね」
嫌味っぽくそう言って、ハリーはロンを見た。
「だって、本当のころだろ?顔が悪いより、良い方がいいじゃないか」ロンが弁解がましく言った。
「人間は外見より、内面の方が大事だわ。まあ、私がどう言ったって、関係ないでしょうね。それに、可愛い子は、もうほとんど先約があるわよ」
は立ち上がり、もう一度伸びをすると、ロンを見た。
「じゃあ、君はどうなのさ?もう先約がいるのか?」
ロンのさりげない質問だったが、は触れられたくない傷口に触れられたような気がして、一瞬なんて答えていいのか分からなくなった。
「あるわけないでしょ。あんな新聞記事が出たんだから」
ロンはハッとして、少し、すまなそうな顔をした。
「――私、散歩してくるわ」
は同情的に見られるのが嫌で、言うが早いが、立ち上がり談話室を出て行った。
「私だって誰かと踊りたかったわ」
は一人、悲しげにそう呟きながら廊下を歩き続けた。あんな記事が出なければ、今頃、パーティが楽しみだっただろうに――と。
今や、誰も自分を誘う人なんていないだろう。それなら、クリスマス当日は寝室にでも引きこもっていようと思った。
そのときだった。

「フレッド、ジョージ」
手紙を出してきた帰りだろう。
「うかない顔してどうした?」フレッドが聞いた。
「また何か言われたか?」とジョージ。
「ううん、違うの。ただ、誰と一緒にパーティにいけばいいのかわからなくて・・・・・」
は涙を見せまいと、笑ってみせた。
「なんだ、そんなことか」
クスクスとジョージが笑い、フレッドもなんだか安心した顔になった。しかし、は一人、話についていけなかった。そして、二人は彼女に優しい笑顔を見せた。
「なら、俺とダンスパーティに行かないかい?」ジョージが聞いた。
はきょとんとした。彼は今、なんと言ったのだろう。
「俺じゃ不満?」
はポカンとしたままジョージを見つめた。
「相棒。思うに、彼女は状況を把握しきれていないようだ」
フレッドがそう言うと、ジョージも軽く相槌を打った。
「わ、私とダンスパーティに行ってくれるの?」
と、が突然声を発した。それを聞くと、ジョージは笑いながら答えた。
「嫌だったらを誘わないさ。第一、学校一の美少女と行けるなんて、俺の方こそ光栄さ」
はちょっと赤くなながらジョージを見た。優しく笑っている。
「一緒に行きたい」
「よし、これで決まりだ」
フレッドがポンッと手を叩き、楽しげに言った。
「よろしくな、
ジョージはの頭を撫でた。

ホグワーツの教職員は、ボーバトンダームストラングの客人を、引き続きあっと言わせたいとの願いを込め、クリスマスには城を最高の状態で見せようと決意したようだ。飾り付けが出来上がると、それは、ハリーがこれまでホグワーツ城で見た中でも最高にすばらしいものだった。大理石の階段の手すりには万年氷の氷柱が下がっていたし、十二本のクリスマスツリーがいつものように大広間に並び、飾りは赤く輝く柊の実から、本物のホーホー鳴く金色のふくろうまで、盛りだくさんだった。鎧兜には全部魔法がかけられ、だれかがそばを通るたびに、クリスマス・キャロルを歌った。中が空っぽの兜が、歌詞を半分しか知らないのに、「♪神の御子は今宵しも」と歌うのは、なかなかのものだった。ピーブズは鎧に隠れるのが気に入り、抜けた歌詞のところで勝手に自分で作った合いの手を入れ、それが全部下品な歌詞だったので、管理人のフィルチは、鎧の中から何度もピーブズを引きずり出さなければならなかった。
金曜日の朝、はロンが難攻不落の砦に攻め入る計画を練っているかのようにハリーに語りかけているのを聞いた。
「ハリー――われわれは歯を食いしばって、やらねばならぬ。今夜、談話室に戻るときには、われわれは二人ともパートナーを獲得している――いいな?」
果たして、上手くいくだろうかと思った。絶対とは言い切れないが、きっとハリーが誘いたいのはチョウ・チャンだろう。しかし、はチョウが自らセドリックを誘うのを耳にしている。セドリックの答えは聞いていないが、彼があれから自分に接触するのを避けていることから考えると、きっと答えはイエスだろう。
その日、一日、ハリーもロンもおかしかった。きっとそれぞれのパートナーを誘うことで精一杯なのだろう。
夕食前、ハリーもロンもとハーマイオニーに別れを告げ、それぞれのパートナーを捜しに行った。
「夕食に行きましょう、
やれやれと、ハーマイオニーは呆れ顔で二人を見送ると、に言った。
「ねえ、
「なあに?」
夕食を食べながら、は心配そうなハーマイオニーの声に返事した。
「あなたはパートナー、決まったの?」
自分のことのように心配してくれるハーマイオニーに嬉しく思いながら、は笑顔で頷いた。
「ジョージと行くわ。ハーマイオニーは?」
が照れもせず、そう言ったのに対し、ハーマイオニーは赤くなりながら、小さな声で言った。
「笑わない?」
「えぇ、もちろん」が答えた。
「クラム。ビクトール・クラムよ」
数秒、沈黙したのち、はわーっと歓声を上げた。何事だろうかと、周囲は二人に注目したが、はそんなことお構いなしにハーマイオニーに言った。
「すごいわ、ハーマイオニー。おめでとう!よかったね」
クラムのことも、あの告白後、ずっと心配していたにとって、その報告は嬉しいものだった。
「ありがとう、
ハーマイオニーはますます赤くなりながら言った。
「それでね、
ハーマイオニーは少し落ちつきを取り戻し、に向き直った。
「ビクトールがあなたに悪いことをしたって、謝ってたわ。自分があんなことをしたばかりにって」
ビクトールのこと、怒ってる?とハーマイオニーがの顔色を伺った。
「いいえ」
はハーマイオニーに静かに答えた。
「クラムのせいじゃないわ。それに、私、もう大丈夫よ。確かに辛いときもあるけど、でも、去年よりはマシよ。ハーマイオニーが傍にいてくれるもん。クラムに取られなきゃね」
クスクスと笑い、はハーマイオニーを見た。ハーマイオニーも笑っている。
「私もがジョージに取られないか、心配だわ」

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ジョージとのダンパは楽しみですね。