Invitation お誘い
「それで、ハーマイオニーはどこに行ってたの?」
は大分気持ちが落ち着いたが、まだハリーとロンには会いたくなかった。
「あぁ、ドビーとウィンキーに会いに行ってたの。はじめ、私はフレッドとジョージが言ってたように大広間にあるドアに入って、地下通路を降りて、屋敷しもべ妖精に会いに行ったの。そしたら、ドビーとウィンキーがいたから急いでハリーとロンをつれてきたのよ」
「二人とも元気だった?」
はベッドに寝そべりながら聞いた。少し眠くなってきた。
「えぇ、ウィンキーはまだショック状態だったけど・・・・・それは時が解決してくれると思うわ。それに、ドビーがホグワーツに来たことで、きっと最高のことが起きたって言えるわ。だって、自由の身になったドビーがどんなに幸せか分かれば、きっとほかの妖精たちも自分も自由になりたいって徐々に気づくと思うわ!それできっと――」
そのあとはの耳に入っていなかった。もうすでにの意識は夢の中だった。

「ポッター!ウィーズリー!こちらに注目しなさい!」
木曜日の「変身術」のクラスで、マクゴナガル先生のイライラした声が、鞭のようにビシッと教室中に響いた。ハリーとロンが飛び上がって先生のほうを見た。
「さあ、ポッターもウィーズリーも、年相応な振る舞いをしていただきたいものです」
マクゴナガル先生は二人組を恐い目でにらんだ。課題も、黒板に書かれた宿題も写し終えていた二人は、教室の後ろで「だまし杖」を二本もってチャンバラしていたのだ。
「皆さんにお話があります。クリスマス・ダンスパーティーが近づきました――三大魔法学校対抗試合の伝統でもあり、外国からのお客様と知り合う機会でもあります。さて、ダンスパーティは四年生以上が参加を許されます――下級生を招待することは可能ですが――」
ラベンダーが甲高い声でクックッと笑った。パーバティは自分もクスクス笑いたいのを我慢して、ラベンダーのわき腹を小突いた。
「パーティ用のドレスローブを着用しなさい」
マクゴナガル先生の話が続いた。
「ダンスパーティは、大広間で、クリスマスの夜八時から始まり、夜中の十二時に終わります。ところで――」
マクゴナガル先生はことさらに念を入れて、クラス全員を見回した。
「クリスマス・ダンスパーティは私たち全員にとって、もちろん――コホン――髪を解き放ち、羽目を外すチャンスです」しぶしぶ認めるという声だ。
「しかし、だからと言って決してホグワーツの生徒に期待される行動基準を緩めるわけではありません。グリフィンドール生が、どんな形にせよ、学校に屈辱を与えるようなことがあれば、私としては大変遺憾に思います」
ベルが鳴った。みんながカバンに教材を詰め込んだり、肩にかけたり、いつもの慌ただしいガヤガヤが始まった。
その騒音を凌ぐ声で、マクゴナガル先生が呼びかけた。
「ポッター――ちょっと話があります」
「先に行ってて」
ハリーはにそう言うと、荷物を机に置いて、マクゴナガル先生の机の前に進んで行った。
「先に行っててだって」
がロンとハーマイオニーを振り返ると、二人も了解したようにについてきた。もうこのあとは授業がないので、三人はグリフィンドール塔へ足を速めた。冬の廊下は寒いのだ。
「でもさ、ダンスパーティ、誰と踊るの?自分が踊っている姿なんて想像できない」
はクスクス笑った。
「そうかもしれないけど、君ならたくさん申し込みが来るだろ。売り残る可能性がないじゃないか。」ロンが言い返した。
「あら、ロンだって自分から申し込めば、意外にokしてくれる人がいるんじゃない?」
がロンに気づかれないように、チラッとハーマイオニーに視線を投げると、彼女はそっぽを向いてしまった。

クリスマスにホグワーツに残る希望者リストに、こんなに大勢の名前が書き込まれるのをは初めて見た。もちろん、は今年のクリスマスはホグワーツに残る予定だった。悪夢を見たときに家にいたらこの先、外出させてくれなくなるかもしれないし、第一、ハリーもロンもハーマイオニーも帰らないのに、自分だけ帰りたくはない。たとえ、ダンスパーティが嫌でもだ。
、あなた、そんなに気になるなら、自分から申し込んだら?」
一人、イライラと本をめくるにハーマイオニーは耐え切れなくなって声をかけた。
「私、ダンスなんてしないわ」
「夕食食べられないわよ」
ハーマイオニーが間髪入れずに言い返してくるので、はパタンと本を閉じて、彼女を見た。
「第一、私、踊りたい人なんていないわ」
「そうかしら?」
すまし顔でこちらを見るハーマイオニーにはイラついた。
「いないったら!」
「じゃあ、どうして最近代表選手ばっかり見ているのかしら?――誰とは言わないけど」
ニッコリと微笑むハーマイオニーが悪魔に見えた瞬間だった。
「もう!」
「それはこっちのセリフ」
ハーマイオニーがの顔を覗き込んだ。
「私、の恋を応援しているのよ?セドリックと良い雰囲気みたいじゃない。夏休み、一緒に出掛けたんでしょう?」
はどうしてハーマイオニーがそれを知っているのかと、驚きを隠せなかった。
「ディゴリー氏が言ってたじゃない。ほら、ワールドカップの会場に向かうときの・・・・・」
あぁ、それでか、と納得は出来たが、他人に自分の好きな人を知られているのは恥ずかしい。
「でも、セドリックは誘えないわ。人気あるし。もう、行く人が決まっているんじゃないかしら」
は少し赤くなった。最近、セドリックの話をするだけで顔が赤くなってしまう。
「そうかしら。やっぱりクリスマス・ダンスパーティって、行きたい人と行くのが一番楽しいから、早い者勝ちっていうわけじゃないと思うわよ」
一方、ハーマイオニーはの様子に驚きもせず、ただ冷静にそう言っただけだった。
「そうかなぁ・・・・・」
そうはいっても、の気持ちが晴れることはなかった。
そしてその翌日の夕方、チャンスは訪れた。
、少し話せるかな」
その日の授業はすべて終わり、はハーマイオニーとグリフィンドール塔へ向かっていた。すると、背後から足音が聞こえ、は振り向いた。
「え、えぇ、いいわ」
はいきなりうるさくなった心臓の音が、回りに聞こえませんように、と願いながら、ハーマイオニーに別れを告げた。
去り際、ハーマイオニーが「頑張って」と言った気がした。
「ごめんね、急に」セドリックが言った。
「ううん、大丈夫」
は自分に合わせてゆっくり歩いてくれるセドリックの後を追いかけた。
「話って?」
は耐え切れず、そう聞いた。まるで、第一の課題をセドリックに教えた日のようだとは思った。
しかし、セドリックはの質問には答えず、そのまま黙って歩いた。そして、人気のない、クイディッチ競技場まできた。今年、魔法学校対抗試合のため、開催されることのないクィディッチの試合で、競技場はなんだか淋しかった。
「クィディッチ、やりたいでしょうね」がしみじみと言った。
「うん、箒で飛んだのが懐かしいよ」
今度はセドリックはちゃんと答えてくれた。
「それで?」
は耐え切れず、そう聞いた。さっきからずっと気になっていた。何故、セドリックが自分を呼んだのか。まさか、ダンスパーティに――なんていう期待はは持ちたくなかったが、期待せずにはいられなかった。
「あ、うん。えっと、もしよかったら、僕と――」
セドリック!
そのとき、誰かが、セドリックの言葉をさえぎって、彼の名前を呼んだ。の姿はセドリックに隠れ、彼が一人だと思ったらしい。その人物はがいることに気づかずに後を続けた。
「私と、ダンスパーティに行かない?」

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