Declaration of love 愛の告白
「どうしたの?」
はクラムを見上げた。彼は何か迷っているようだった。
「ヴぉくは――」
まるでクラムの緊張が移ったように、も体がカチコチになった。
「もし――」
クラムは何かを言いかけては、また口を閉じ、それを繰り返した。
「君が、その――」
にはクラムが何を言おうとしているのか、まったくわからなかった。
クラムはしばらく黙り、深く息を吸い込んだ。はクラムに何かされるのかと思い、身構えたが、その必要はなかった。
「――ヴぉくは、君が好きです」
は自分の顔がいっきに赤くなるのを感じた。周りが暗くてよかった。は心からそう思った。
男の子からこんなことを言われたのは初めてで、どうしていいのか、わからない。
「もし、他に好きな人がいないならヴぉくと付き合って・・・・・」
クラムの声はだんだん小さくなっていったが、彼が何を言おうとしているのかはすぐにわかった。
「ああ、クラム――」
は何故か、セドリックの笑顔が頭に浮かんだ。
「ごめんなさい」
は小さな声で言った。
「私、あなたのこと、好きだわ。だけど、あなたが言っているような好きじゃない――」
はクラムの顔が見れなかった。
「でも、私、あなたのこと、とっても良い人だと思う。優しい目をしてるから・・・・・だけど、私、あなたとは――」
は最後まで言えなかった。けれど、クラムには伝わっていた。嫌な沈黙の後、クラムが小さな声で「うん」と言ったのが聞こえた。もしかしたら、空耳だったかもしれない。
「時間、とらせてすみません」
クラムが、今度はいつもの声のトーンでに言った。
「もう暗いから、城まで送ります」
クラムは気にしていないようにも見えた。しかし、前を歩くクラムの背中は寂しそうだった。
「ごめんなさい、クラム」
玄関ホールで、は再びクラムに言った。
「気にしないで下さい。ヴぉくに付き合わせてすみませんでした」
クラムはクルリと背を向けて、城の外へ出ていこうとした。はその背中に、いつの間にか叫んでいた。
「クラムには、もっと良い人が似合うわ」
クラムに聞こえたか、わからなかった。は何故か、惨めな気持ちになった。こんなときこそ、誰かが近くにいてほしかった。

「もう、、どこにいたのよ!」
グリフィンドールの談話室に帰ると、暖炉の前にハリーとロンとハーマイオニーがいて、も暖炉の前に引っ張られた。
「図書館にいるって聞いたから、図書館に行ったのに、あなたはいないし、談話室にも帰ってないし!」
ハーマイオニーがガミガミとに言った。
「ん・・・・・」
「何か、あったの?」
ハーマイオニーはすぐに元気のないに気づき、心配そうな声になった。
「・・・・・ううん」
しかし、はかすかに首を振っただけだった。
「なにかあったのね」
ハーマイオニーは意地を張るに内心苦笑しながらも、今度は何があったのか、聞きだそうとした。
「私、惨めだ」
「はぁ?」
一言そう呟いたに、意味がわからないという顔をしたのは何も、ハーマイオニーだけではなかった。
「本当に、なにがあったんだい?
ハリーが業を煮やしたように、少し怒ったように聞いた。
「何もないの。ただ、私が幼すぎるだけ」
「なんだそれ?何かの真似?」ロンが笑った。
「私、ママと話したい」
出し抜けにが言った。ハーマイオニーはハリーと顔を見合わせると、にそっと触れた。
「話せば、少し楽になるわ」
しかし、はハーマイオニーの手をほどき、寝室へ向かうべく立ち上がった。
「今日はもう疲れたから寝る」
、待って」
そのあとをハーマイオニーが追いかけてきたが、はこうなることを予想していた。時にうっとうしくなるくらい、彼女は心配性だから。
寝室のドアを閉め、ベッドに横になったが、あまり意味はなかった。ハーマイオニーがすぐに寝室に入ってきて、のベッドに遠慮なく腰掛けた。
「わかった、話すわ」
は諦めたように、呟いた。
「最初から素直に話していればよかったのに」
「ハリーたちには聞かれたくなかったの」
勝ち誇ったように言うハーマイオニーに、はそう言い返した。
「私、たった今、一人の男の人を振ってきたの」
「それで?」
ハーマイオニーはがそう言った事実になんとも思わないようだった。
「振ったの」
「それはわかったわ」
はなかなか気持ちを察してくれないハーマイオニーにイライラした。
「だから、付き合って、って言われたけど、断ったの」
「――そのくらい、わかるわよ、
バカ丁寧に説明するにハーマイオニーはため息をついた。
「振って、だからなんなの?」
は呆然とハーマイオニーを見た。
「わかんないの?ハーマイオニー」
「だからなんなのよ」
ハーマイオニーもはっきりと物を言わないにイライラしてきているようだった。
「私、その人のこと、傷つけたんだよ」
しばらくの沈黙があって、ハーマイオニーが噴き出した。
「なんで笑うのよ!」
は手近にあった枕をハーマイオニーに投げつけたが、効果はなかった。相変わらず、ハーマイオニーは笑い続けている。
「そんなことでいちいち沈んでいたら、世の中の、今まで男の人を振ったことのある人はいなくなっちゃうわ」
ハーマイオニーは笑いすぎて、息も絶え絶えだった。
「確かに思うほうも真剣だろうけど、それ以前に、思うほうはその思い人に幸せになって欲しいと思っているはずよ」
だから、振るのは悪いことじゃない、とハーマイオニーは続けた。
「いまいちわかんない」は正直に言った。
「そうね、それじゃあ簡単に言うけど――」
ハーマイオニーは少し考えながら答えた。
「もし、がその告白してきた人を好きじゃなくて、でも、断る勇気がなくて、付き合ってしまったとするわね?そしたら、あなたはその人を騙していることになるの。わかる?」
「うん、自分がやられたら、とっても嫌」
は顔をしかめて見せた。
「そしたら、素直に自分の気持ちを相手に伝えることが、一番の最善策だってわかるでしょ?」
上手くハーマイオニーに言いくるめられた気がしたが、は納得できたので、深く考えないことにした。
「ありがとう、ハーマイオニー。元気でた」
が明るくそういうと、ハーマイオニーもにっこりした。

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クリスマスなのに、振られる話って・・・・・(-"-)