The Weighing of the Wands 杖調べ
ハリーがいなくなると、スネイプはいつもよりいっそう不機嫌になった。グリフィンドール生は以外、全員が注意された。
スネイプはの鍋をちらっと覗くと黙ってそのまま通り過ぎたのだ。もしかしたら、隣で作業していたネビルの鍋から立ち込める臭い匂いに耐え切れなかったのかもしれない。
「さて」
スネイプは一番前に戻り、クラス全員を見渡した。
「全員煎じ終わったであろう解毒剤の実験を行う・・・・・」
スネイプはをまず見て、それから隣で緊張から震えているネビルに視線が移った。
「ロングボトム、君の解毒剤をこの瓶に掬い、前に持ってこい。我輩はその間に毒の準備をする」
スネイプはどうやら本気のようだった。は明らかに失敗作であろうネビルの鍋を見た。ネビルは震える足を引きずりながら、スネイプが指定した瓶を取りに行っていた。
はスネイプが毒を取りに事務所に姿を消したのを見届けて杖を取り出した。運よく、が座っていたのは一番後ろなので誰にも気付かれない。
が一言呪文を唱えると、の鍋とネビルの鍋が光り、また一瞬で元に戻った。
はちょっと立ち上がって、自分の鍋とネビルの鍋を見比べた。大丈夫、確かに中身は交換されて、のには、悪臭立ち込める失敗作の解毒剤が入っていた。
しかし、戻ってきたネビルはびっくりしたようだった。はネビルに大丈夫だ、と囁くと、なんでもない顔をして他の生徒と同じように前を見た。
「さてロングボトム。飲んでいただこう」
スネイプもスリザリン生も、このあとネビルがどうなるのかニヤニヤと眺めた。一方、グリフィンドール生は心配そうにネビルを見ていたが、は心配そうなふりをしているだけだった。
「早く飲むのだ」
ネビルの手には毒薬が、スネイプの手にはネビルの解毒剤があった。ネビルは意を決したように一口飲んだ。たちまちネビルの顔は引き付けを起こしたように強張り、その場に倒れ込んだ。
「ただの麻痺薬だ。死にはしない」
スネイプは冷たくそう言って、ネビルの口に、解毒剤を流し込んだ。
たちまちネビルは元気になり、グリフィンドール生からは拍手が起こった。
「ブラック!」
スネイプがをにらんだ。
「我輩は確かにロングボトム自身の解毒剤を持ってくるように言ったはずだが」
「確かにそうです、スネイプ先生」
は平然と答えた。
「確かにそれはネビルの解毒剤です」
がそう答えると、スネイプはツカツカとのテーブルにまでやってきて、鍋を覗き込んだ。の鍋からは相変わらず悪臭が立ち込めている。
「入れ換えたな?」
スネイプが低い声で言った。
「いいえ、スネイプ先生」
は静かに言った。
するとそのとき、ピリピリとした雰囲気の中に、授業の終了の鐘が鳴り響いた。
「――今日はここまでだ。ウィーズリー、明日の夜、我輩の教室で居残り罰。ポッターにも伝えるように」
わっと地下牢教室から生徒たちが溢れ出た。

生徒たちが大広間に向かおうとする波に逆らっていると、は誰かに名前を呼ばれた。
「あら、ネビル。よかったね、解毒剤が成功してて」はニッコリ笑った。
「でも、あれ、僕のじゃなかった――」
「鍋はあなたのだったわ、ネビル」
がそう指摘すると、ネビルは「でも――」と言いかけた。
「ネビル、あなたの鍋に入っていたんだから、あなたの解毒剤よ。私のじゃないわ。私、今から寄るところがあるの。また後でね」
は一気にまくし立て、ネビルと離れた。そして、医務室に向かった。ハーマイオニーの歯が無事に戻っていればいいのだが。
「先生、ハーマイオニーのお見舞いに来たんですけど」
がマダム・ポンフリーの事務所を覗くと、マダム・ポンフリーは快く、とまではいかないが、ハーマイオニーのお見舞いを許してくれた。
「あら、
ハーマイオニーの歯はもう戻っていた。
「ハーマイオニー、歯、戻ったのね」
がニッコリ笑うと、ハーマイオニーもニッコリ笑った。しかし、その笑顔にはなんだか違和感を覚えた。
「ハーマイオニー、なんだか歯が・・・・・」
が首をかしげると、ハーマイオニーが小さな声で教えてくれた。
「マダム・ポンフリーが歯を短くしてくれたとき、ちょっと余分にやらせてあげたのよ」
「前歯なんて気にすることないのに」
がそう言うと、ハーマイオニーは肩をすくめた。
「一緒に大広間に行ける?」
が尋ねると、それを聞いていたのか、マダム・ポンフリーが事務所から顔を出して言った。
「患者は夕食をここで食べて、異常がなければ寮に戻ります」
が残念そうな顔をすると、ハーマイオニーが「ごめんね」と言った。
「大丈夫。それじゃあハリーのとこに行くね」
「ええ、また後で」
はハーマイオニーに手を振って、医務室を出た。
医務室を出て、大広間に向かう途中、代表選手の一団に遭遇した。フラーはを子供だと見下したような目で見て、クラムは何故かすぐに目を逸らしてしまった。セドリックは相変わらず笑顔で、に微笑みかけた。ハリーはなんだか疲れきっているようだ。
「やあ、
セドリックに話しかけられて、は代表選手の一団の中に入った。すれ違う女の子からの視線が痛かったが、去年、狂った殺人鬼だと言われているシリウスの娘だと偏見の眼で見られるよりは良かった。
「こんにちは、セドリック。ハリー、ハーマイオニーは大丈夫だって」
はセドリックとハリーに挟まれて歩いた。
「何かあったのかい?」セドリックが心配そうに聞いた。
「うん、ちょっとね。でも大丈夫よ。解決してるから」
が笑うと、何故かクラムが話しに入りたそうにもぞもぞとした。
「四人はなにしてたの?」
はそれに気づき、クラムとフラーをちょっと振り返って聞いた。
「杖調べ」
はクラムがしゃべるところを始めて見た。
「杖調べって?」がクラムに聞き返した。
しかし、クラムはそれ以上、しゃべってくれなかった。セドリックが変わりに答えた。
「試合に先立って、僕らの杖が良い状態か調べるんだよ――みんなよい状態だって」
「それと、写真を撮りまーした」
フラーが長いシルバーブロンドの髪を流しながら言った。
「写真、ね」
はコリンが地下牢教室にハリーを呼びに来たときのことを思い出した。コリンも内心は、自分がハリーを撮りたかったのではないだろうか。顔に出ていたようで、ハリーが別になにもなかった、と釘をさした。
は何の授業だったの?」
セドリックに聞かれ、はスネイプの最後の企みが失敗に終わったときの殺気立った表情を思い出した。
「スネイプの魔法薬学」
がそう答えたとき、大広間のざわめきが大きくなり、四人は別れを告げた。クラムはハリーとと一緒にグリフィンドールのテーブルについていきそうな気配だったが、ドラコ・マルフォイを見つけると、そちらに行った。

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代表選手の仲間入り?