七時になると、二卓のテーブルは、ウィーズリーおばさんの腕を振るったご馳走がいく皿もいく皿も並べられ、重みで唸っていた。紺碧の澄み渡った空の下で、ウィーズリー家の九人と、ハリー、、ハーマイオニーとが食卓についた。
テーブルの一番端で、パーシーが父親に鍋底の報告書について話していた。
「火曜日までに仕上げますって、僕、クラウチさんに申し上げたんですよ」
パーシーがもったいぶって言った。
「クラウチさんが思ってらしたより少し早いんですが、僕としては、何事も余裕を持ってやりたいので。クラウチさんは僕が早く仕上げたらお喜びになると思うんです。だって、僕たちの部はいまものすごく忙しいんですよ。なにしろワールドカップの手配なんかがいろいろ。『魔法ゲーム・スポーツ部』からの協力があってしかるべきなんですが、これがないんですねぇ。ルード・バグマンが――」
「わたしはルードが好きだよ」
ウィーズリー氏がやんわりと言った。
「ワールドカップのあんなにいい切符を取ってくれたのもあの男だよ。ちょっと恩を売ってあってね。弟のオットーが面倒を起こして――不思議な力を持つ芝刈り機のことで――わたしがなんとか取り繕ってやった」
「まあ、もちろん、バグマンは
好かれるくらいが関の山ですよ」
パーシーが一蹴した。
「でも、いったいどうして部長にまでなれたのか・・・・・クラウチさんと比べたら!クラウチさんだったら、部下がいなくなったのに、どうなったのか調査もしないなんて考えられませんよ。バーサ・ジョーキンズがもう一ヶ月も行方不明なのをご存知でしょう?休暇でアルバニアに行って、それっきりだって?」
「ああ、そのことはわたしもルードに尋ねた。」
ウィーズリーおじさんは眉をひそめた。
「ルードが、バーサは以前にも何度かいなくなったと言うのだ――もっとも、これがわたしの部下だったら、わたしは心配するだろうが・・・・・」
「まあ、バーサはたしかに
救いようがないですよ」パーシーが言った。
「これまで何年も、部から部へとたらい回しにされて、役立つというより厄介者だし・・・・・しかし、それでもバグマンはバーサを探す努力をすべきですよ。クラウチさんが個人的にも関心をお持ちで――バーサは一度うちの部にいたことがあるんで。それに、僕はクラウチさんがバーサのことをなかなか気に入っていたのだと思うんですよ――それなのに、バグマンは笑うばかりで、バーサはたぶん地図を見間違えて、アルバニアでなく、オーストラリアに行ったのだろうって言うんですよ。しかし」
パーシーは、大げさなため息をつき、ニワトコの花のワインをグイッと飲んだ。
「僕たちの『国際魔法協力部』はもう手いっぱいで、他の部の捜索どころではないんですよ。ご存知のように、ワールドカップのすぐあとに、もう一つ大きな行事を組織するのでね」
パーシーはもったいぶって咳払いをすると、テーブルの反対端のほうに目をやり、ハリー、ロン、、ハーマイオニーを見た。
「お父さんは知っていますね、僕が言っていること」
ここでパーシーはちょっと声を大きくした。
「あの極秘のこと」
ロンはまたかという顔でハリーととハーマイオニーに囁いた。
「パーシーのやつ、仕事に就いてからずっと、なんの行事かって僕たちに質問させたくて、この調子なんだ。厚底鍋の展覧会かなんかだろ」
テーブルの真ん中で、ウィーズリーおばさんがビルのイヤリングのことで言い合っていた。最近つけたばかりらしい。
「・・・・・そんなとんでもない大きい牙なんかつけて、まったく、ビル、銀行でみんななんと言ってるの?」
「ママ、銀行じゃ、僕がちゃんとお宝を持ち込みさえすれば、だれも僕の服装なんか気にしやしないよ」ビルが辛抱強く話した。
「それに、あなた、髪もおかしいわよ」
ウィーズリーおばさんは杖をやさしくもてあそびながら言った。
「私に切らせてくれるといいんだけどねぇ・・・・・」
「あたし、好きよ」
ビルの隣に座っていたジニーが言った。
「ママったら古いんだから。それに、ダンブルドア先生のほうが断然長いわ・・・・・」
ウィーズリーおばさんの隣で、フレッド、ジョージ、チャーリーが、ワールドカップの話で持ちきりだった。
「絶対アイルランドだ」
チャーリーはポテトを口いっぱい頬張ったまま、モゴモゴ言った。
「準決勝で、ペルーをペチャンコにしたんだから」
「でも、ブルガリアにはビクトール・クラムがいるぞ」フレッドが言った。
「クラムはいい選手だが、一人だ。アイルランドはそれが七人だ」チャーリーがキッパリ言った。
庭が暗くなってきたので、ウィーズリーおじさんが蝋燭を作り出し、灯りを点けた。それからデザート――手作りのストロベリー・アイスクリームだ。みんなが食べ終わるころ、夏の蛾がテーブルの上を低く舞い、芝草とスイカズラの香りが暖かい空気を満たしていた。
ロンがテーブルをずっと見渡し、みんなが話に気を取られているのを確かめてから、低い声でハリーに聞いた。
「それで――シリウスもルーピンも
大丈夫なんだね?」
ハーマイオニーが振り向いて聞き耳を立てた。
「うん、元気だよ。がとっても嬉しそうにしてる――ね、?」
ハリーは隣にいたに、からかい半分にそう言った。
「ハリーだって、パパがいて嬉しそうじゃない」
がむくれてそう言い返すと、ロンもハーマイオニーも相変わらずの二人にクスリと笑った。
「もうこんな時間」
ウィーズリーおばさんが腕時計を見ながら急に言った。
「みんなもう寝なくちゃ。全員よ。ワールドカップに行くのに、夜明け前に起きるんですからね。今回は前回みたいに五日間も続かなければいいのだけれど・・・・・」
「ワーッ――今度もそうなるといいな!」ハリーが熱くなった。
「あー、僕は逆だ」パーシーがしかつらめしく言った。
「五日間もオフィスを空けたら、未処理の書類の山がどんなになっているかと思うと
ゾッとするね」
「そうとも。まただれかがドラゴンの糞を忍び込ませるかもしれないし。な、パース?」フレッドが言った。
「あれは、ノルウェーからの肥料のサンプルだった!」
パーシーが顔を真っ赤にして言った。
「僕への
個人的なものじゃなかったんだ!」
「個人的だったとも」
フレッドが、テーブルを離れながら囁いた。
「俺たちが送ったのさ」
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