Marriageable girl 年ごろの娘
「行ってきます!」
はそう言って暖炉の炎に包まれて家から漏れ鍋へと移動した。セドリックに会えるのを心待ちにしながら――。
今朝、シリウスの家は大騒ぎだった。朝初めて、今日がセドリックに会いに行くことを知ったジェームズとハリー。ジェームズはひねくれてしまったし、ハリーはやはり怒っているようだった。自分たちだけ知らなかった、という事実が彼らにはショックだったのだろう。一方、リリーとはなんだか楽しげで、が朝食を食べている間、の髪型争論をしていた。結局、夏休みということで、は少し涼しげなポニーテールで妥協した。そして、シリウスとルーピンはというと、シリウスはジェームズをなだめるのに忙しかったし、ルーピンはとリリーに、の髪型や服装などの感想を聞かれて、微笑みながら必ず「は何しても可愛いよ」と答えていた。
正直に言って、には、たかがセドリックに会うだけで、こんなにも家の中が大騒ぎになるのには納得いかなかった。どこから間違ったのだろうと頭を悩ますばかりで、漏れ鍋に着いたときはちょっとホッとした。
!」
漏れ鍋に着いて、周りをキョロキョロとしていると、いきなり目の前にセドリックが現れた。
「わ、びっくりした」が目を丸くすると、セドリックはクスクス笑った。
「ごめんね。いつも髪の毛を下ろしてるから、ちょっと誰だかわからなかったんだ。可愛いよ」
さりげない一言に、は顔が赤くなるのを感じた。
「あの、ブレスレットありがとう。とっても可愛いわ」
が赤くなりながらそう言うと、セドリックはニッコリ笑って、「気に入ってもらえてよかった」と言った。
ダイアゴン横丁はまだ夏休みの始めだと言うのに少し混んでいた。しかし、二人は別に気にする様子もなく、店を覗いたり、お茶を飲んだり、しゃべったり、傍目から見ればまるでカップルのようだった。セドリックはとても優しく、を気遣ってくれたし、時には冗談を言ってを笑わせたりもした。
「次はどこに行こうか」
「セドリックの好きなところでいいわ」
そんな楽しい時間もあっという間で、は夢心地のまま家に帰った。が、まだジェームズたちは不機嫌だろうと思って彼らに再び会うと、案の定不機嫌だった。それならば、とは今日買ってきたお土産をジェームズとハリーに差し出した。
「今日は黙っててごめんなさい」
のお土産を受け取った二人はなんだか機嫌が治ったように見えた。
「ファイアボルトのストラップだ――どこで売ってたの?」ハリーがにこにことストラップをシリウスたちに見せびらかしながら聞いた。
「うん、可愛いでしょ?」
ハリーはファイアボルトが可愛いとは思わなかったが、今のはとても可愛いと思った。
「高級クィディッチ用具店にあったの。今日のお詫びに、と思って」
「ありがとう、――それで、父さんは何をもらったの?」
ハリーがジェームズを振り返ると、ジェームズはにこにこ顔でスニッチのキーホルダーを見せた。
「ありがとう、
ジェームズはの頭を撫でるとご機嫌良く、寝室に上がって行ってしまった。きっと、キーホルダーを置いてくるのだろう。
「僕も置いてこようっと」ハリーもジェームズの後を追いかけて、階段を上って行った。
「ずいぶん今日はジェームズに優しいじゃない?」リリーがの頭を小突いた。
「いつも優しいもん」はリリーに膨れっ面を向けながらそう言った。
「寝言は寝てから言うものよ」
すかさずがそう突っ込むと、シリウスが吹き出した。
「ほらママ、笑われた!」
あなたが、笑われたのよ!」
睨み合う二人の間に、ルーピンの微笑みが入ってきて、終止符を打った。
「そういえば、リーマスにもお土産あるの!」
は嬉しそうにそう言うと、高級板チョコレートを取り出した。
「いいのかい、もらっても?」
「うん!それで、出来たら早くしまってほしいな、なんて」
がチラリと見た先にはチョコレートに嫌そうな視線を送るシリウスがいた。
「いいじゃない、チョコレートくらい」リリーが呆れたようにシリウスに言うと、シリウスは引き攣った顔で答えた。
「俺は嫌いだ」
はいはい、と誰もシリウスの主張を真面目に受け止めなかった。
「それで?」が興味津々に言った。
「デートは楽しかった?」
「デートじゃないってば――」が苦笑した。「楽しかったよ」
「あーあ、僕のもとうとうこの手を離れるのか・・・・・」
「お前のじゃないだろ!」
いつの間にか寝室から下りてきて、悲しげに呟くジェームズにシリウスが容赦なく突っ込んだ。
「シリウスのものは僕のもの。僕のものは僕のもの」
その発言にはその場にいたみんなが呆れた。
「なら私、パパの子やめて、リーマスとママの子になるわ」が我に返ってそう言うと、シリウスやジェームズが慌てたが、もリリーもなんだか賛成のような顔をしている。
「いっそのこと、そうしたら?リーマスが父親の方がの教育には絶対いいわよ」リリーがルーピンに笑いかけた。
「そうそう、リーマスは頼りになるしね」も便乗してリーマスに笑いかけると、危機を感じたのか、ジェームズが重々しく言った。
「シリウス」
ポンとシリウスの肩に手を乗せて、ジェームズはシリウスを見た。
「頑張れよ」
「原因はお前だろうが!」
シリウスとジェームズがまたいつも通りじゃれあいを始めた。はそれを見ながらなんだか平和だなあ、と微笑んだ。自分には本当の父親含めて三人の父親がいる。なんて素敵なことなのだろうか。
「楽しいね」
がルーピンにそう言うと、ルーピンは微笑みながら頷いた。
「楽しいね」
「さてと」が少し大きめの声を出すと、シリウスとジェームズのじゃれあいはピタリと止まった。
「夕食にしましょう」
「ママ、手伝うわ!」
が自ら名乗り出ると、が物珍しそうにを見て、「どういう風の吹き回し?」と半ば、興味深げに問い掛けた。
花嫁修行
がニッコリとそう言うと、ジェームズがガバッといきなり抱き着いてきた。
が行ってしまうのは淋しいよ!」
ジェームズが本当に哀れな声を出すので、は思わず笑ってしまった。
「大丈夫だよ、ジェームズ。冗談」
がそう言ってもジェームズはなかなか信用しようとはしなかった。結局、が自分の手元を離れるのは当分先だと納得したのは夕食が終わってからだった。

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超親バカなジェームズ。