Leave hospital 退院
金曜日、ちょうどが怪我を負ってから一週間と一日後に退院を許された。金曜日の授業は魔法薬学に変身術、呪文学で、一週間分のブランクがあり、は調子を取り戻せなかったばかりか、簡単なことさえも出来なくなっていた。は初めて特別に宿題を出されてしまった。しかし、幸いにもネビルよりはまだマシだ。それだけがせめてもの慰めとなった。
は退院して、どこもかしこも警戒が厳しくなっているのに気がついた。グリフィンドールの談話室前には無愛想なトロールが数人いたし、「太った婦人」が戻ってきたのは良いが、神経を尖らせていた。そして、入口となるどんなドアにも、必ずシリウス・ブラックの写真が貼ってあり、小さな隙間には真新しい板が張り付けられていた。
また、ハーマイオニーに聞いた話では、ネビルは今後いっさいホグズミードに行くことを禁じられているらしかった。スネイプが言っていた「合言葉をメモした紙」はネビルの所有物で、ネビルはそれを無くし、シリウスが手に入れたらしい。そのため、ネビルに罰が与えられているらしかった。ホグズミードに行けない以外にも、罰はあり、ネビルには合言葉を教えてはいけないこととなっていた。なので、毎晩ネビルは談話室の外で待っているらしかった。
そして、一番喜んだのは、次の日がホグズミード行きの日だということだ。
はホグズミードに行くの?」が談話室の片隅で、今日の授業の復習をしているとハリーとロンが話しかけてきた。
「いいえ。まだ本調子じゃないから出掛けられないの」
本当は嘘だった。は最初っからシリウスに会いに行くつもりだったのだ。しかし、そんなことは口がさけても二人に言えない。
「ハリーもロンも行くの?」
「ああ!」ハリーがワクワクした表情で答えた。
「ハーマイオニーも一緒でしょうね?」はハリーとの約束を確かめた――きっと、一緒には行かないのだろう。すると、の思った通り、ハリーの顔が曇った。今日の授業からして、三人は一言も交わしていないのだから一緒に行くはずがない。おまけにハーマイオニーはシリウス・ブラックがハリーをホグズミードのど真ん中で殺すのだと考えている。ハリーのホグズミード行きを反対するのも当然だろう。しかし、ハリーとロンはそれを深くは考えていなかった。
、君は止めたりするなよ?」ロンが探るように言った。もちろんは止めたりなどしない。シリウスが安全だと知っているから。
「止めたりしないわ。ただ、ハーマイオニーと一緒に行ってほしいだけよ」は嫌味っぽくそう言って、ハーマイオニーの隣に席を移動した。明日は勉強しない分、今片付けてしまわなければならない。ハリーとロンと話してなどいられなかった。
次の日、はホグズミード行きの生徒がいなくなってから談話室を出た。もちろん、持っているバッグにはクルックシャンクスが入っていた。城の中はガランとしていて、襲われたあの日を思い出す。なんだか怖くて、は「暴れ柳」まで急いだ。
クリスマス休暇と同じように、薄暗いトンネルを通り抜け、部屋につくとジェームズが抱き着いてきた。
、無事なんだね?」なんだか心配そうな声だ。
「一体どうしたの?」はジェームズを見上げた。
「シリウスが生徒たちが噂しているのを聞いたんだ。君が何者かに襲われたって」
「パパが?」
また犬の姿で散歩したのか、と呆れながらシリウスを見ると、シリウスはいつになく怒った顔をしている。
「犯人は見たのかい?」ジェームズはの杖を預かり、椅子を出して座るように促した。
「いいえ、いきなりだったし・・・・・。でも、パパじゃないとは言っておいたわ。ダンブルドアは信じてくれたと――」
「あいつに決まってる!」シリウスがいきなり怒鳴った。は驚いて、ジェームズのローブを掴んだ。
「シリウス!が怖がってる」ジェームズがそう言うと、シリウスはまた怖い顔をして押し黙った。
「――話してはくれないの?」が恐る恐るそう呟くと、ジェームズが彼女を抱き寄せた。
「ごめんね、
またか、とは内心ため息をついた。
「ううん」そう返事するだけで精一杯だった。シリウスやジェームズに怒ってはいけないのだろうが、怒らずにはいられなかった。
「あのさ、別に何があったのか話さなくてもいいけどさ――」はじっとシリウスを見つめた。
「パパがグリフィンドールの男子寮に乗り込んだのは、ハリーとか、他の子たちを襲うためじゃないよね?」
しばらく痛い沈黙が流れた。は聞くんじゃなかった、と後悔したが、今更遅かった。
「違う」シリウスが呟いた。
「違う。私はアイツに――」
シリウス!」ジェームズがさえぎった。
「シリウス、やめるんだ。まだ話すときじゃないだろう!」
ジェームズは気付かないうちに、をキツク抱きしめていて、はジェームズの腕の中で苦しくて暴れた。
「――あぁ、ごめん、」ジェームズがいつもの調子で言った。
「窒息しちゃうわ」もジェームズに合わせ、いつもの調子で言った。
「そういえば、リリーが学校に来たの」
はジェームズから開放されると、椅子に座った。
「もう退院したって」
シリウスとジェームズの顔が嬉しそうに輝いた。
「それに、リリーが言うにはママも今学期が終わるころには退院出来るって」
「それはいい!」ジェームズが舞い上がった。本当に嬉しそうだ。シリウスは嬉しすぎて、口がきけなくなったようだった。
「じゃあ、私そろそろ帰るね」
しばらく二人の喜んだ姿を見て、が立ち上がった。リリーもも、とっても愛されてるな、としみじみ感じた。

トンネルの暗がりに足を踏み出したにシリウスが声をかけた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
はなんて返事をしようか迷った後、にっこり笑ってそう言った。
城に戻り、はもう一つ、胸のつっかえを無くそうと決めた。ルーピンに会いに行く。そして、話してしまおう。
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シリウスとジェームズが元気そうで何よりです。