それからお昼前まで、たくさんの人達が見舞いに来てくれた。フレッドやジョージ、ジニーにアンジェリーナ、ケイティも来た。パーシーも五分だけだったが、見舞いに来てくれた。
そして、お昼過ぎ、ルーピンが少し厳しい顔でやってきた。は何か悪いことをしたのかと、身構えたが、ルーピンに怒る様子はない。
「」ルーピンが重々しく口をひらいた。
「君は誰かにいきなり襲われたと言ったね。つまりそれは君を襲った人間が杖を持っていた、ということになる。その理由がさっきやっとわかったんだ」
はルーピンが何故こんな話をするのか理解出来なかった。
「君が襲われた日の授業時に誤って怪我を追った生徒がいた。その生徒はもちろんそのまま医務室で手当てを受けたんだ。しかし、確かに医務室まで持ってきた杖が、手当てが終わってみるとなくなっていた――別にその生徒に不手際があったわけではないから、もちろん責めを負うことはない」
ルーピンは一息つくと、また話し始めた。
「そして昨日の晩、シリウス・ブラックの捜索のとき発見された。杖は人の手によって隠されていたんだ。私たちはまさかと思い、直前呪文を使った――案の定、君を襲った犯人が使った杖だったよ」
「私、リーマスが何を話したいのか、わからないわ」が戸惑ったようにそう言うと、ルーピンは苦笑いしながらを見た。
「私も君に何を言いたいのかわからないよ」
そのルーピンの表情から、はルーピンが疲れていることが読み取れた。
「君に会わせたい人がいるんだ――」ルーピンはそう言って病室のドアを振り返った。もつられてそちらを見る。
「リリー!」はびっくりして、思わず立ち上がろうとしてしまった。もちろん、立ち上がれるはずはなく、痛さに顔を歪め、はベッドに逆戻りした。ルーピンは静かに病室を立ち去った。
「、よかった。あなた、無事なのね」リリーは優しくを包み込んでくれた。とても温かい。
「リリーに会えて本当によかった。夏休みにはママにしか会わせてもらえなかったの」はあまりの嬉しさに、涙が出そうになった。
「、あなたをもう二度と見れないかと・・・・・もう大切な人は無くしたくないわ」
はそのリリーの言葉にずんと重くのしかかるものがあった。ジェームズは実は生きている。シリウスだって裏切ってはいない。もし、二人がグルではなかったら。話しても、到底信じてもらえないだろうが、こんなに沈み込んだリリーは見たくなかった。
「リリーは、パパが犯人だと思う?」
は唐突に聞いた。リリーは一瞬、驚いた顔をしたが、すぐに答えてくれた。
「えぇ。だって、確かに顔を見たんですもの。襲われたときに」はリリーの発言に沈み込んだ。誰もがシリウスが犯人だと思っている。
「ママも、そう思ってるのかな」が呟いた。
「いいえ」は耳を疑った。
「いいえ、はシリウスじゃないって主張しているわ。だけど、彼女はとっても気が動転してるの。仕方ないのよ――」
「パパは無罪よ、リリー!」はこんなにも胸を張って、シリウスが無罪だと言えたのは初めてだった。はシリウスが犯人じゃないと思っている。ならば、絶対にシリウスは犯人じゃない。は気が動転しているわけじゃないのだ。今まで完全にシリウスが無罪だと言えなかったは、はやっぱりすごいと思った。彼女は完璧にシリウスが無罪だと信じているのだ。
「、一体何を言っているの?」リリーはが変だ、とでも言いたげだ。
「だって、リリー!」
「母さん!」
しかし、の抗議の声はリリーを呼ぶ、誰かの声で掻き消された。
「ああ、ハリー!あなたも無事なのね」リリーは走り寄ってきたハリーを抱きしめた。
「母さん、どうしてここに?」ハリーが半分嬉しそうに、半分不思議そうに聞いた。確かに、も何故リリーがここにいるのかまだ聞いていない。
「退院したのよ、ハリー」
「は?」ハリーがチラリとを見た。
「はまだ入院しているわ。だけど、随分良くなった。今学期が終わるころには退院できるみたいなの。今年は四人で暮らせるわ」
「本当?よかった!」素直に喜んだのはハリーだけだった。はシリウスともジェームズとも一緒に住みたい。
「本当にあなたたちが無事でよかった」リリーが歓喜極まった声で言った。
「いい?あと数カ月しかないけど、危険なことはしないで。これ以上悲惨な知らせは聞きたくないわ」
リリーはもう一度ハリーとをそれぞれ抱きしめると、病室を出て行った。
「」
「なに?」
リリーが出て行ってから、二人の間になんだか気まずそうな沈黙が漂った。最初に口を開いたのはハリーだった。
「怪我は大丈夫?」
「ええ」
しかし、会話はすぐに終わってしまった。原因は明らかにだった。話を発展させようとはせず、単調に返事をした。
「何か、怒ってる?」
ハリーにそう聞かれ、は困った。気に入らないことはいくつもある。ルーピンと彼が秘密にしていることについて早く話したいし、シリウスに何故乗り込んだのか聞きたいし、リリーがシリウスを犯人だと信じて疑わないのも気に入らない。しかし、ハリーに対して怒っているのは、もっと単純なことだった。
「ハーマイオニーのことよ」はしばらく考えてからそう言った。
「あなたとロンが口をきいてくれないって言ってたわ。ファイアボルトは返ってきたんでしょう?お願い、ハーマイオニーと話してあげて」
「ハーマイオニーは僕がロンの味方をするだけで怒るんだ」ハリーがちょっと拗ねたように言った。
「うん、でも、お願いよ、ハリー」
の訴えをやっとハリーはのんでくれた。
「わかったよ、やってみるよ。だけど、どうなるかは知らないからね」
「ああ、ハリー。ありがとう!」は心からお礼を言った。ハリーはちょっと顔を赤くすると、あわてて話をそらした。
「そういえば、すごい見舞い品だね」
「ええ、本当に」
ハリーはの見舞い品を物色するうちに、とても豪華そうな品を見つけた。それは紛れも無く、さっきが気にしていた見舞い品だった。
「ドラコ・マルフォイ」ハリーが一緒についていたカードを読み上げた。
「どうしてあいつから君に?」ハリーが聞いた。
「知らないわ。彼に聞いてみて?」
は肩をすくめ、二人して笑った。ハリーはそれからしばらくいて、日没前に帰った。
たくさんの見舞い客、嬉しいですね^^