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Another christmas もう一つのX'mas
「クルックシャンクス、おいで」
が談話室につくと、ハリーもロンも箒に魅入っていた。はクスリと笑って、寝室に閉じ込められていたクルックシャンクスをバッグにしまい込んだ。
「クルックシャンクス、暴れないで。あなたを勝手に連れ出したのがわかったら、私、尋問されちゃう!」がクルックシャンクスにそう訴えかけると、クルックシャンクスは理解してくれたのか大人しくなった。再び談話室を横切って外に出ようとしても、ハリーもロンも箒に夢中で「どこに行くの?」とは聞かなかった。これはにとってとても好都合だった。いちいち理由を言っていたらどこでボロがでるかわからない。
は急いで、しかし誰にも見つからないように「暴れ柳」までたどり着いた。キョロキョロと辺りを見回し、誰もいないのを確認すると、はクルックシャンクスを外に出してやった。
「クルックシャンクス、お願い」がそう頼むか、頼まないうちにクルックシャンクスが柳の動きをピタリと止めた。「暴れ柳」のコブを押したのだろう。
「パパ!ジェームズ!」
は杖明かりを頼りにズンズン先へ進み、相変わらず雑然とした埃っぽい部屋に出た。
「!」
「キャー!」
は突然抱き着いてきたジェームズに驚いて叫び声を上げ、尻餅をついた。
「ジェームズ!」シリウスの声がして、尻餅をついた後も抱き着いたままのジェームズが離れて行った。まだ心臓はドキドキ言っている。
「大丈夫か?」シリウスが心配そうな顔をしながらに手を差し出した。
「うん・・・・・びっくりしただけ」はちょっと曖昧に笑ってみせた。どうも朝から気に入らないことばかりで、心から笑う気になれない。
「――無理して笑うな」シリウスは素っ気なくそう言ってが立ったのを確認すると、ついてこい、と言った。
シリウスの後について薄暗いホールに出て、崩れ落ちそうな階段を上がった。そして二つ目のドアを開けて中に入ると、埃っぽいカーテンのかかった壮大な四本柱の天蓋ベッドがあった。
「ここで寝てるの?」が唖然として二人を見た。
「まあね。ないよりはマシだ」ジェームズが言った。そして、ジェームズはをベッドに座らせ、自分たちはの杖を借りて、椅子を二つ出した。
「あのね、今日はクリスマスでしょ?私からプレゼントがあるの」はバッグからチキンを取り出した。シリウスとジェームズが輝くような笑顔を、いやチキンに向けた。
「・・・・・食べていいのか?」シリウスが恐る恐る聞いた。はクスリと笑ってチキンを差し出した。
しばらくはシリウスもジェームズも夢中になって食べた。本当にまともな食事を取っていないのだとは痛感した。
「それで、学校はどうだ?」
チキンを食べ終わって満足したのかシリウスが聞いた。
「そういえば、よくも乗り込んでくれたわね?」は思い出したと、シリウスをにらみつけた。
「おかげで私もハリーもいろんな先生から目を付けられてるのよ。パパたちに会いに行こうとしても行けないじゃない――」
「ほら、シリウス。言っただろう?」怒り心頭のをなだめながらジェームズがシリウスを見た。
「・・・・・悪かったな」シリウスがボソリと呟いた。珍しく素直に謝るシリウスに、は何か理由があったのだと感じ、怒りは一気に萎んだ。しかし、やはり話してはくれないようだ。
「――パパたち、ハリーに箒をプレゼントしたでしょう?」は聞きたかったことを思い出した。
「ああ、うん。シリウスがクイディッチの試合を見に行ったとき、たまたまハリーが箒から落ちた現場を目撃してね。クリスマスプレゼントには最適だと思ったんだ」ジェームズは何も気にする様子もなくそう言った。
「ハリーの箒、きっと取り上げられてるわ、今頃。パパがハリーを殺すために贈ったって疑われてるもの」がため息まじりにそう言うとシリウスが心配ない、との頭を撫でた。
「取り上げられたってあの箒には何も細工していない。無害だとわかればすぐにハリーの手元に戻るさ」
それを聞いては安心した。ハリーが落ち込む姿はあまり見たくない。
「、それはそうと、君にもクリスマスプレゼントあるんだけど受け取って貰えるかい?」
は驚いてジェームズを見上げた。ハリーには仕方ない事情があったが、自分にはこんなシリウスやジェームズの状況でプレゼントを貰えるとは思っていなかった。
「そんなに驚くなよ」シリウスが笑った。
「ハリーだけにあげたりはしないさ。二人とも息子、娘同然だ」シリウスの言葉にジェームズが大きく頷いた。はその言葉に胸がいっぱいになり、顔を両手で覆った。
「ああ、。君を泣かせるために言ったんじゃないんだよ。ただ君には笑っていて欲しいんだ」ジェームズがの隣に腰掛けて、優しく背中を撫でてあげた。
「泣くなよ」シリウスも苦笑しながらの隣に腰掛けた。
「ごめんな」
シリウスはを抱き寄せて、ギュッと抱きしめた。とても久しぶりの行為で、シリウスももどこかぎこちなかったが、それでも気持ちは伝わった。
「さてと」
が泣き止むと、改めてジェームズがの前に可愛くラッピングされた箱を差し出した。
「気を取り直して、さあどうぞ」
ジェームズはにこにこと、シリウスは温かくの行為を見守った。は丁寧に包みをはがし、箱の蓋を開けた。
「わあ・・・・・」
中にはキラキラと輝く銀のティアラが入っていた。
「素敵」
はいつもの愛らしい、かわいらしい笑顔を浮かべた。
「ジェームズ、ありがとう」は隣に座っているジェームズに自ら抱き着いた。
「パパ、ありがとう」そして、逆サイドに腰掛けるシリウスに抱き着くと、頬っぺたに軽くキスをした。シリウスはまさかそこまで喜んでくれるとは思っていなかったのか、驚いてを見た。シリウスの顔はほのかに赤い。
「、僕にも!」ジェームズが自己主張するとはクスクス笑って、ジェームズの頬っぺたにキスした。しかし、ジェームズがそれだけで満足するはずがない。ジェームズは素早くを自分の膝に乗せると、ギュッと抱きしめた。
「ごめんね、」
ジェームズがいつものような茶化した雰囲気ではなくて、とても疲れたような、沈んだ声を出すのでは突き放すことが出来なかった。
「大丈夫。私、ジェームズのこと大好きだよ」
ジェームズはしばらく少し微笑みを浮かべを見ていたが、シリウスを振り返り、口を開いた。
「シリウス、もうそろそろ時間かい?」
「だろうな。セクハラジジイ」シリウスは不機嫌そうにそう言った。ジェームズにを取られたのが、そうとう悔しかったらしい。
「やだなぁ。シリウス、そんなに怒んないで。僕との仲じゃない」ジェームズがいつもの悪戯っぽい表情をシリウスに向けると、シリウスは思いっきりジェームズの足を踏み付け、をジェームズの膝から立たせた。
「『暴れ柳』の下まで送って行く」
ジェームズが恨めしげにシリウスを見たが、シリウスはジェームズをまるごと無視して、をエスコートしながら歩き始めた。いつの間にかクルックシャンクスはのバッグに自ら入り込んでいた。
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シリウス、ジェームズとの会話は大好きです。笑