Quarrel ケンカ
「ああ、やっぱり」
が予想していた通り、談話室にはピリピリした雰囲気が漂っていた。に「お帰り」と言うと、ハリーとロンも、ハーマイオニーもお互いにそれ以上口を開こうとはしなかった。
はため息をつくと寝室に戻って行った。勉強する気にもなれなければ、三人と話す気も起きない。はバッグからクルックシャンクスを逃がし、シリウスとジェームズからもらったティアラを出した。キラキラと光を反射して美しい。ちょっとだけ付けて、談話室にいる三人に「どう?」と聞きたかったが、誰からのプレゼントか聞かれそうなので、は思い留まった。
次の日、が起きるとハーマイオニーの姿はなく、仲直りしたのかなと淡い期待を持ちながら、は談話室に降りていった。しかし、そこにはハーマイオニーの姿はなく、ハリーとロンに彼女がどこへ行ったのかと聞くと、興味なさ気に「図書館にでも行ったんじゃないか」と教えてくれた。やはり、一日か、二日で仲直りできるほど三人とも大人ではないようだった。はハリーとロンに「ありがとう」と告げると、はハーマイオニーのところへ急いで向かった。
「ハーマイオニー」
はポンとハーマイオニーの方を叩いた。
「朝から勉強なんて止めましょうよ」がげっそりとした表情でそういうと、ハーマイオニーはクスクス笑って図書館から出ることに賛成してくれた。
「マクゴナガル先生がハリーの箒を取り上げたの?」
はハーマイオニーと一緒に校庭を散歩しながら言った。
「ええ。マクゴナガル先生もやはりあんな高い箒をカードも無しに贈るのはシリウス・ブラックだろうって」
「あの箒、きっと呪いも何もかかってないと思うわ」が昨日のシリウスの言葉を思い出しながら、静かに言った。
「あなたはそう思うでしょうね」ハーマイオニーはを見た。はハーマイオニーから目をそらし、ホグワーツ城を見上げた。このままハーマイオニーと目を合わせていたら、シリウス・ブラックと密会しているのがバレてしまいそうだった。
「ハーマイオニーは大切な人が何か隠し事をしていて、たまたまその隠し事の内容を知ってしまったとしたらどうする?」はふとハーマイオニーに聞いてみたくなった。
ハーマイオニーはしばらく考えた後、「黙ってるわ」と答えた。なんだか、実際に何かを黙っているようだ。しかし、迷いはないように聞こえる。
「そう、ありがとう」が答えた。
ハーマイオニーが黙っている、と答えても、自身の中でこの後どうするか、という結論は出ていた。はもう決心していた。クリスマス休暇が終わったら、ルーピンに話しにいくんだ。心当たりはいくつもある。授業でのまね妖怪の変身、スネイプがわざわざ授業で狼人間を取り上げ、ルーピンを憎しみのこもった目でいつも見ること、スネイプから渡される薬、そしてなによりもルーピンに会えないとき、必ず月は綺麗に輝いていること。の頭の中の仮定は、すでに確信に変わっていた。
?」
突然、ハーマイオニーに名前を呼ばれ、ホグワーツ城からハーマイオニーに視線を移した。ハーマイオニーが心配そうな顔でを見ている。
「難しい顔してるわ。どうしたの?」
「・・・・・なんでもない」はハーマイオニーに大丈夫、と笑ってみせた。ハーマイオニーはそれでもまだ心配そうにを見ている。
「ハグリッドに会いに行こう」がそう言うと、ハーマイオニーは二つ返事で了解してくれた。
二人が「禁じられた森」の境にあるハグリッドの小屋に向かうと、向こうから黒い犬が駆けてくる。
、危ないわ!」ハーマイオニーが逃げる様子のないに、真っ青になって叫んだ。
「大丈夫よ、ハーマイオニー」はハーマイオニーを落ち着かせ、駆けてきた黒い犬を抱きしめた。犬はちぎれんばかりに尻尾を振っている。
「この犬、良い子なの」が犬の顎の下を撫でると、犬は心地良さそうに目を閉じた。
「ハーマイオニーも撫でてみたら?」
しかし、いくらがそう言っても、ハーマイオニーは警戒して近付こうとはしなかった。はクスリと笑い、ちょっと残念だったが、黒い犬に別れを告げた。すると、犬も悲しそうな鳴き声を上げる。しかし、はとっくに黒い犬がシリウスの変身だと見抜いていたので、犬の頭を優しく撫で、ハーマイオニーと一緒にハグリッドの小屋に向かった。犬は名残おしそうにを見た後、来た道を引き返して行った。
ハグリッドの小屋についた二人は小屋をノックしたが、留守らしく、二人は仕方なく図書館に戻って、バックビークの裁判に役に立ちそうな本を探すことにした。
次の日もハーマイオニーは図書館に行った。はハーマイオニーに付き合わずに今日はハリーとロンと話して過ごすことにした。にしてみれば、ハリーもロンもハーマイオニーも結局はシリウスが無罪だと信じてくれないので、誰と一緒にいようが、変わらなかった。
年が明けて、間もなくみんなが学校に戻ってきた。震えるような一月の朝、四人はハグリッドの授業に向かった。相変わらず、ハーマイオニーとハリー、ロンはお互いに口をきかない。
年明け最初の授業にハグリッドは火トカゲを大きな焚火の中に入れ、生徒を楽しませた。
「占い学」の後は「闇の魔術に対する防衛術」だった。ルーピンはやはり病気のように思えたが、には原因が分かっていた。今日にでも話そうと思い、授業後にルーピンに話し掛けようとした。しかし、先客がいる。
「ルーピン先生、あの、クリスマス前に約束してくださった吸魂鬼祓いの訓練は――」
「ああ、そうだったね」
ハリーとルーピンが話していた。ルーピンはハリーの後ろにがいるのに気付き、にも話し掛けた。
「木曜の夜、八時からではどうかな?『魔法史』の教室なら広さも十分ある・・・・・、君も来るんだろう?」
はい、先生とは答え、結局ルーピンに話しがしたいと告げる機会を逃してしまった。
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久しぶりのルーピン先生登場。