Outdoor sleep 野外睡眠
ルーピンはが大分落ち着いたのを確認すると、大広間に行こうと言った。
「まだブラックが校内にいるかもしれない」
は大人しくルーピンの後に従った。大広間についても、周りはシリウス・ブラックの侵入の話で持ちきりで、がルーピンと一緒に入ってきても気にする者は一人もいなかった。はちょっと名残惜しそうにルーピンにおやすみを言うと、ハリーやロン、ハーマイオニーたちの中に合流した。
「大丈夫?
ハーマイオニーが心配そうにを見た。
「うん、大丈夫」は笑ってみせた。
いつの間にか、大広間には八ッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン寮生も集まっていた。どの顔も当惑ぎみだ。
「先生たち全員で、城の中を隈なく捜索せねばならん」
マクゴナガル先生とフリットウィック先生が、大広間の全ての戸を閉め切っている間に、ダンブルドアがそう告げた。
「ということは、気の毒じゃが、皆、今夜はここに泊まることになろうの。みんなの安全のためじゃ。監督生は大広間の入口の見張りに立ってもらおう。首席の二人に、ここの指揮を任せようぞ。何か不審なことがあれば、ただちにわしに知らせるように」
ダンブルドアは、厳めしく踏ん反り返ったパーシーに最後にそう付け加えた。
「ゴーストをわしへの伝令に使うがよい」
ダンブルドアは大広間から出て行こうとしたが、ふと立ち止まった。
「おお、そうじゃ。必要なものがあったのう・・・・・」
ハラリと杖を振ると、長いテーブルが全部大広間の片隅に飛んでいき、きちんと壁を背にして並んだ。もう一振りすると、何百個ものふかふかした紫色の寝袋が現れて、床いっぱいにしきつめれた。
「ぐっすりおやすみ」大広間を出て行きながら、ダンブルドア校長が声をかけた。
たちまち、大広間がガヤガヤうるさくなった。グリフィンドール生がほかの寮生に事件の話を始めた。
「みんな寝袋に入りなさい!」パーシーが大声で言った。
「さぁ、さぁ、おしゃべりはやめたまえ!消灯まであと十分!」
「行こうぜ」ロンが三人に呼びかけ、三人はそれぞれ寝袋をつかんで隅の方に引きずっていった。
「ねぇ、ブラックはまだ城の中だと思う?」ハーマイオニーが心配そうに囁いた。
「ダンブルドアは明らかにそう思ってるみたいだな」とロン。
「ブラックが今夜を選んでやってきたのはラッキーだったと思うわ」
四人とも服を着たままで寝袋にもぐりこみ、頬杖をつきながら話を続けた。
「だって、今夜だけはみんな寮塔にいなかったんですもの・・・・・」
「きっと逃亡中で時間の感覚がなくなったんだと思うな」ロンが言った。
「今日がハロウィーンだって気づかなかったんだよ。じゃなきゃ、この広間を襲撃してたぜ」
ハーマイオニーが身震いした。周りでも、みんなが同じことを話し合っていた。
「いったいどうやって入り込んだんだろう?」
「『姿現わし術』を心得てたんだと思うな」ちょっと離れたところにいたレイブンクロー生が言った。「ほら、どこからともなく現れるアレさ」
「変装してたんだ、きっと」ハッフルパフの五年生が言った。
「飛んできたのかもしれないぞ」ディーンが言った。
「まったく。『ホグワーツの歴史』を読もうと思ったことがあるのは私一人だけだっていうの?」
「たぶんそうだろ」とロンが言った。「どうしてそんなこと聞くんだ?」
「それはね、この城を護っているのは城壁だけじゃないってことなの。こっそり入り込めないように、ありとあらゆる呪文がかけられているのよ。ここでは『姿現わし』はできないわ。それに、吸魂鬼の裏をかくような変装があったら拝見したいものだわ。校庭の入口は一つ残らず吸魂鬼が見張ってる。空を飛んできたって見つかったはずだわ。その上、秘密の抜け道はフィルチが全部しってるから、そこも吸魂鬼が見逃してはいないはず・・・・・」
「灯りを消すぞ!」パーシーの怒鳴り声が聞こえた。「全員寝袋に入って、おしゃべりはやめ!」
蝋燭の灯りが一気に消えた。残された光は、フワフワ漂いながら監督生たちと深刻な話をしている銀色のゴーストと、城の外の空と同じように星がまたたく魔法の天井の光だけだった。
一時間ごとに先生が一人ずつ入ってきて、何事もないかどうか確かめた。が様子を見ているかぎりでは確かに学校中の先生方がシリウスの捜索に関わっているらしい。先ほど、ルーピンが回ってきて、パーシーに異変はないかと聞いていた。やっとみんなが寝静まった朝の三時ごろ、ダンブルドア校長が入ってきた。が見ているとダンブルドアはパーシーを探しているようだ。
「先生、何か手がかりは?」パーシーが低い声で尋ねた。
「いや。ここは大丈夫かの?」
「異常なしです。先生」
「よろしい。何もいますぐ全員を移動させることはあるまい。グリフィンドールの門番には臨時の者を見つけておいた。明日になったら皆を寮に移動させるがよい」
「それで、『太った婦人』は?」
「三階のアーガイルシャーの地図の絵に隠れておる。合言葉を言わないブラックを通すのを、拒んだらしいのう。それでブラックが襲った。婦人はまだ非常に動転しておるが、落ち着いてきたらフィルチに言って婦人を修復させようぞ」
シリウスはこの学校の卒業生だ。合言葉がなければ扉が開かないことくらい承知しているはず。それほどまでに彼を急かす理由があるのか。は昼間会ったときの懐かしい彼の顔を心に描いた。
そんなことを考えていると、大広間の戸が開く音が聞こえて、別の足音が聞こえた。
「校長ですか?」スネイプだ。
「四階は隈なく捜しました。ヤツはおりません。さらにフィルチが地下牢を捜しましたが、そこにも何もなしです」
「天文台の塔はどうかね?トレローニー先生の部屋は?ふくろう小屋は?」
「すべて捜しましたが・・・・・」
「セブルス、ご苦労じゃった。わしもブラックがいつまでもグズグズ残っているとは思っておらなかった」
「校長、ヤツがどうやって入ったか、何か思い当たることがおありですか?」スネイプが聞いた。
はすでにシリウスとジェームズが校内に忍び込めるルートにいることを知っていた。しかし、彼らが無罪だと信じるにはダンブルドアや他の先生に、彼らの居場所を伝える義務感はなかった。
「セブルス、いろいろとあるが、どれもこれも皆ありえないことでな」
はチラリとスネイプの表情を盗み見た。どこか怒ったような顔をしている。
「校長、先日の我々の会話を覚えておいででしょうかな。たしか――あー――一学期の始まったときの?」スネイプはほとんど唇を動かさずに話していた。まるでパーシーを会話から閉め出そうとしているかのようだった。
「いかにも」ダンブルドアが答えた。
「どうも――内部の者の手引きなしには、ブラックが本校に入るのは――ほとんど不可能かと。我輩は、しかと忠告申し上げました。校長が任命を――」
は一瞬、スネイプが自分のことを言っているのかと思った。確かに、シリウスの無罪を主張する自分がシリウスを城内へ導くかもしれない、と思われても仕方のないことなのだろうと思った。
「この城の内部の者がブラックの手引きをしたとは、わしは考えておらん」ダンブルドアの言い方には、この件は打ち切りと、スネイプに二の句を継がせないきっぱりとした調子があった。はダンブルドアの言葉に少しホッとした。ダンブルドアに信用されているなら、もう大丈夫。
「わしは吸魂鬼たちに会いにいかねばならん。捜索が終わったら知らせると言ってあるのでな」とダンブルドアが言った。
「先生、吸魂鬼は手伝おうとは言わなかったのですか?」パーシーが聞いた。
「おお、言ったとも」ダンブルドアの声は冷ややかだった。
「わしが校長職にあるかぎり、吸魂鬼にはこの城の敷居は跨がせん」
パーシーは少し恥じ入った様子だった。ダンブルドアは足早にそっと大広間を出て行った。スネイプはその場にたたずみ、憤懣やる方ない表情で、校長を見送っていたが、やがて自分も部屋を出て行った。
セブルスが出て行ったあとハリー、ロン、ハーマイオニーを見ると、三人と目があった。
「いったい何のことだろう」ロンが呟いた。
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名前変更少なくてスミマセン・・・・・(蹴