During the party 宴の間に
「ほーら。持てるだけ持ってきたんだ」ロンが言った。
鮮やかな色とりどりのお菓子が、ハリーとの膝元に降り注いだ。黄昏時、ロンとハーマイオニーは談話室に着いたばかりで、寒風に頬を染め、人生最高の楽しいときを過ごしてきたかのような顔をしていた。
「ありがとう」ハリーは「黒胡椒キャンディ」の小さな箱を摘みあげながら言った。
「ホグズミードって、どんなとこだった?どこに行ったの?」
ハリーがそう聞くと、ロンもハーマイオニーも初めていったホグズミードの話で興奮し、 がその話に無関心でも気にも留めなかった。は談話室に帰ってきてから、ハリーにさえ、シリウスたちに会ったことは話していなかったし、ずっとそのことばかりを考えていた。しかし、運良くハリーもホグズミードに行けなかったことで沈んでいたので、二人が互いに口を閉ざしていても気にしなかった。
「あなたたちは何をしていたの?」ハーマイオニーが心配そうに聞いた。「宿題やった?」
「――何もしてないわ。一人で校内を散歩してた」はちょっと悩んでそう答えた。
「ハリーは何してたんだ?」ロンが怪訝そうに聞いた。二人一緒が定番なのに、今日に限っていないなんてなんだかおかしい、と思ったのだろう。
「ルーピンが部屋で紅茶を入れてくれた。それからスネイプが来て、ルーピンに魔法薬が入ったゴブレットを渡したんだすっごく怪しげで、湯気が立ってた。ルーピンになんで飲むのか聞いたら、体調が悪いとかって言ってた。砂糖を入れると効き目がなくなるとも言ってたよ。でも、もしかしたら微量の毒でも入ってるかもしれない。スネイプはルーピンを明らかに嫌ってる。チャンスがあれば殺しかねないよ。――それで、そのゴブレットの中身を全部飲んだんだ」
ハリーは洗いざらいを話した。いつの間にか、もその話に聞き耳をたてていた。
「ルーピンがそれ、飲んだ?」ロンは息を呑んだ。「マジで?」
ハーマイオニーが腕時計を見た。。
「そろそろ、下りた方がいいわ。宴会が後五分で始まっちゃう・・・・・」
四人は、肖像画の穴を通り、生徒たちの流れに入ったが、スネイプの話はまだ話していた。
「だけど、もしスネイプが――ねぇ――」
ハーマオオニーが声を落としてあたりを注意深く見回した。
「もし、スネイプがほんとにそのつもり――ルーピンに毒を盛るつもりだったら――ハリーの目の前ではやらないでしょうよ」
「ウン、たぶん」
ハリーが言ったときには、四人は玄関ホールに着き、そこを横切り、大広間に向かっていた。大広間には、何百ものくり抜きかぼちゃに蝋燭が点って、生きたこうもりがたくさん飛んでいた。燃えるようなオレンジ色の吹流しが、荒れ模様の空を模した天井の下で、何本も鮮やかなウミヘビのようにクネクネと泳いでいた。
食事もすばらしかった。はシリウスたちのこととルーピンのこと、二つも心配事を抱えているのにも関わらず、お腹は正直で全部の料理をおかわりした。
向かいのハリーは、チラチラと教職員テーブルを気にしているようだった。もときどきこっそりルーピンを見たが、別に変わった様子はなく、「呪文学」のチビのフリットウィック先生となにやら生き生きと話していた。一方、職員テーブルの別サイドではスネイプが同じようにルーピンをちらちら見ているのに気がついた。
宴の締めくくりに、ゴーストたちの余興があった。「ほとんど首なしニック」は、しくじった打ち首の場面はを再現し、大受けした。
「ポッター、吸魂鬼がよろしくってさ!」
みんなが大広間を出るとき、マルフォイが人込みの中から叫んできたが、ハリーは全く気にしていないようだった。
四人は、他のグリフィンドール生について塔へ向ったが、『太った婦人』の肖像画につながる廊下まで来ると、生徒がすし詰め状態にないるのに出くわした。
「何で、みんな入らないんだろ?」ロンが怪訝そうに言った。
背伸びして、前の方を見ようと爪先立ちになった。どうやら、肖像画が閉まったままらしい。
「通してくれ、さあ」パーシーの声だ。人波を掻き分けて、偉そうに肩で風を切って歩いてくる。
「何をもたもたしてるんだ?全員合言葉を忘れたわけじゃないだろう――ちょっと通してくれ。僕は首席だ――」
サーッと沈黙が流れた。前の方から始まり、冷気が廊下に沿って広がるようだった。パーシーが突然鋭く叫ぶ声が聞こえた。
「誰か、ダンブルドア先生を呼んで。急いで」ざわざわと頭が動き、後列の生徒は爪先立ちになった。
「どうしたの?」今来たばかりのジニーが訊いた。
次の瞬間、ダンブルドア先生がいつの間にか立っていた。肖像画の方までサッと歩いていった。生徒たちが押し合いへし合いして道を空けたので、もよく見ようと近寄った。
「ああ、なんてこと――」ハーマイオニーは、絶叫してハリーの腕を掴んだ。
「太った婦人」は肖像画から、消え去っていて、絵は滅多切りにされていて、キャンバスの切れ端が床に散らばっていた。絵は滅多切りにされて、キャンパスの切れ端が床に散らばっていた。絵のかなりの部分が完全に切り取られている。
ダンブルドアは無残な姿の肖像画を一目見るなり、暗い深刻な目で振り返った。マクゴナガル、ルーピン、スネイプの先生方が駆けつけてくるところだった。
「婦人を探さねばならん」ダンブルドアが言った。
「マクゴナガル先生。すぐにフィルチさんのところに行って、城中の絵の中を探すように言ってくださらんか」
「見つかったらお慰み!」甲高いしわがれた声がした。
ポルターガイストのピーブスだ。みんなの頭上をヒョコヒョコ漂いながら、いつものように、大惨事や心配事がうれしくてたまらない様子だ。
「ピーブズ、どういうことかね?」ダンブルドアは静かに聞いた。ピーブズはニヤニヤ笑をちょっと引っ込めた。さすがのピーブズもダンブルドアをからかう勇気はない。ねっとりとした作り声で話したが、いつもの甲高い声よりなお悪かった。
「校長閣下、恥ずかしかったのですよ。見られたくなかったのですよ。あの女はズタズタでしたよ。五階の風景画の中を走ってゆくのを見ました。木にぶつからないようにしながら走ってゆきました。酷く泣き叫びながらね」
うれしそうにそう言い、「おかわいそうに」と白々しくも言い添えた。
「婦人は誰がやったか話したかね?」ダンブルドアが静かに聞いた。
「ええ、確かに。校長閣下」大きな爆弾を両腕に抱きかかえているような言い種だ。
「そいつは婦人が入れてやらないんで酷く怒っていましたねえ。」
ピーブズはくるりと宙返りし、自分の足の間からダンブルドアに向かってニヤニヤした。
「あいつは、癇癪持ちだねえ。あのシリウス・ブラックは」
ピーブズの言葉に、は目の前が真っ暗になった。吐き気がする。
、顔が真っ青よ」ハーマイオニーが心配そうにそう言った。しかし、には返事をする余裕さえなかった。はるか遠くでダンブルドアが大広間に戻るように言っているのが聞こえた。何人もの生徒が四人のそばを通り抜け、終いには談話室の前は四人だけになっていた。ハリーとロンも心配そうにの傍らに立っている。
「君たち、どうしたんだい?」
「ルーピン先生・・・・・」そのとき、ルーピンが不審そうに四人に話しかけた。
「大広間に戻るように言われただろう?さあ、早く――、具合が悪いのかい?」
ルーピンは片手で口を押さえているに心配そうに聞いた。しかし、は返事をしない。
「校内には、まだ奴がいるかもしれない。君たちは先に行っていなさい」
ルーピンはそう言ってハリー、ロン、ハーマイオニーを追い立てた。ハーマイオニーはルーピンが一緒でも心配そうだったが、ついには折れて、ハリーとロンと一緒に大広間へ向かった。
、大丈夫かい?」ルーピンが気遣うようにの背中を撫でた。
「わたし――」が何かを言いかけるが、一瞬のうちに涙があふれ、嗚咽をもらした。ルーピンは何も言わずにを抱きしめた。彼女が辛いことはルーピンが一番良く知っていた。
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ホグワーツに忍び込んだシリウスの行方は・・・・・