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Smile and Laugh 微笑んで、笑って
ルーピンはの頭を優しく撫でて、の腰にそっと触れてを歩かせると、来た道を戻り始めた。
「、コンパートメントに戻るよ。多分、今の君には少し休養が必要だ」
ルーピンはに言った。は自分のせいでルーピンが引き返すことになり、罪悪感を感じた。
「ご、ごめん――なさい」がしゃくりあげながら言った。涙は止まりそうもない。
「気にすることはない。君のせいではないよ。この年で吸魂鬼に襲われかけて、無事な方が奇跡に近い――さあ、ついた」
ルーピンはににっこり笑ってみせると、コンパートメントのドアを開けた。
「!」
コンパートメントの中に足を踏み入れると、三人が驚いた顔でを迎入れた。
「おやおや、チョコレートに毒なんか入れてないよ」
一方、ルーピンは三人が手に持っているチョコレートを見てそう言った。そして、自分のバックから、何かを取りだし、パキッと音がした――チョコレートだった。
「、君も食べなさい。気分が良くなる」
ハーマイオニーの隣に座ったにルーピンはチョコレートを手渡した。
「その前に、泣き止まないといけないね」ルーピンが微笑み、が鼻をすすった。
「ごめんなさい」がまた言った。
すると、ルーピンがまた微笑んでの顔を覗きこんだ。
「私が君から聞きたい台詞は『ごめんなさい』ではなく『大丈夫』という台詞だ」
「大丈夫です」はおずおずと笑った。
「それじゃあ、私は運転手と話してこなければ。失礼」
ルーピンは静かにコンパートメントを出ていった。すると、そのとたん、ハリーたちがに質問を浴びせた。
「一体、何があったの?」
はいままでのことを三人に話して聞かせた。吸魂鬼のことを思い出すと、また泣きそうになったが、は一生懸命、涙を堪えた。しかし、ルーピンと会った経緯をそのまま話すわけにはいかず、コンパートメントに戻ろうとしたところ、吸魂鬼のことを思い出してしまい、泣きながら歩く自分をルーピンが見つけたことにした。
「でも、よかったわ。ハリーが倒れたから、あなたも倒れたんじゃないかって心配してたの」ハーマイオニーがの首に抱きついた。
「倒れた?大丈夫なの?」が聞き捨てならない、とばかりにハリーを見た。
「君の方こそ大丈夫なの?」ハリーが聞き返した。
「大丈夫だってば」は今度はちゃんと笑ってみせた。ハリーの心配そうな表情が、安心した表情に変わった。
しかし、はすぐにハリーから視線を外し、ボッと一点を見つめた。隣でハーマイオニーが安心したのか、ルーピンからもらったチョコレートを食べ始めた。
ルーピンが戻ってきた。入ってくるなり、の手に未だ握られているチョコレートを見て、ため息をついた。
「、思いつめても仕方ないだろう?食べなさい」
は促されてチョコレートを一口かじった。
「あと十分でホグワーツに着く。ハリー、大丈夫かい?」ルーピンが言った。
「はい」ハリーはバツが悪そうな顔をして、呟くように答えた。
到着まで、みんな口数が少なかった。やっと、汽車はホグズミート駅で停車し、みんなが下車するのでひと騒動だった。その頃にはの顔もいつも通りになっていた。狭いプラットホームは凍るような冷たさで、氷のような雨が叩き付けていた。
四人は周りの人波に流されながら馬車に乗り込んだ。馬車はかすかにカビとワラの匂いがした。は相変わらず一人、窓の外を見てこわばった顔をしていた。背中に時々、三人の視線を感じていたが、三人が話しかけてくることはなかった。ついに、ひと揺れして馬車が止まった。ハーマイオニーとロンが降りた。
ハリーが降りるとき、気取った、いかにもうるしそうな声が聞こえてきた。
「ポッター、気絶したんだって?噂はほんとうのことなのかな?ほんとうに気絶なんかしたのかい?」
マルフォイは肘でハーマイオニーを押し退け、ハリーと城への石段との間に立ちはだかった。喜びに顔を輝かせ、薄青い目が意地悪に光っている。
「うせろ、マルフォイ――」
「人のことを言える身分じゃないでしょ」
歯を食いしばってそう言うロンの言葉に重ねるようにして、降りてきたが言った。マルフォイの頬が少し赤くなった。
「吸魂鬼ごときに泣くよりはいい」マルフォイがいつもの余裕を取り戻して言った。
「女の子の影に隠れるよりはいいと思うけど?」はマルフォイとにらみあった。
「どうしたんだい?」
穏やかな声がした。ルーピンがつぎの馬車から降りてきたところだった。
マルフォイは横柄な目つきでルーピンをジロジロ見た。その目でロードの継ぎ接ぎや、ボロボロの鞄を眺め回した。
「いいえ、何も――えーと――先生」
マルフォイの声にかすかに皮肉が込められていた。クラッブとゴイルに向かってにんまり笑い、マルフォイは二人を引き連れて城への石段を上った。はマルフォイの後ろ姿をにらみつけた。
ハーマイオニーがの背中をつついて急がせた。生徒の群がる石段を、三人は群れに混じって上がり、正面玄関の巨大な樫の扉を通り、広々とした玄関ホールに入った。そこは松明で明々と照らされて、上階に通ずる壮大な大理石の階段があった。
右の方に大広間への扉が開いていた。は群れの流れについて中に入った。大広間の天井は魔法で今日の夜空と同じ雲の多い真っ暗な空に変えられていた。そのとき、後ろでハリーとハーマイオニーの名前が呼ばれた。
「ポッター!グレンジャー!二人とも私のところにおいでなさい!」
マクゴナガル先生が、生徒たちの頭ごしにむこうの方から呼んでいた。
「じゃあ、私たち、先に行くね」
はそのままロンと一緒にグリフィンドール寮の長机に場所を四人分とった。その後、新入生の組分けが始まっても二人は戻って来なかった。
「遅いね」が小さな声でロンに言った。
「新学期早々、説教かな?」ロンがニヤリと笑った。
「まさか。怒られるなら私の方よ。『守護霊の呪文』を使ったんだから」
「気にすることないさ。現に君は呼び出されてないんだから」
肩をすくめてみせるロンに、は深いため息をついた。
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やっといつもの調子が出てきました!