New Term 新学期
そんなある日、が朝食を食べるため大広間に行くと珍しくルーピンの姿が見当たらなかった。は朝寝坊したのかと、少しゆっくり朝食を食べたが、ルーピンは朝食の席には現れなかった。
「心配することはねぇ。ルーピン先生はお出掛けなさっただけだ」
心配になったがハグリッドに問うと、ハグリッドは安心させるようににっこり言った。
は自分に何も言わず出かけるルーピンを不審に思いながらも、その日は独りで過ごした。

夏休みも残すところあとわずか。はルーピンに部屋へ呼び出された。
不思議に思いながらもはルーピンの部屋をノックした。中から、甘い匂いと共にルーピンが現れた。
「やあ、。待ってたよ」ルーピンは笑顔でを中に招き入れた。
「話ってなんなの?」
はルーピンに勧められるまま、椅子に座った。
「新学期、君がどうやって登校するかの話だ」ルーピンは紅茶を出した。
「登校ならもうしているわ」
は驚きを隠せなかった。
「うん、そうだね。だけど、出来れば君が夏休みの数週間、ホグワーツで過ごしたことは内密にしておきたいんだ――理由は聞かないでくれ――だから、普段通り登校しなければならない」
はだんだん不思議になってきた。自分の父親に殺されそうだからと言って、にとって見知らぬ人に預けるだろうか――スネイプならまだ理由がついた。そして、新学期の準備があるからと言って、わざわざ自分まで連れてくる理由はあるのか。
結局のところ、ルーピンはまだ手の内を明かしていないことには気づいた。
「わかった。じゃあ荷物をまとめればいいのね?」
「そうしてくれると有り難い」
ルーピンはが素直に行動してくれて安心したようだった。
「でもね、リーマス」が言った。
「ハリーとロンとハーマイオニーには私がホグワーツにいることがわかっているわ」
「知ってるよ。しかし、彼らは君の友達だろう?彼らには少し規則を緩くしようとダンブルドアは考えている」ルーピンはそれが何でもないように言った。
「それと、私が君の保護者なのもあまり知られたくない」ルーピンは少し厳しい顔をした。
「でも、ハリーは知ってる。私が話してしまったもの――言ってはいけないことだと知らなかった」
はルーピンに怒られると思って慌てて付け足した。
「私は君を怒る権利はない」
しかし、ルーピンはの気持ちを見通したようにそっと呟いた。
「君の秘密はちゃんと友人と分かち合うべきだと私は思う。隠し事は良くない。全て教えて良いとは言えないが、君の判断で良いと思うものは――」ルーピンは遠い目をしていた。「話しなさい」
は頷くと次のルーピンの言葉を待った。どこかルーピンが変なのには薄々気付いていた。
「一度ホグワーツから私の家まで戻るため、登校日の一日前にここを出よう。あと数日あるから、その間に荷物をまとめておいで」
ルーピンはさっきとはうって変わって、いつもの優しい微笑みで言った。
「わかったわ、リーマス」
の中に、ルーピンは謎の人物と、レッテルが貼られてしまった。

とルーピンは計画通り、一日前にホグワーツを出ることが出来た。
ホグワーツを出るとき、何故だかダンブルドアが見送ってくれた。は自分のいないところで何が起きているのか不思議だったが、誰にも聞けなかった。
そして、ルーピンの家で一泊した後、は荷物を持って、ルーピンと共に早い時間に汽車に乗り込んだ。
「リーマス、きっと私たち、一番乗りよ」
はガランとした駅のホームを眺めながら呟いた。
「うん、そうだね。でももうすぐ新入生のご家族は乗ってくるよ」
ルーピンの言うとおり、ちらほらと見たことのない顔が現れた。どれも不安そうな顔だ。明らかに新入生だとわかる。
「リーマス、どうしてわかったの?」は不思議そうにルーピンを見た。
「マグル生まれの子は経験がないから心配になるだろう?早目に来た方が安心だからさ」
すると、ルーピンは眠そうに欠伸した。
「眠いの?」
「ちょっとね」
ルーピンは苦笑した。
「寝ても良いよ。着いたら知らない人のふりして起こすから」
「でも、ハリーは私たちの関係を知っているんじゃないのかい?」
ルーピンはがからかっていると分かり、ルーピンもの挙げ足を取った。
「会ったらすぐに口止するもの、大丈夫よ」はしれっと言い返した。
「ねえ、だから疲れているなら寝ても良いよってば、ルーピン先生」
ルーピンはの言葉に目を開いた。
「そうか、先生か・・・・・」
「そうよ、新学期だし、リーマスとは他人になっちゃうんだから先生って呼ばなきゃ。忘れてたの?」はルーピンの驚き様をクスクス笑った。
「それじゃあ、賢い生徒に目覚めよく起こしてもらおうかな――でも、何かあったらすぐに起こすんだ」
ルーピンは急に真面目になった。
「何か心あたりでもあるの?」は眉をひそめた。
「いや、特にはないが念のためだ。それに君は何でもない顔をしながら独りで解決しそうだしね――無理はしないでくれ」
二人はお互いを見て、にっこり笑った。
の中のルーピンのレッテルは謎の人物の上に、観察力の鋭い、というのがついた。
ルーピンはの言葉に甘えて目を閉じた。はルーピンの睡眠を邪魔しないように静かに窓の外を眺めていた。
ホームにはぞくぞくと知り合いの顔が見えてきた。その中にマルフォイの顔もその父親の顔もあった。
は好奇心からマルフォイの父親が新入生をどんな目で見ているのかと、身を乗り出して見ていた。すると、突如マルフォイの父親がの方を見た。は瞬間的に窓から身を引き、しばらく外から見えないようにコンパートメントの中で縮こまっていた。
五分もして、はそろそろと窓の外を見てみると、マルフォイの姿はもうなかった。
、こんなところにいたの?」
突然聞こえた懐かしい声には振り向いた。
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新学期早々、マルフォイに遭遇;;