Buck and Dog 鹿と犬
次の日、二人はまたダイアゴン横町に出かけた。はお金のことを心配していたが、どうやらリリーがから、ルーピンがリリーから鍵を預かっていたようで、事はすんなり終わった。
二人はまず薬問屋に行って「魔法薬学」の材料を補充した。
次に教科書を買わなければならない。二人がフローリシュ・アンド・ブロッツ書店に入っていくと、店長が急いで寄ってきた。
「ホグワーツかね?」店長が出し抜けに聞いた。
「新しい教科書を?」
「ええ。ほしいのは――」
「どいて」性急にそう言うと、店長は言いかけたルーピンを押し退けた。分厚い手袋をはめ、太いごつごつした杖を取り上げ、店長は怪物本の檻の入り口へと進みでた。
がジッとその様子を見ていると、店長は四苦八苦しながら一冊、本を取り出した。
「まったく、痛くてたまったもんじゃない・・・・・えーと、何かほかにご用は?」店長は皮バンドで暴れる本を閉じながら聞いた。
「カッサンドラ・バブラッキーの『未来の霧を晴らす』をください」
「あぁ、『占い学』だね?」
店長は手袋を外し、怪物本をの手に押し付け、店の奥にあったコーナーから本を持ってきて、ルーピンの手に押し付けた。
「ほかには何か?」
「『中級変身術』と『三年生用の基本呪文集』をください」
十分後、新しい怪物本をは抱え、その他の教科書はルーピンが抱えて、少しブラブラとダイアゴン横町を散策した。
その途中、はふと、「高級クィディッチ用具点」のショーウィンドーを覗きこむ人だかりが気になった。
「リーマス、私、ちょっとだけ見てくる」
はそういうが早いが人だかりの中に割り込んだ。興奮した魔法使いや魔女の中でギュウギュウ揉まれながら、チラッと見えたのは新しく作られた陳列台で、そこにはいままで見たどの箒よりすばらしい箒が飾られていた。
「アイルランド・インターナショナル・サイドから、先日、この美人箒を七本もご注文いただきました!」店のオーナーが見物客に向かって言った。
「このチームは、ワールド・カップの本命ですぞ!」
はチラリと説明書きの最後の部分だけ見ることが出来た。お値段はお問い合わせください、と書かれている。
は名残惜しそうにショーウィンドーから離れた。
「新しい箒だったわ」はルーピンの隣に並んで歩いた。
「名前は分かんなかったけど、ハリーかロンに聞けばすぐ分かると思う」
ルーピンは生き生きと話すに微笑みかけるだけだった。

その日は帰ってからも楽しいことがあった。
夕食も済んで、が帰ると一羽のフクロウがを待ち受けていた。ハリーのフクロウではないことがすぐに分かった。
はフクロウから手紙を受け取った。受け取った瞬間、フクロウはすぐさま窓の外に飛び立った。手紙を見ると、どうやらハーマイオニーとロンかららしい。

、元気?
私たち、あなたに手紙が届かないからずっと心配していたの。でもよかった。ロンのお父様から事情を少し聞いたわ。
あなたがあなたのお父様のことで悩んでないといいけれど。
そう、言い忘れていたけど、私、ロンの家に泊まっているのよ。明日、ハリーに会いに行く予定よ。あなたが今、どこにいるのか分からないけれど、元気なことを祈っているわ。

ハーマイオニー

やあ、
パパから少し聞いたよ。でも、君は君だし、気にすることないと思う。
そういえば、新作の箒が発売されたの知ってる?明日、ハリーに会いに行くついでに見られるかもしれない!
どんな箒か楽しみだな。
じゃあ、もう残り少ないけど、楽しい夏休みをね。
――今度こそ手紙、届いてるよね?

ロン

は一気に二通の手紙を読むと、何故だかニヤニヤと笑いたくなった。ハーマイオニーもロンも自分を心配していてくれたことがとても嬉しくなった。
はちょっとだけハグリッドに会いに行こうと思い、グリフィンドール塔を抜け出した。
まだ夕方とはいえ、辺りは少し暗かった。
は湿った芝生の上を歩いていた。ハグリッドの小屋の光が目に入ってきた。そのとき、森の手前で何かが動く気配がした。
はビクッと反応すると音のした方を素早く見渡した。しかし、いつもの風景と何も変わりなかった。
ホッとため息をついたのもつかの間、今度ははっきりと音がした。
は杖を取り出して構えると、素早く辺りを見回した。すると、森の出口に何かがいるのが分かった。
は恐る恐る近づいた。それは一匹の鹿と、一匹の犬だった。
二匹はが近づいても逃げる様子はなく、警戒するようなそぶりもなかった。はどんどん近づき、ついには二匹の目の前に立った。
二匹はを見つめていた。
「あなたたち、この森に迷いこんだの?」
は恐る恐る鹿の背中を撫でた。鹿は嬉しそうな声を出した。足に犬がじゃれついてくる。
「この森には危険な動物がたくさんいるのに」
は今度は犬を撫でてやった。犬は本当に嬉しいのか、尻尾を引きちぎれんばかりに振った。
そのとき、は改めて犬をマジマジと見た。どこもかしこも真っ黒な犬だった。
しかし、こんな人なつっこい犬がグリムのわけがないと、は犬を撫で続けた。
そうしてどのくらい時間が過ぎただろうか。ハグリッドの小屋から誰かが出てくるのが見えた。
すると、鹿と犬は瞬く間に森の中に消えていった。
「驚いたのかしら」
はそう呟くと、今出てきた人物が誰だか確かめようとした。しかし、確かめる必要はなく、その人物からの方によってきた。
じゃねえか。なにしちょる」
ハグリッドだった。ハグリッドは驚いた顔でを見た。
「別に何もしてないわ。ハグリッドの家に遊びに行こうと思ってただけ」
は肩をすくめた。
「そうか。ファングもきっとお前さんに会いたがっちょる。しかし、俺はちょっとばかし行かなくてはいけねえ。また今度来てくれな」
「そう、残念ね」
はそう呟いてグリフィンドール塔に戻ることにした。
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