A pair 二人きり
「どうしたの?」
ハリーは黙りこんだを不審に思って声をかけた。
「あの・・・・・」
は顔をあげることが出来なかった。
「ごめん、
ただならぬ気配を感じたハリーは素早くそう言った。
「え?」
がふと顔をあげた先にはハリーの顔があった。
「泣きそうな顔してる」
ハリーはそっとそう言うと、黙ったまま歩いた。
「あのね――」
が口を開いた。
「なに?」ハリーは前を向いたまま答えた。
「昔、私がホグワーツに入学する前のこと覚えてる?」
ハリーは忘れていたのか少し考えた後、反応した。
「君がホグワーツに行くことを不安がっていたこと?」
「うん」はうつ向いて話し出した。
「私、ジェームズに誰が敵になろうと、自分だけは私の味方だからって言われた。それに、ハリーに友達だって励まされた」
ハリーにはが何を言いたいのか分からないらしく、アイスを食べながら、ジッとを見ていた。
「だから私、学校に行けた。でも、今度だけは誰も味方になってくれないわ。私、あなたと一緒にいちゃいけないんだもの」
「どういうこと?」
ハリーはそうとう驚いたようで目を見開いた。
はそれでも黙っていた。
「父さんたちに何があったんだ?」ハリーはじれったそうに聞いた。
「パパがママやリリーに怪我を負わし、ジェームズを殺したって・・・・・」ハリーは茫然とを見た。
「うそだ!」
うそじゃない!
二人は睨み合った。
「私、病院で意識不明のママを見たわ。リリーには会えなかったけど、リリーは軽傷みたいで、パパがママとリリーを攻撃したって証言してる。その後、姿を見せないジェームズは魔法省の見解でパパに殺されたって――」
「信じるもんか。どうして父さんが・・・・・」
ハリーはうつ向いた。
「でも、ジェームズの死体は発見されていない」は一応、慰めの言葉をかけた。
「シリウスは何のために・・・・・」
しかし、ハリーの耳には届かなかった。
「あなたもパパが殺したと?」
は泣きそうになった。
「他に誰が出来る?母さんは闇祓いだ。意表をつかなきゃ怪我だって負わせられない――」
「だから、あなたに話したくなかった。みんなパパが殺したって言うわ!私が犯罪者の娘?そんなの気にしない。だけど、パパのことを侮辱しないで!私に同情しないで!パパは犯罪者じゃない!」
ハリーはハッとしてを見た。すでに目には涙が浮かんでいた。
「中には私があなたと一緒にいることも不愉快に思う人たちがいるわ。だから、私、もうあなたといられない」
「待ってよ。そんなのおかしいよ」
ハリーは怒って言った。
「たとえ、シリウスが犯罪者でも、そうじゃなくても君は関係ないじゃないか。どうしてもういられないんだ?」
「世の中はそう望むのよ!」
はとうとう泣き始めた。
「ねぇ、」ハリーは自分の気持ちを出来るだけ押さえて言った。
「僕は去年も一昨年も助けてもらった」
「だから何よ」
がハリーに噛みついた。
「今度は僕が君の力になりたい」
はポカンとハリーを見た。
「私に同情する気なら――」
「同情じゃない。いままでいつも二人で過ごしてきた。今更、君がいないなんて僕は嫌なんだ。君が僕を嫌おうと、僕は君と一緒にいる。君の味方になる」
ハリーとは見つめ合った。
「変なこと言わないでよ」
「僕は真面目だ」
は自分の手元を見て、アイスが溶け始めているのに気付いた。
「あなたってやっぱりジェームズの息子なのね」
「君こその娘だよ」
二人はお互いを見て笑い合った。
「元気になった?」
「うん、すっきりした」
は満面の笑みでハリーに答えた。
「よかった」
二人の中に出来るだけ両親の話をしないという暗黙の了解ができた。
「それで。君は今、どんな夏休みなんだい?」
溶け始めたアイスを急いで食べながら、ハリーが聞いた。
「学校に泊まってるわ。スネイプがいるから楽しくないし、知らない先生まで私を興味深く見るから腹立つわね」
ハリーは「学校」という単語で思い出したのか、ハッとした表情でを見た。
「今年からホグズミートに行けるって聞いた?」
「ホグズミート?あぁ、三年生から行けるっていう?」が聞き返した。
「そう。でも、保護者のサインがいるみたいで・・・・・僕、叔父さんに頼んでみたんだけど、ダメだった」
は考え込んだが、そんな手紙をもらった記憶がない。
「私、そんな手紙見たことないわ」
「え?」
ハリーは目を大きく見開いた。
「もらってないの?」
「わかんない。だけど、もしかしたら学校にいるから届いてないのかも。多分、私を引き取ってくれた人に聞いたら分かるわ」
は肩をすくめてみせた。
「あのさ、気になってたんだけど、を引き取ってくれた人とってどんな関係なの?」
「私も知らないの」
もキョトンとして言った。
「聞いてもなんだか上手くスルーされてるような気がするの」
「でも、その人の名前くらい知ってるんじゃないの?それに学校にが泊まってるならその人、教師じゃないのかな?」
はっきり言って、はハリーの推測の深さに驚いた。それと同時に舌を巻いた。
しかし、ルーピンが教師だという話はダンブルドアと新学期が始まるまで秘密にすると約束してある。
「彼の名前はリーマス・ルーピンよ。どうやらパパたちを知ってるみたい。だけど、その話もあまりしたがらないわ」
はハリーに話すことを決心した。
「それでね、誰にも言わないでほしいんだけど――」
「言わないよ」ハリーが素早く口をはさんだ。
「彼、あなたの言う通り、教師よ。もちろん闇の魔術に対する防衛術の先生。でも、いままでの二人の先生よりかなり良い先生だと私は思うの」
そして、は隣を歩いていたハリーの顔を覗きこんだ。
「今年、じゃあハリーに守ってもらうから」
ハリーの頬が少し赤く染まった。
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せっかくのデートです。ラブラブになりましょい^^