「ねぇ、ルーピン先生」
はちょっと飽きて、隣にいたルーピンのローブを引っ張った。
「どうしたんだい?」
「最近の『日刊予言者新聞』持ってる?」は回りの先生に聞こえないように言った。
「どうしてだい?君にとって、あまりいいことは書いてないよ」
ルーピンは新聞を読んでいたのか、少し反対した。
「そんなの予想つくわ。そうじゃなくて、何も知らないまま新学期なんて嫌なの。どうせ、みんなが全員、私のことを快く思っているわけじゃないんでしょう?」
ルーピンは迷ったようだったが、しぶしぶ認めた。
「それだったら、最初から心の準備をしておかなきゃ――」
「私が見せたくない理由は他にもある」
突然、ルーピンがの話に割り込んだ。
「他に?」は不審そうにルーピンを見た。
「ハリーのことでね」
はルーピンの口からその言葉が出た瞬間、何故かとても腹立たしくなった。
「どんな?」は平静を装って聞いた。
ルーピンは気づかなかったようで、話を続けた。
「哀れな被害者になりつつある」
またもや、は腹が立った。
「それで?」
「君がハリーを殺すのではないかと書かれている」
ルーピンはの反応を見たが、はなんの反応もしなかった。
「でも、ハリーは何も言ってなかった」
「ハリーは日刊予言新聞を読んでいるのかい?」
はしばらく黙りこんだ。ハリーがそんなことを言っていたという記憶がない。
「わからない」
「彼は君のことを気にはしないと思うが、その周りにいる人たちがね・・・・・多分、君よりハリーを優先するだろう」
はルーピンの言っている意味が分からなかった。
「どういう意味?」
「言いたいことは変わりないさ。つまり、君に対する風向きが悪いってこと」
は曖昧な声を出した。
食事をし終わった先生たちがちらほらと席を立ち始めた。
夕食後、ルーピンに送られてグリフィンドール塔に戻るとヘドウィグがちょこんととまっていた。
「手紙・・・・・」
は慌てて手紙を広げた。
、僕、退学にならなかった。
ダイアゴン横丁に着いた途端、大臣に見付かったけど、何も言われなかったんだ。それに、漏れ鍋に泊まるようにしてくれた。
あの家から逃げられて、本当によかった。
それで、僕の方も落ち着いて来たから君に会いたいんだ。もし、暇だったら来てほしい。いろんなことを聞きたい。
それと、良かったら、宿題を少し教えて。
ハリー
「明日にでも会いに行けるわよ、ハリー」
はクスクス笑いながらグリフィンドール塔を駆け抜け、ルーピンの部屋をノックした。
「リーマス、開けて」
「どうしたんだい?」
ルーピンは相変わらずにこやかに扉を開けた。
「明日、漏れ鍋につれていって」
ルーピンは一瞬、なんのことだか分からなかったらしいが、すぐに思い出すと、快く引き受けてくれた。
翌日、朝食を少し早めにとった二人は私服に着替えてホグワーツの外に出た。今度は何事もなく、吸魂鬼のそばを抜けられた。
「いい天気」
は少しはしゃいでいた。
「で、ハリーの方は大丈夫だったのかい?」ルーピンは自然にそう言った。
「やっぱり気付いてたんだ」は少し残念そうな顔をした。
「もちろん。それで、退学処分は免れたみたいだね」
「そうみたい」
「それは良かった」
ルーピンがそう言うと、は何故だかハリーに腹が立った。
二人が漏れ鍋に行くと、漏れ鍋は魔法使いたちがたまっていた。
「、私は用事があるから、一緒にはいられない。二人で話しておいで。六時頃、また迎えに来る。くれぐれも一人では行動しないように」
ルーピンは人目を避けるように早口でそう言うと、を漏れ鍋に残し、どこかに行ってしまった。
は仕方なく、一人でハリーを見付けることにした。
「ここにハリー・ポッターが泊まっているはずなんですけど――」
カウンターにいた店員らしき人に声をかけたそのとき、聞き慣れた声が聞こえた。
「、今日来たの?」
少し痩せたハリーが立っていた。
「うん、来ちゃった。私も会いたかったから」
が素直にそう伝えると、ハリーはにっこり笑った。そして、ハリーと連れだってダイアゴン横丁に向かった。
「夏休み、どう?」
ゆっくり行く当てもないまま歩きながら、はハリーに話しかけた。
「叔母さんの家にいるときは楽しくなかったよ」ハリーが顔をしかめた。
「父さんと母さんは交通事故で重体だから、預けられているって言われた。だけど、そんなはず、ないだろう?」
「ハリー、『日刊予言新聞』読んでる?」
はハリーの話に割り込んだ。
「読んでるよ、ここに来てからは。だけど、叔母さんの家では読めなかった。ヘドウィグを飛ばすのも禁止だった」
「そう・・・・・」
はシリウスのことを話すべきか迷ったが、結局、話せなかった。ハリーがどういう反応をするか、怖かった。
「そっちはどう?」
ハリーは少しの顔を覗きこんだ。
「え?私?」
は突然そんなことを聞かれたので、すっとんきょうな声をあげた。
「そうだよ、。君は魔法使いの家に預けられたんだろう?――アイスでも食べようよ」
ハリーはを手招きして、店の前まで連れてきた。そのとき、は自分がお金を持ってないことに気付いた。
「ハリー、私、お金を持ってないの」
「おごるよ」
サラリとハリーはそう言って、チョコにアーモンドが入ったアイスを二人分買った。
「はい、チョコ好きだったでしょ?」
「ありがとう」は素直にアイスを受け取った。
「覚えてたんだね」
「たかが、三週間くらいで、の好みは忘れないって」ハリーはクスクス笑った。
そんなハリーを見て、は何故だか申し訳なく思った。
「それで、どうなの?」
「どうって?」が聞き返した。
「楽しい?」
は黙りこんでしまった。ハリーに自分からちゃんと事実を伝えられる勇気がまだにはなかった。
ハリーと甘い雰囲気。笑