Nota Bene 注意せよ
、大丈夫かい?」
ルーピンの声がする。は薄目を開けて、確かにそれがルーピンだと分かった。
「怖かっただろう?悪かった」
は自分がどこかのベッドに横にされているのに気が付いた。
「怖い思いをしたのは私自身の責任だから。気にしないで――でも、何があったの?」
はそう言って上半身を起こした。すると、ここがどこだかやっと気づいた――ホグワーツの医務室だ。
「話す前に、にはこれを食べてもらわないと。元気になる。全部食べなさい」
ルーピンがの頬を撫でた。それが妙にシリウスに似ていて、は切なくなった。いつの間にか目がしらが熱い。
ルーピンはの目からこぼれ落ちた滴を優しく指ですくうと、チョコレートを渡した。
「食べなさい」ルーピンは静かにそう言った。
も鼻をすすりながらどうにか全部チョコレートを食べ終った。
「ここ、ホグワーツでしょう?」はなるべくシリウスのことを思い出さないようにして言った。
「そうだよ。君はディメンターが近付いてきたとき、倒れたんだ――しかし、恥に思う必要はない」
ルーピンはの顔が恥ずかしそうに赤くなるのに気づいて言った。
「多分、君の過去に普通の人よりもっと怖いものがあるからなんだ。例えば、ヴォルデモートとかね」
は我が耳を疑った。その名前を平気で口にするのはシリウスやジェームズ、ダンブルドアだけだった。
「倒れた君を無理にその場で起こす必要はないと思い、ここまで連れてきたんだ。――荷物はグリフィンドール塔にあるよ」
「ごめんなさい」は目をふせて言った。
「どうして謝るんだい?」ルーピンが不思議に聞いた。
「だって、足手まといだったでしょう?リーマス一人なら、ディメンターのところも楽々――」

ルーピンが優しくの言葉をさえぎった。
「ディメンターの件は全く気にしなくて良いんだ。君が気に病むようなことはない」
「でも――」
ルーピンが今度はきっぱり言った。
「いいかい、君が倒れた状況は倒れておかしくない状況だったんだ。そして、さらに言うけど、君が倒れたとき、すでにディメンターは自分たちの持ち場に戻っていった後だった」
にはルーピンがとてもかっこよく見えた。
「あのね、ずっと気になっていたんだけど」がおずおずと口を開いた。
「何だい?」ルーピンは先をうながした。
「どうして私、ルーピンの家に預けられたの?」
ルーピンは少し戸惑ったような顔をした。どうやって答えたら良いか、悩んでいるようだった。
「それは多分・・・・・君の母親と知り合いだったから――」
「知り合いならスネイプも知り合いよ」が言った。
「それに、リーマスはどうしてそこまで私に良くしてくれるの?」
「悪くしてほしいのかい?」ルーピンが逆に聞いた。
「そんなことないわ。だけど、見知らぬ子に優しくするなんて・・・・・おまけにブラック家の子供よ。考えられないじゃない」
ルーピンはまたもや困ったような顔をした。
「じゃあ。君は見知らぬ子が苦しい思いをしていたら、そのまま見て見ぬふりをするのかい?その子が世間であまり良い評判を受けてないからという理由で」
「しないわ」はすぐさま答えた。
「だろう?それと一緒だ。それにもし、君が親戚の家に預けられるのなら、君が嫌悪しているブラック家の純潔主義の者たちに預けられることになるんだよ?それで、よかったかい?」
は激しく頭をふった。あまりにも頭を振りすぎたので、目が回ってしまった。
「さあ、じゃあそろそろ行かないとね」
「どこに行くの?」はベッドからピョンッと飛び降りた。もうディメンターのショックから立ち直っていた。
「ダンブルドアのところだ。君との話が終ったら、君を部屋に連れてくるように言われてる」
「怒られるの?」
「まさか!これからのことを聞くだけだよ」ルーピンがクスクスと笑った。
「これからのことって?私、このままここに泊まるんじゃないの?」がキョトンとして聞いた。
「そうだよ。だけど、一先ずは授業がないホグワーツの過ごし方を聞かないとね。大体は、私と一緒に過ごせると思うよ」
ルーピンはどんどん歩いていき、校長室に足を踏み入れた。
「ダンブルドア先生、・ブラックを連れてきました」
「ご苦労じゃった。首尾は上々かね?」
ダンブルドアは相変わらず柔らかい微笑みを浮かべていた。
「はい」ルーピンが言った。
「それは良い。――さて、。君はこの一週間ほどの新聞を読んでないと思うが、あってるかね?」
はコクリと頷いた。
「君が泊まっているルーピン先生の家はフクロウ便が届かないようになっておる。新聞を読んだ者からの反響を防ぐためじゃ」
「どういうことですか?」
はダンブルドアの言っている意味が分からなく、聞きなおした。
「つまりじゃ。君は世間から見ると犯罪者の娘となる――君がいくら君の父上が無罪だと主張してもじゃ」ダンブルドアはの言葉を先回りした。
「世間の反応がどうであれ、君を快く思わない人物は出てくるであろう。そういうものからの呪いの入った手紙などを防ぐためだったのじゃ。しかし、ここはホグワーツ。ルーピン先生だけでなく、他の先生たちも何人かもう到着しておる。ここで手紙を止めることは罪であろう。もし、怪しい手紙などが届いた場合、誰か先生に相談すると良い。専門の先生が対処してくださるであろう」
ダンブルドアは未だに優しい微笑でを見つめていた。
「先生」は思い切って口を開いた。
「なんじゃね?」
ダンブルドアは細長い指を机の上で組んだ。
「先生はこの事件に関して、パパが本当に犯人だと思っていらっしゃいますか?」
しばし、沈黙があった。
「時と場合によってじゃ。はっきり言って、今回の事件は証拠や証言が少なすぎる。君の父上が犯人にしろ、しないにしろ、わしはどちらの場合も考えておる」
はそれを聞いて少しだけ不安がとれたような気がした――ダンブルドアがまだ、信じてくれている。
「さて、。これからのことじゃが、自由にホグワーツ中を散策してもらって構わん。ただし、禁じられた森、ホグワーツの外には行かんでくだされ。今年、ホグワーツは吸魂鬼によって監視されておる。もう、ルーピン先生から聞いているかもしれんが、彼らは聞く耳など持たぬ。きっかけを与えぬように、外出が必要なときは誰か先生に申し出ると良い。そして、君が泊まるところはもちろんグリフィンドール塔じゃが、合言葉を一応作ってある。あとでマクゴナガル先生に聞くと良い。何か質問はあるかね?」
「リーマ――ルーピン先生とは一緒にいても構わないですか?」が聞いた。
「先生次第じゃ。わしは別に気にはせん。そうじゃ、、君が夏休みにホグワーツに来ていることは多くの先生が知っておるが、誰とどういう関係で来ているのかはほとんどの先生方は知らぬ。心配はいらぬと思うが、自分の首を絞めるようなまねはせぬよう、言っておこう。以上じゃ」
はちょこんとダンブルドアに頭を下げると、ルーピンに連れられて外に出た。
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ホグワーツの長老に再会です。