Dementor 吸魂鬼
しかし、が泊まっている間にが目を覚ますことはなかった。翌日、スネイプと一緒に病院を出て、道中、一言も交さず、は少し落胆した表情で家に戻った。
「おかえり、
スネイプに連れられてが帰ってくると、ルーピンが歓迎した。
「我輩はこれで失礼する」スネイプはきっぱりそう言うと姿くらましした。
、ほら、そんなところで立ってないで、こっちにおいで」
リーマスが優しくを手招いた。

約一ヶ月ほどはルーピンの家で過ごした。その間、ルーピンはにとても良くしてくれた。
そんなある日、はルーピンにいきなりホグワーツに行くよ、と言われた。
「まだ学校じゃないわ」はびっくりして言った。
「私は学校で新学期の準備をしなければならないんだ」
はふと思い出した。ルーピンは先生だったのだ。
「他の先生もいるの?」が聞いた。
「いる人もいない人もまちまちだよ」
ルーピンはそう言うとに学校に行く支度をさせた。
しかし、先学期の荷物でルーピンの家に来たは別に特別なものなどなく、すぐに準備は終わった。
とルーピンは次の日、旅立った。もちろん、の荷物すべてにルーピンの魔法がかけられて、軽く運べるようになっていた。
ルーピンは家の前で杖腕をあげた。すると、その瞬間、目の前にバスが止まった。バスは三階建ての派手な紫色で、フロントガラスの上に、金文字で「夜の騎士バス」と書かれている。
中から紫色の制服を着た車掌がバスから飛び下り、二人に向かって大声で呼び掛けた。
「『ナイト・バス』がお迎えに来ました。迷子の魔法使い、魔女たちの緊急お助けバスです。わたしはスタン・シャンパイクです――」
「さあ、乗って」ルーピンはその車掌の言うことには耳をかさず、の背中を軽く押した。
は恐る恐るバスに足を踏み入れた。中は休み中のためか、誰もいなかった。そして、種類もバラバラな椅子が適当に並べてあった。
、奥に行こう」
はルーピンに連れられて奥に行くと、椅子に座った。すると、ルーピンはから荷物を預かると、ぶつぶつと唱え、床に下ろした。そして、の椅子にもルーピンの椅子にも何か呪文を唱えて杖で叩いた。
「何をしたの?」
「旅が安全なようにしたんだ。このバスは凄い揺れるからね」
ルーピンの言う通り、バスはハチャメチャに揺れた。しかし、ルーピンのかけた魔法のお陰でが椅子から落ちたり、怪我をすることはなかった。
しばらく乗っていると、バスはいきなり止まった。
「着いたぞ」と言う声が聞こえ、ルーピンはの椅子や荷物を自分の杖でまた叩いた。すると不思議なことに、さっきまでびくともしなかったのに、立ち上がることが出来た。
「さあ、、ついておいで」
ルーピンはが立ち上がるのを見て言った。
バスから降りると、少し先にホグワーツがあった。後ろを振り向くと、バスはもういなかった。
、君は確か去年の冬、ご両親から守護霊を出す術を学んでいたね?」ルーピンが聞いた。
「習ったわ。冬、ずっとそればかりやっていた」はルーピンが何故知っているのか不思議だったが、ダンブルドアからまた聞いたのだろう、と思った。
「そう。じゃあ、、ここで君の守護霊を出せるかい?」
「未成年の魔法は禁じられてるわ」はびっくりしてルーピンの頭を疑った。
「知っている。だけど、言っただろう?魔法省は君の命を守るのに必死だ。先日、魔法省から許しをもらったんだ」
はふぅん、と曖昧な声を出した。
「さあ、じゃあ出してくれるかい?」
ルーピンがそう聞いたので、はこっくりと頷いた。去年、マートルのトイレで出したのと同じだ。
エクスペクト・パトローナム、守護霊よ来たれ
の杖先から銀色に光る、四足の生物が現れた。
「これは、一体・・・・・」ルーピンは唖然とその生き物を見た。
「よくわからないわ」が言った。
守護霊はとルーピンの周りを一周すると消えた。
「凄いね、この年でこんなはっきりした守護霊を出せるなんて。正直、驚いたよ」
ルーピンはを見た。
「そうなの?」はキョトンとして言った。
「そうさ。この術はOWL資格をはるかに越える」ルーピンは何故か、を愛しげに見た。
「それじゃあ何故、私がに出すように言ったのか言わなくてはね。良いかい、。学校の周りを見てごらん。何が見える?」ルーピンに指さされ、は初めてその存在に気付いた。
「まさか、ディメンター?」の声が裏返った。
「正解。多分、新学期にダンブルドアから注意されると思うが、先に言っておこう。勝手に外には出ないでほしい。きっと君は本物のディメンターとは対決したことがないだろう?」はルーピンの言葉に頷いた。
「ならば、なおさらだ。『守護霊の呪文』を使えたとしても、彼らといざこざを起こさない方が良い」
「わかった」はルーピンの目を見て頷いた。
ルーピンはにっこり笑って言った。
「それじゃあ行こう。いつまでもここに立っているわけにはいかない――ディメンターの側を通るとき、私がいいと言うまでそばを離れないでほしい。それと、念のため、杖も握ってね」
はルーピンの言葉どおり、ギュッとルーピンのローブを握った。
歩くたび、ディメンターの存在を主張するように、寒気が強くなってくる。
はますますルーピンの陰に隠れるようにして歩いた。
そのとき、一体のディメンターが二人に近付いてきた。ルーピンは杖を構えて言った。
「マントの下にシリウス・ブラックをかくまっている者はいない」
しかし、ディメンターは立ち去る気配がない。そればかりか、どんどん二人に近付いてきた。そして、それに引きつられるようにして、他のディメンターも近付いてきた。
ぞーっとするような冷気が襲ってきた。の目玉が引っくり返った。何も見えない。耳の中に誰かの高笑いが響いた。その中に悲鳴があがった。そしての前には崩れた家があった――。
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リーマスとの初デートなのに・・・・・