結局、何故ルーピンの家に泊まることになったのか、聞けなかった。部屋のベッドにごろりと横になったはルーピンの言葉を考えた。彼はシリウスが犯人だと思っているようだった。
「『君が願うのならそうなるだろう』か・・・・・」
は寝返りをうった。ルーピンが何を言いたかったのかわからない。は目を閉じた。
「ママ」
そう呼べばいつでも答えてくれた人がもう近くにいない。
そのとき、コツコツと何かを叩く音がした。頭を音のする方へ向けてみると真っ白なふくろうがこちらを見ていた。
「ヘドウィッグ!」
は急いで窓に近寄ると、鍵を開けヘドウィッグを中に招いた。
「ハリーからね」
はヘドウィッグから手紙をもらい、すぐさま手紙を広げた。
、そっちの方はどうだい?
僕の方は、はっきり言って限界だ。彼らは父さんたちを侮辱するし、宿題も隠れてコソコソしか出来ない。来学期、スネイプに処罰されないように必死だよ。
ところで、どうして僕たちが離ればなれになったか、分かったかい?母さんの姉妹の――つまり叔母と叔父にあたるんだ――家族に聞いてみたけどさっぱり。本当のことを言っているのか信じがたいね。
それに、息子には本当にウンザリだ。彼、太っていて意地悪ばっかりだ。そのかわり心小者みたいなんだけど。
、君の方の話も聞きたい。別れた後、一体なにがあったんだい?
ハリー
「こっちも本当のことなのか、信じがたいわよ」
はため息をついて、ハリーのために手紙を書き始めた。不思議と、眠くはならなかった。
ハリー、元気だといいのだけれど。
あなたの引き取り手は大変なようね。私の方は貧乏そうな人だけど、あったかい人だったわ。すごく優しい。
私もパパとママの話を聞いたけど、信じがたいわ。
あのね、ハリーたちと別れた後、私はダンブルドアのところで引き取り手の人と会ったのよ。その部屋に何故かスネイプも一緒だったわ。何かあるのかしら。
ハリー、また手紙送って。
宿題は私も協力するわ。分からないところがあったら言って。もちろん、魔法史以外でね。
また無事に会えることを祈ってる。
「おいで」
はヘドウィッグに手紙を託すと、窓辺に連れて行った。
「ハリーに届けて。お願いね」
ヘドウィッグはわかりましたとばかりにホーッと鳴くと、窓の外に飛び上がった。
次の日、は夜遅く寝たせいか、学校の疲れか、普段より遅く起きた。完全に寝坊だった。
「寝坊した!」
はドタドタと階段を降りて、リビングに入った。
「うん、さっき覗いたんだけど、あまりにも幸せそうに寝てるから起こさなかったんだ。起こした方がよかったかい?」ルーピンがすまなそうに聞いた。
「ううん、大丈夫よ。あのね、いつもはこんなに寝てないからね」
が釘をさすと、ルーピンはクスクスと笑った。
「自由に過ごしてもらってかまわないよ。ここはの家みたいなものだから」
はルーピンにつられてクスクスと笑った。
数日後、が部屋で宿題をしていると、ルーピンの家のチャイムが鳴った。は珍しい、と好奇心いっぱいで、玄関に降りて行った。
「ダンブルドア先生」
そこにはダンブルドアがいて、ルーピンと何かを話していた。
「やあ、。元気かの?」
はダンブルドアの顔を見て、何かを言いたくなったが、その何かは結局見付からなかった。
「あの、はい」
ダンブルドアはキラキラした目でを見た。
「君の母君は生きておる。心配は無用じゃ。さて、そこでじゃが、五日後、母君のところで一晩泊まるのはどうじゃろうか。君が母君に会いたいと言っていることはリーマスから聞いておる。もし、運が良ければ話すことも出来るであろう」
はマジマジとダンブルドアを見つめた。
「話が出来るんですか?」
「運が良ければ、じゃ。今、は昏睡状態での、意識があるときの方が少ない――どうかね、。それでも行くかね?」ダンブルドアがを見た。
「はい!」
はここにきて、初めて満面の笑みを浮かべた。
「よろしい。では、そのように手配しよう――リーマス、後でセブルスから薬を届けると伝言があった」
「わざわざありがとうございます」
ルーピンが頭を下げようとすると、ダンブルドアがそれを制した。
「それと、。リーマスから君の身に起こった出来事は聞いたかね?」は不機嫌そうな顔をして頷いた。
「君の考えを聞きたいのじゃが」ダンブルドアがジッと見つめた。
「私はパパがママを攻撃したとは思いません」
「違うものがやったと?」ダンブルドアは興味深いという顔をした。
「いえ、リリーが嘘をつくとも思えません。ですから、何者かがパパに化けたか、それかパパとそっくりな何者かが攻撃したのだと思います」はキッパリと言い切った。ダンブルドアはまだ興味深いという顔をしていた。
「それでは、わしはもう行こう。少し用事があるのでな」
ダンブルドアはとルーピンに笑いかけると家を出ていった。
「スネイプが来るの?」
「しっかり聞いていたんだね」ルーピンはに「お茶にしよう」と言って、リビングに向かった。
「もちろん。リーマス、どこか病気なの?」が心配そうに聞いた。
「あぁ、少しだけね。でも心配することはないよ」ルーピンは安心させるように微笑んだ。
「でも、確かに顔色が悪そう――」
そのとき、玄関のチャイムがまた鳴った。
「、ここで待ってて」
ルーピンは早足でリビングを出ていった。そして、リビングのドアを閉めた。しかし、閉めてもルーピンの声は聞こえた。
「やあ、セブルス――あぁ、ありがとう」
どうやら薬を渡されたらしかった。
「そう、わかったと伝えてくれ――明日もまたお願いしたい――ありがとう」
ドアが閉まる音がして、スネイプが帰ったことがわかった。
「やあ、、待たせたね」
はルーピンの顔をよく見た。しかし、あまり顔色は変わっていないようだ。あのスネイプに限って、魔法薬を飲ませて病気が治らないなんてことはあっただろうか。それに、明日もまたお願いしたいとルーピンは言っていた。
は素早く頭を働かせたが、答えは見付からないままだった。
スネイプ参上^^