Well-done! お見事
ハリー、ロン、、ジニー、ロックハートが、泥まみれのネトネトで戸口に立つと、一瞬沈黙が流れた。そして叫び声があがった。
「ジニー!」
ウィーズリー夫人だった。暖炉の前に座りこんで、泣き続けていたウィーズリー夫人が飛び上がってジニーに駆け寄り、ウィーズリー氏もすぐあとに続いた。二人は娘に飛び付いて抱きしめた。そして、ハリー、、ロンの顔を一人ずつ見つめて言った。
「あなたたちがあの子を助けてくれた!あの子の命を!どうやって助けたの?」
「私たち全員がそれを知りたいと思っていますよ」マクゴナガル先生がポツリと言った。
はハリーの背中からゆっくり降ろされ、「組分け帽子」をハリーに手渡した。ハリーは躊躇しながらも、デスクまで歩いて行き、「組分け帽子」とルビーのちりばめられた剣、それにリドルの日記の残骸をその上に置いた。
ハリーは一部始終を語りはじめた。十五分も話しただろうか、聞き手は魅せられたようにシーンとして聞き入った。姿なき声を聞いたこと、それが水道のパイプの中を通るバジリスクだと気づいたこと、ロンと二人でクモを追って森に入ったこと、アラゴグが、バジリスクの最後の犠牲者がどこで死んだかを話してくれたこと、「嘆きのマートル」がその犠牲者ではないか、そして、トイレのどこかに、「秘密の部屋」の入り口があるのではないかと考えたこと・・・・・。
「そうでしたか」
マクゴナガル先生は、ハリーがちょっと息を継いだときに、先を促すように言った。
「それで入り口を見つけたわけですね――その間、約百の校則を粉々に破ったと言っておきましょう――でもポッター、いったい全体どうやって、全員生きてその部屋を出られたというのですか?」
ハリーはまた話して聞かせた。
しかし、はハリーが話を進めるたびに不安になっていった――ジニーが犯人ではないと、どいやって証明出来るのだろうか。
はチラリとダンブルドアを見た。ダンブルドアがかすかに微笑み、暖炉の火が、半月形のメガネにチラチラと映った。
「わしが一番興味があるのは」ダンブルドアがやさしく言った。
「ヴォルデモート卿が、どうやってジニーに魔法をかけたかということじゃな。わしの個人的情報によれば、ヴォルデモートは、現在アルバニアの森に隠れているらしいが」
「な、なんですって?」ウィーズリー氏がキョトンとした声をあげた。
「『例のあの人』が?ジニーに、ま、魔法をかけたと?でも、ジニーはそんな・・・・・ジニーはこれまでそんな・・・・・それともほんとうに?」
「この日記だったんです」
ハリーは急いでそう言うと、日記を取り上げ、ダンブルドアに見せた。
「リドルは十六歳のときに、これを書きました」
ダンブルドアはハリーの手から日記を取り、長い折れ曲がった鼻の上から日記を見下ろし、焼け焦げ、ブヨブヨになったページを熱心に眺め回した。
「見事じゃ」ダンブルドアが静かに言った。
「たしかに、彼はホグワーツ始まって以来、最高の秀才だったと言えるじゃろう」
次にダンブルドアは、さっぱりわからないという顔をしているウィーズリー一家の方に向き直った。
「ヴォルデモート卿が、かつてトム・リドルと呼ばれていたことを知る者は、ほとんどいない。わし自身、五十年前、ホグワーツでトムを教えた。卒業後、トムは消えてしまった・・・・・遠くへ。そしてあちこちへ旅をした・・・・・闇の魔術にどっぷりと沈みこみ、魔法界で最も好ましからざる者たちと交わり、危険な変身を何度もへて、ヴォルデモート卿として再び姿を現したときには、昔の面影はまったくなかった。あの聡明でハンサムな男の子、かつてここで首席だった子を、ヴォルデモート卿と結び付けて考える者は、ほとんどいなかった」
「でも、ジニーが」ウィーズリー夫人が聞いた。
「うちのジニーが、その――その人と――なんの関係が?」
「その人の、に、日記なの!」ジニーがしゃくりあげた。「あたし、いつもその日記に、か、書いていたの。そしたら、その人が、あたしに今学期中ずっと、返事をくれたの――」
「ジニー!」ウィーズリー氏が仰天して叫んだ。
「パパはおまえに、なんにも教えてなかったというのかい?パパがいつも言ってただろう?脳みそがどこにあるか見えないのに、一人で勝手に考えることができるものは信用しちゃいけないって、教えただろう?どうして日記をパパかママに見せなかったの?そんな妖しげなものは、闇の魔術が詰まっていることははっきりしているのに!」
「あたし、し、知らなかった」ジニーがまたしゃくりあげた。
「ママが準備してくれた本の中にこれがあったの。あたし、誰かがそこに置いて行って、すっかり忘れてしまったんだろうって、そ、そう思った・・・・・」
「ミス・ウィーズリーはすぐに医務室に行きなさい」ダンブルドアが、きっぱりした口調でジニーの話を中断した。
「過酷な試練じゃったろう。処罰はなし。もっと年上の、もっと賢い魔法使いさえ、ヴォルデモート卿にたぶらかされてきたのしゃ」
ダンブルドアはツカツカと出口まで歩いていって、ドアを開けた。
「安静にして、それに、熱い湯気の出るようなココアをマグカップ一杯飲むがよい。わしはいつもそれで元気が出る」
ダンブルドアはキラキラ輝く目で優しくジニーを見下ろしていた。
「マダム・ポンフリーはまだ起きておる。マンドレイクのジュースをみんなに飲ませたところでな――きっと、バジリスクの犠牲者たちが、今にも目を覚ますじゃろう」
「じゃ、ハーマイオニーは大丈夫なんだ!」ロンが嬉しそうに言った。
「回復不能の傷害は何もなかった」ダンブルドアが答えた。
ウィーズリー夫人がジニーを連れて出て行った。ウィーズリー氏も、まだ動揺がやまない様子だったが、あとに続いた。
「のう、ミネルバ」ダンブルドアが、マクゴナガル先生に向かって考え深げに話しかけた。
「これは一つ、盛大に祝宴を催す価値があると思うんじゃが。キッチンにそのことを知らせに行ってはくれまいか?」
「わかりました」マクゴナガル先生はキビキビと答え、ドアの方に向かった。
「三人の処置は先生におまかせしてよろしいですね?」
「もちろんじゃ」ダンブルドアが答えた。
Back Top Next
ダンブルドア先生とお話です。