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ポケットからハリーの杖を取り出し、リドルは空中に文字を書いた。 三つの言葉が揺らめきながら淡く光った。

TOM MARVOLO RIDDLE (トム・マールヴォロ・リドル)

もう一振りした。 名前の文字が並び方を変えた。

I AM LORD VOLDEMORT (私はヴォルデモート卿だ)

「わかったね?」 リドルが囁いた。
「この名前はホグワーツ在学中にすでに使っていた。もちろん親しい友人にしか明かしていないが。汚らわしいマグルの父親の姓を、僕がいつまでも使うと思うかい?母方の血筋にサラザール・スリザリンその人の血が流れているこの僕が?汚らわしい、俗なマグルの名前を、僕が生まれる前に、母が魔女だというだけで捨てたヤツの名前を、僕がそのまま使うと思うかい?ハリー、ノーだ。僕は自分の名前を自分でつけた。ある日必ずや、魔法会のすべてが口にすることを恐れる名前を。その日が来ることを僕は知っていた。僕が世界一偉大な魔法使いになるその日が!」
「人を殺すのが世界一偉大な魔法使いだと言うのなら、あなたは頭がどうにかしているわ!」
は耐え切れず、叫んだ。
「多くの人を殺し、多くの人を悲しませ、そして、多くの人の恐怖を駆り立てた。どこが偉大だというの!」
、君には一生分からないだろう、穢れを知らないんだから。ジニーが教えてくれたよ。・ブラック。ブラック家の末裔でありながらもグリフィンドール。その血筋に合う頭の良さ、顔立ち。完全無欠。そして世紀の大魔術をやってのけた。そう、まさしく死んだ人間を生き返らせたことは悪魔の業であろう――確かに、僕は君が魅力的に映っているかもしれない」
は思わず一歩下がった。
に手を出したら許さない。それに、の言うとおりだ。世界一偉大な魔法使いはダンブルドアだ。みんながそういっている。君が在学中は君の事をお見通しだったし、君がどこに隠れていようと、いまだに君はダンブルドアを恐れている」
微笑が消え、リドルの顔が醜悪になった。
「ダンブルドアは僕の記憶に過ぎないものによって追放され、この城からいなくなった!」
リドルは歯を食いしばった。
「ダンブルドアは、君の思っているほど、遠くに行ってないぞ!」 ハリーが言い返した。
リドルは言い返そうと口を開いたが、その顔が凍りついた。 どこからともなく音楽が聞こえてきたのだ。 リドルはクルリと振り返り、がらんとした部屋をずっと奥まで見渡した。 音楽はだんだん大きくなった。 妖しい、背筋がぞくぞくするような、この世のものとも思えない旋律だった。 やがてその旋律が高まり、すぐそばの柱の頂上から炎が燃え上がった。 白鳥ほどの大きさの深紅の鳥が、ドーム型の天井に、その不思議な旋律を響かせながら姿を現した。 孔雀の羽のように長い金色の尾羽を輝かせ、まばゆい金色の爪にボロボロの包みをつかんでいる。 一瞬の後、鳥はハリーとの方にまっすぐに飛んできた。 運んできたボロボロのものをの手に落とし、ハリーの方にずしりと止まった。 鳥は歌うのをやめ、ハリーの頬にじっとその暖かな体を寄せてしっかりとリドルを見据えた。
「不死鳥だな・・・・・」
リドルは鋭い目で鳥をにらみ返した。
「フォークスだわ」
がその綺麗な羽を優しくなでると、鳥は美しい声で一声鳴いた。
「そして、それは――」
リドルがフォークスの落としたぼろに目をやった。
「それは古い『組み分け帽子』だ」
その通りだった。 つぎはぎだらけでほつれた薄汚い帽子は、の手の上でピクリともしなかった。 リドルがまた笑い出した。 その高笑いが暗い部屋にガンガン反響し、まるで十人のリドルが一度に笑っているようだった。
「ダンブルドアが味方に送ってきたのはそんなものか!歌い鳥に古帽子じゃないか!ハリー・ポッターも・ブラックもさぞかし心強いだろう?もう安心だと思うか?」
はリドルを無視すると、帽子についていたほこりを払った。
「さぁ、本題に入ろうか」
リドルはまだ昂然と笑みを浮かべている。
「二回も――君たちの過去に、僕にとっては未来だが――僕たちは出会った。そして二回とも僕は君たちを殺し損ねた。君たちはどうやって生き残った?すべて聞かせてもらおうか」
そしてリドルは静かに付け加えた。
「長く話せば、君はそれだけ長く生きていられることになる」
「でも、ジニーの命の灯火が消えていくのよ」
はリドルをはたとにらみつけた。 ハリーは分かっている、と軽く頷くと唐突に話し始めた。
「君が僕を襲ったとき、どうして君が力を失ったのか、誰にもわからない。僕自身もわからない。でも、なぜ君が僕を殺せなかったのか、僕にはわかる。母が、僕をかばって死んだからだ。母は普通の、マグル生まれの母だ」
ハリーは、怒りを押さえつけるのにワナワナ震えていた。
「君は父さんとの戦いで隙を突いて僕を殺そうとした。しかし、母が僕を殺すのを食い止めたんだ。僕はほんとうの君を見たぞ。去年のことだ。落ちぶれた残骸だ。かろうじて生きている。君の力のなれ果てだ。君は逃げ隠れしている!醜い!汚らわしい!」
リドルの顔が歪んだ。 それから無理やり、ぞっとするような笑顔を取りつくろった。
「そうか。母親が君を救うために死んだ。なるほど。それは呪いに対する強力な反対呪文だ。わかったぞ――結局君自身には特別なものは何もないわけだ。と違って・・・・・実は何かあるのかと思っていたんだ。ハリー・ポッター、何しろ僕たちには不思議に似たところがある。君も気づいていただろう。二人とも混血だ。偉大なるスリザリン様ご自身以来、ホグワーツに入学した生徒の中で蛇語を話せるのは、たった二人だけだろう。見た目もどこか似ている・・・・・。しかし、僕の手から逃れられたのは、結局幸運だったからに過ぎないのか。それだけわかれば十分だ」
はリドルがついに攻撃してくるのかと思い、杖を構えた。 しかし、リドルの歪んだ笑いはまたもや広がった。
「さて、ハリー、。すこし揉んでやろう。サラザール・スリザリンの継承者、ヴォルデモート卿の力と、有名なハリー・ポッターと・ブラック、ダンブルドアがくださった精一杯の武器とを、お手合わせ願おうか」
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二人ともリドルに怒り心頭です。