Nothing なんでもない
最初のテストの三日前、朝食の席で、マクゴナガル先生がまた発表があると言った。
「よい知らせです」
途端にシーンとなるどころか、大広間は蜂の巣を突ついたようになった。
「ダンブルドアが戻ってくるんだ!」
何人かが歓声をあげた。
「スリザリンの継承者を捕まえたんですね!」
レイブンクローの女子学生が、黄色い声をあげた。
「クィディッチの試合が再開されるんだ!」
ウッドが興奮してウオーッという声を出した。 やっとガヤガヤが静まったとき、先生が発表した。
「スプラウト先生のお話では、とうとうマンドレイクが収穫できるとのことです。今夜、石にされた人たちを蘇生させることができるでしょう。言うまでもありませんが、そのうちの誰か一人が、誰に、または何に襲われたのか話してくれるかもしれません。私は、この恐ろしい一年が、犯人逮捕で終りを迎えることができるのではないかと、期待しています」
歓声が爆発した。 その中をジェームズのふくろうが飛んできた。 しかし、ふくろうが持っていたのはが期待していた手紙ではなく、が見つけた太古の生き物についての本と同じ本だった。 はロンと喜びあっているハリーを横目に、ふくろうから本を受け取った。 本の一ページ目にジェームズの字で書かれたメモが貼ってあった。

、ハリーをパシリに使っちゃダメだよ。
この本に詳しく載ってるから頑張って理解してね。 僕の愛しい賢いならきっと理解できるよ。

ジェームズ

は後半の部分はすべて読まなかったことにし、バレたか、と内心焦ったものの、秘密の部屋の怪物を探っていることは気付かれなかったようだ。 それにしても、こんな古い本がどこにあったと言うのだろう。 そのとき、ジニー・ウィーズリーがやってきて、ロンの隣に座った。 緊張して落ち着かない様子だ。 膝の上で手をもじもじさせていた。
「どうした?」
ロンがオートミールのお代わりをしながら聞いた。 ジニーは黙っている。 グリフィンドールのテーブルを端から端まで眺めながら、おびえた表情をしている。
「言っちまえよ」
ロンがジニーを見つめながら促した。
「あたし、言わなければいけないことがあるの」
ジニーがボソボソ言った。
「なんなの?」 ハリーが聞いた。
ジニーはなんと言っていいのか言葉が見つからない様子だ。
「いったいなんだよ?」とロン。
ジニーは口を開いたが、声が出てこない。 はひらめくものがあって、少し前屈みになり、三人だけに聞こえるように言った。
「『秘密の部屋』に関することなの?何か見たの?誰かおかしな素振りをしているの?」
ジニーはに見つめられながら、スーッと深呼吸した。 その瞬間、折悪しく、パーシー・ウィーズリーがげっそり疲れきった顔で現れた。
「ジニー、食べ終ったのなら、僕がその席に座るよ。腹ペコだ。巡回見廻りが、今終ったばかりなんだ」
ジニーは椅子に電流が走ったかのように飛び上がって、パーシーの方をおびえた目でチラッと見るなり、そそくさと立ち去った。 パーシーは腰を下ろし、テーブルの真ん中にあったマグカップをガバッとつかんだ。
「パーシー!」
ロンが怒った。
「ジニーが何か大切なことを話そうとしたとこだったのに!」
紅茶を飲んでいる途中でパーシーはむせこんだ。
「どんなことだった?」
パーシーが咳き込みながら聞いた。
「何かおかしなものを見たのって聞いたら、何か言いかけて――」
パーシーはを遮ってすぐに言った。
「ああ――それ――それは『秘密の部屋』には関係ない」
パーシーはすぐに言った。
「なんでそう言える?」
ロンの眉がつり上がった。
「うん、あ、どうしても知りたいなら、ジニーが、あ、この間、僕とばったり出くわして、そのとき僕が――うん、なんでもない――要するにだ、あの子は僕が何かをするのを見たわけだ。それで、僕が、その、あの子に誰にも言うなって頼んだんだ。あの子は約束を守ると思ったのに。たいしたことじゃないんだ。ほんと。ただ、できれば・・・・・」
パーシーはオロオロして、自分で何を言っているのか分かってない感じだった。
「いったい何をしてたんだ?パーシー」
ロンがニヤニヤした。
「さあ、吐けよ。笑わないから」
パーシーの方はニコリともしなかった。
「ハリー、パンを取ってくれないか。腹ペコだ」
三人はパーシーから離れようと、席を立ってテーブルの端にまた座った。
「ハリー、まず聞くけど、ジェームズになんて送ったの?」
はハリーに一ページ目に書かれたジェームズからのメモを見せた。
が言ったそのままをさ。『授業に出てきたバジリスクについて知りたいんだけど、本がバジリスクのページだけ破れてて調べられない。だから教えて』って書いたよ」
ということは、ハリーが勉強熱心ではないことを知っているのか。 はため息をついて、バジリスクのページを開いた。
「読むわね。『我らが世界を俳徊する多くの怪獣、怪物の中でも、最も珍しく、最も破壊的であるという点で、バジリスクの右に出るものはない。「毒蛇の王」とも呼ばれる。この蛇は巨大に成長することがあり、何百年も生き長らえることがある。鶏の卵から生まれ、ヒキガエルの腹の下で孵化される。殺しの方法は非常に珍しく、毒牙による殺傷とは別に、バジリスクの一にらみは致命的である。その眼からの光線に捕われた者は即死する。蜘蛛が逃げ出すのはバジリスクが来る前触れである。なぜならバジリスクは蜘蛛の宿命の天敵だからである。バジリスクにとって致命的なのは雄鶏が時をつくる声で、唯一それからは逃げ出す』」
の声はだんだん興奮してきていた。
「やっぱりバジリスクであっているわよ!」
が喜喜と言った。
「だって、誰も死んでいないのは直接バジリスクを見ていないからなのよ。コリンはカメラ、ジャスティンは『ほとんど首なしニック』、ニックはきっと光線を浴びたかもしれないけど、もとは死んでるんですもの、二度も死ねないわ。そして、ハーマイオニーとレイブンクロー生は鏡を通してだったのよ。ハーマイオニーはきっとバジリスクだって分かっていたんだわ」
ハリーもロンも一気に巻くし立てるを唖然と見た。
「じゃあ、ミセス・ノリスは?」 ハリーが聞いた。
「水よ、『嘆きのマートル』のトイレの水。確か、あの日は水が溢れでていたと思うわ」
「それじゃあ、ハグリッドの雄鶏が殺されたのは、スリザリンの継承者が殺したんだ。バジリスクにとって命取りだから。それに、学校に蜘蛛がいなくなったのも、バジリスクが怖いから・・・・・」
ハリーもピンッときたようだった。
「でもどうやって移動しているんだい?」 ロンが言った。
「とんでもない大蛇だし・・・・・誰かに見つかりそうな・・・・・」
とハリーは黙りこんでしまった。 どうしてもそこだけがわからなかった。
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ジェームズにはお見通しのようです^^