[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
◆
◆
◆
Fear 恐怖心
「やぁ、シェラー」
トムはにこやかに笑いかけた。
そして、何故か一歩も動けないシェラーのおでこに指をくっつけると、優しく言った。
「君は僕が秘密の部屋の犯人を追放したことを知ったようだね。それに・・・・・」
トムはおでこから指を話すとシェラーの髪を撫でた。
「悩んでる。自分が誰のことを好きなのかわからない、ってわけだろう」
シェラーは得体の知れない恐怖に襲われた。
「怖がらないで」
トムはシェラーの髪をもて遊びながら言った。
「私に触らないで」
シェラーは震えながら言った。
「ほら、言ってるそばから怖がってる」
トムはクスリと笑うと、指をパチンと鳴らした。 すると、不思議なことに今まで動かなかったシェラーの体がヘナヘナと地面に座り込んだ。
「僕は君の味方だ。君が望むならなんでも叶えよう」
シェラーはトムの整った顔をまじまじと見つめた。
「そんなこと不可能に決まってるじゃない」
シェラーの声は震えていなかった。
「僕には出来る」
「あなたを信じていいのか分からない」
シェラーは静かに言った。 二人は無言で見つめあった。
「僕を信じるかは君次第だ。だけど、今、秘密の部屋が開けられているんだろう?僕の言葉を信じた方が良いとは勧めておくよ。――さぁ、もうすぐ目覚める時間だ」
トムはシェラーをジッと見つめると指をパチンと鳴らした。 シェラーは沼地の近くではなく、ちゃんとベッドの上に横になっていた。
「シェラー、おはよう」
ハーマイオニーが隣からにこやかに笑いかけた。
「おはよう」
シェラーにはそう声をかけるだけで精一杯だった。
復活祭の休暇中に、二年生は新しい課題を与えられた。 三年生で選択する科目を決める時期が来たのだ。 少なくともハーマイオニーにとっては、これは非常に深刻な問題だった。
「わたしたちの将来に全面的に影響するかもしれないのよ」
四人で新しい科目のリストに舐めるように目を通し、選択科目にチェックを入れながら、ハーマイオニーが三人に言い聞かせた。
「僕、魔法薬をやめたかったな」 ハリーが憂鬱そうに言った。
「シェラーは何を選択するんだい?」
「私は出来ればみんなが選択する科目が良いなって思ってる」
シェラーが肩をすくめた。
「父さんたちからは手紙とか来てないよね?」
ハリーが恐る恐る問いかけた。
「えぇ、
まだ
来てないわ。いずれ来るわよ、きっと」
そうシェラーが宣言した通り、次の日の朝食時にそれぞれ手紙が届いた。 しかし、シェラーの手紙には選択科目以外のことも書かれていた。
親愛なるシェラー
まず、選択科目のことだが、好きなものを取りなさい。 特に無理いじりはしないから。
本題に入るが、テリーが惚れ薬入りのチョコを食べたのは事実だし、解毒剤を作ったのがスネイプなのも事実だ。
だが、私たちがわざわざ作らなかったわけではない。 当時、ジェームズとリリーは付き合っていて、私は――言い方は悪いが――山ほど来るバレンタイン・カードから逃げていたのだ。 だからテリーが惚れ薬入りのチョコを食べたことなど知るよしもなかった。 今思えば迂濶だったが、テリーは賢かったので一人にしても大丈夫だと思ったのだ。
また何かあったら知らせてくれ。
シリウス
シェラーは少し気が楽になった。
「シェラー、君はどの科目を選択するんだい?」
突然ハリーが聞いてきた。
「え、決まってないけど・・・・・
まさか
、ジェームズが私と同じ科目をとれって言ったんじゃないでしょうね?」
その「まさか」は正解だった。
「そうだよ。おまけにとらなきゃ一生後悔するって書いてある」
シェラーは頭を抱えこんだ。 しかし、そう言いながらもハリーもロンもシェラーも三人揃って同じ科目を選択した。
もうすぐクィディッチの試合が行われる。 グリフィンドールの次の対戦相手はハッフルパフだった。 試合の前日、シェラーとハーマイオニーが二人で話していると、ハリーが血相をかえてロンと一緒に来た。
「どうしたの?」
シェラーが不思議そうに二人を見た。
「僕の荷物が荒らされて、リドルの日記がなくなってるんだ」 ハリーが言った。
「でも、――グリフィンドール生しか盗めないはずでしょ――他の人は誰もここの合言葉を知らないんだもの・・・・・」
「そうだよ」 ロンが呟いた。
翌朝、目を覚ますと、太陽がキラキラと輝き、さわやかなそよ風が吹いていた。 朝食を食べた後、シェラーはロンとハーマイオニーと一緒にハリーの箒を取りに戻る用事に付き合った。 そして、シェラーが大理石の階段をのぼろうとした瞬間、ハリーが叫び声をあげた。 シェラーはびっくりしてハーマイオニーの腕にしがみついた。
「あの声だ!」
ハリーが振り返った。
「また聞こえた――君たちは?」
ロンが目を見開いたまま首を横に振った。 シェラーもロンと同じく首を振ったが、ハーマイオニーはハッとしたように額に手を当てて言った。
「ハリー――わたし、たった今、思い付いたことがあるの!図書館に行かなくちゃ!」
そして、ハーマイオニーは風のように階段を駆け上がって行った。
「一体、何を思い付いたのかしら」
シェラーが言った。
「計り知れないね」
ロンが首を振り振り言った。
「だけど、どうして図書館なんかに行かなくちゃならないんだろう?」とハリー。
「ハーマイオニー流のやり方だよ」
ロンが肩をすくめて、しょうがないだろ、という仕草をした。
「何はともあれ、まず図書館ってわけさ」
シェラーはロンに反論しようかと思ったが、時計を見て思い直した。
「もう行った方がいいわ」
シェラーがまた声を聞こうとしているハリーに声をかけた。
「もうすぐ十一時になる――試合よ」
ハリーは急いで階段を駆け上がって行った。 シェラーはロンと一緒に観客席に向かった。 しかし、試合が始まることはなかった。 マクゴナガル先生が巨大な紫色のメガフォンを手に持って、グラウンドのむこうから行進歩調で腕を大きく振りながら、半ば走るようにやってきた。
「この試合は中止です」
先生は満員のスタジアムに向かってメガフォンでアナウンスした。
「全生徒はそれぞれの寮の談話室に戻りなさい。そこで寮監から詳しい話があります。みなさん、出来るだけ急いで!ポッター、ブラックは私のところへいらっしゃい」
シェラーはロンと一緒に観客席から移動していたが、自分の名前が呼ばれたので周りの目が突き刺さるのを感じた。
「でも、今回ばかりはシェラーを疑えるわけないじゃないか。みんなと一緒に観客席にいたんだから。僕もマクゴナガルに抗議する」
ロンは試合が中止になったせいでとても怒っていた。 グラウンドに行くとハリーとマクゴナガル先生が一緒にいた。 ロンが抗議する前に、先生が言った。
「ブラック、私と一緒にいらっしゃい」
驚いたことに、マクゴナガル先生はロンが一緒でも反対しなかった。
「そう、ウィーズリー、あなたも一緒に来た方がよいでしょう」
ロンは抗議するのも忘れてハリーとシェラーと一緒にただ先生についていくだけだった。
←
Back
Top
Next
→
トムに再会してまた一段と恐怖が湧いたようです;;