「お帰り!」
がホームに降り立つと、ジェームズがいきなり抱きついてきた。
「重いよ、ジェームズ!」
はシリウスの手によってジェームズから助け出された。
「ただいま!」
ジェームズは自分には抱きつかなかったくせに、シリウスには抱きつくを見て、シリウスに嫉妬した。
「リリーとママは家?」
「リリーは仕事では外出中。昨日から出かけてるんだ」
ジェームズがシリウスからをもぎ取ろうとあがいていた。
「なんで?仕事でもないのに?」
はシリウスの腕の中で、彼を見上げた。
「さぁな。良く知らないんだ。でも、明日には帰ってくるさ、昨日、ふくろう便が届いた――ジェームズ、『付き添い姿くらまし』するか?」
「君に任せるよ」
ジェームズはそう言いながらも、の荷物を既に手に持っていた。
夕方、リリーが帰ってきた。
「お帰りなさい、」
リリーはを抱きしめた。
「ただいま、リリー」
「秘密の部屋のことで、学校はずいぶん大変なようね」
リリーは心配そうだ。
「うん、でも大丈夫よ。みんな石になっているだけだし・・・・・」
「そうじゃなくて、リリーが言いたいのは君たちのことさ。ずいぶん周りから叩かれているだろ?」
ジェームズが口を挟んだ。
「あぁ!それなら大丈夫よ。あんまり気にしてない。そのうち騒ぎを起こすかもしれないけど、けが人が出ないように頑張るわ」
シリウスもジェームズもそれを聞いて苦笑した。
いつの間にかリリーはいなくなっていて、今のの発言を聞かれずに済んだことは幸いであった。
「でも、ハリーの方は大変だわ。彼、パーセルマウスだったの。蛇と話が出来るから、みんながスリザリンの曾々々々々々孫とか、闇の魔法使いとか、秘密の部屋の継承者だとか言ってるわ。最近はずーっと大っぴらに言われてる。可哀想よ」
は顔をしかめてみせた。
「はそういうことは言われてないのかい?」
ジェームズが聞いた。
「言われているかもしれないけど、マルフォイがどうやら裏で手を回している感じだわ。あの人、遠い親戚にあたるからって恩着せがましく追っかけてくるのよ?信じらんない!」
がうんざりした口調でそう言った。
その隣でシリウスが心配そうに我が娘を見ていた。
「あまり関わるな」
一言そう言って、シリウスは何故か押し黙った。
は不思議にシリウスを見て、ジェームズを見た。
ジェームズは肩をすくめた。
「リリーの手伝いをしてくれるかい?夕食を作っているだろうから」
はコクりと頷いてキッチンに向かった。
既に普段着に着替終ったリリーが夕食の準備をしていた。
「あら、。どうしたの?」
「ジェームズがリリーの手伝いをしてくれないかって」
の答えを聞きながらリリーは杖を振った。
すると、鍋に火がつき、中の水がお湯に変わって沸騰し始めた。
「帰ってきた初日に手伝いをさせるわけないでしょう?良いわ、私が後でジェームズに怒っておくから、は自分の部屋の荷物でも片付けなさい。どうせまだ終わっていないんでしょう?」
リリーは苦笑しながらそう言うとキッチンからを追い払った。
は仕方がないので自分の部屋の荷物を片付けることにした。
部屋は九月に出ていったままの状態だった。
母親が揃えたのか、服が何着か増えていた。
ベッドの脇にあるテディベアは相変わらずに微笑みかけている。
は一度部屋のドアまで下がり、ドアを閉め、そこから勢いをつけてベッドにダイブした。
ベッドが一度沈んでまた元に戻った。
前と変わらず自分のベッドだ。
ホグワーツのベッドは柔らかいが、やはり自分の家のベッドには安心感があった。
はテディベアを手にとると、急に抱き締めた。
久々の感触だった。
「ポリジュース薬、今頃完成しているかしら」
はぼそりとそう言うとベッドにそのまま体を預けた。
思わず大きな欠伸がでた。
そのまま数十分たっただろうか、はいつの間にか寝ていたらしい。
薄目を開けると、ベッドにジェームズが腰かけていた。
「おはよう」
は寝惚け眼でジェームズを見た。
ジェームズはクスクス笑っている。
「夕食を食べないでそのまま寝るかい?」
「食べる」
「それにしては眠そうだね」
ジェームズはの顔にかかっていた髪の毛を払った。
「毛布・・・・・」
「うん、風邪ひいたら悲しいから掛けてあげたよ」
ジェームズはをじっと見た。
「君が思っているより、シリウスも僕も心配しているんだよ?」
「マルフォイのこと?」
はマルフォイの名前を口に出した途端、覚醒した。
「それもそうだけど、また危険なことに首を突っ込んでいそうだから」
「突っ込んでない」
は即答した。
「そうだと良いけど」
「信用してないでしょ?」
「だって君は前科がありすぎるでしょ?」
のふくれっつらを見て、ジェームズは大笑いした。
「休暇前にダンブルドア先生に呼び出されたわ」
「知ってる。君の友人とニックが石になったのを発見したんだろう?」
うん、とは頷いた。
「そのときに、先生がパパとジェームズからいろいろ勉強してきなさいって言ってた。それにあの手紙。一体、どうなってるの?」
「、秘密の部屋は昔、開かれたことがあるんだ」
ドアからシリウスが入ってきた。
「そしてそのとき、女の子が一人死んだ」
「死んだ?」
シリウスが重々しく頷いた。
「詳しくは、私も知らないんだ、。だが、秘密の部屋は闇の魔術を持って初めて開くことができる。危険に備えすぎるということはない。それに、ヴォルデモートが死んだという証拠はない・・・・・いつ戻ってくるか・・・・・だから、お前だけにはいろいろと教えておきたい」
「でも・・・・・ハリーは?」
は何か、不安そうにシリウスとジェームズを見比べた。
「ハリーには既に肩に重荷がかかっている。これ以上、悩ませる種を増やしたくないんだ。それに、。君は素晴らしい術が使える。これを悪用されてしまっては困るんだ」
「私、闇の魔法使いなんかにならないわ!」
がジェームズに怒った。
「あぁ、わかってるよ」
ジェームズは静かに笑った。
「そうじゃなくて、ヴォルデモートは『許されざる呪文』を使えるんだ。その中の一つに『服従の呪文』というのがある。術をかけられた者は本人の意志とは無関係に、あたかも本人の意志でそうしているかのように動かされてしまうという。それに対抗するには実際に君にかけなければいけないけど、名前の通り、人にかけることは禁じられている。だけど、他の呪文は別だ。もし、君に学ぶ決心があるのなら、たくさんのことを教えたい」
思わず、はジェームズから視線をそらした。
「もし、断ったら?」
「今まで通り、変わらずだ。」
シリウスが言った。
「もし、承諾したら?」
「クリスマス休暇は私たちのどちらかの手が空く限り、いろんなことを教えよう。学校に帰ってからは普段どおり過ごして構わない。しかし、誰にも言ってはいけない。ハリーにもだ」
はじっとシリウスを見つめた。
「私――」
は決心を固めた。
「やるわ!」
家に無事に帰宅しました!!