「襲われた!またまた襲われた!!生きてても死んでても危ないぞ!命からがら逃げろ!おーそーわーれーたー!」
ピーブズのその大声の所為で、近くの教室から一気に人が集まってきた。
大混乱の状況の中で、マクゴナガル先生やフリットウィック先生、シニストラ先生が現れた。
マクゴナガル先生はバーンと大きな音を出し、静かになったところで、みんな自分の教室に戻るように命令した。
なんとか騒ぎが収まりかけたちょうどそのとき、ハッフルパフのアーニーが息せき切ってやってきた。
「現行犯だ!!」
「おやめなさい、マクラミン」
マクゴナガル先生が厳しくたしなめた。
しかし、の我慢はもう保たなかった。
音もなく杖を構え、アーニーをにらみつけた。
「おやめなさい、ブラック」
しかし、が呪文を唱える前に、マクゴナガル先生はの杖腕を押さえた。
それでもはずっとアーニーをにらんだままだ。
マクゴナガル先生は呆れたようにの耳元で大声を出した。
「ブラック!もしこの場で魔法を使えば厳しく罰しますよ!」
は仕方なしそうにアーニーに背を向けた。
ジャスティンは、フリットウィック先生とシニストラ先生が医務室に運んだ。
しかし、「ほとんど首なしニック」をどうしたものか、誰も思い付かない。
結局、マクゴナガル先生が空気で大きなうちわを作り上げて、それをアーニーに持たせ、「ほとんど首なしニック」を階段の一番上まであおり上げるように言いつけた。
あとに残ったのはマクゴナガル先生とハリーとだけだった。
「おいでなさい」
「先生、誓って言います。僕達、何もやってません」
ハリーは即座に言った。
「ポッター、私の手に負えないことです」
マクゴナガルはそっけない。
3人は、押し黙ったまましばらく歩いた。
角を曲がると、先生は大きなガーゴイル像の前で止まった。
「レモン・キャンデー!」
先生が言った。
その言葉は合言葉だったらしく、ガーゴイルが突然生きた本物になり、その場を飛んで脇に寄った。
その背後にあった壁がわれ、そこから螺旋階段が現れた。
階段は滑らかに上の方へと動いている。
一番上まで上り、マクゴナガル先生がドアをノックする。
扉は、音も無く開いた。
しかし、部屋の中に主人の姿は無く、マクゴナガル先生は二人を置いてどこかへ行ってしまった。
ハリーはあたりを見回した。
しかし、の目は一点に釘付けだった。
扉の裏側には、金色の止まり木があり、そこには羽を半分以上失ったよぼよぼの鳥がいた。
目はどんよりとし、が見ている間にもまた尾羽が二、三本抜け落ちた。
そして鳥が、突然炎に包まれた。
いつの間にかハリーも見ていたようで、叫び声をあげた。
しかし、は驚いてはいなかった。
校長室のドアが開き、ダンブルドアが陰鬱な顔をして現れた。
「先生―――先生の鳥が――僕、何も出来なくて―――急に火がついたんです」
ダンブルドアは微笑んだ。
「そろそろだったのじゃ。アレはこのごろ惨めな様子だったのでな、早くすましてしまうようにと何度も言い聞かせておったのじゃ」
ダンブルドアの言葉を聴いても、ハリーがぽかんとしているので、ダンブルドアがクスクス笑った。
「ハリー、この鳥は不死鳥よ」
が小声で言った。
「不死鳥?」
ハリーが首をかしげた。
「そう、フォークスは不死鳥じゃよ。死ぬときが来ると炎となって燃え上がる。そして灰の中から蘇るのじゃ。見ててごらん・・・・・」
2人が見下ろすと、灰の中から雛が頭を突き出していた。
「あれはいつもは実に美しい鳥なんじゃ。羽は見事な赤と金色でな。うっとりするような生き物じゃよ。驚くほどの重い荷を運び、涙には癒しの力があり、ペットとしては忠実なことこの上ない」
ダンブルドアが、明るいブルーの目をハリーたちにむけ、次の言葉を出す前に、扉が勢いよく開いた。
ハグリッドが目を血走らせ、手には鶏の死骸をぶら下げたまま入ってきたのだ。
「ハリー達じゃねぇです、ダンブルドア先生。俺はハリーたちと話してたです。あの子が発見されるほんの数秒前のこってす。先生様、ハリーたちにはそんな時間はねえです・・・・・」
ダンブルドアは何か言おうとしたが、ハグリッドが喚き続けていた。
興奮して鶏を振り回すので、そこら中に羽が飛び散った。
「・・・・・この二人のはずがねえです。俺は魔法省の前で証言したってようがす・・・・・」
「ハグリッド、わしは――」
「・・・・・先生さま、まちがってなさる。俺は知っとるです。二人は絶対そんな――」
「ハグリッド!」
ダンブルドアは大きな声で言った。
「わしはハリーがみんなを襲ったとは考えておらんよ」
「ヘッ」
手に持った鶏がぐにゃりと垂れ下がった。
「へい。俺は外で待ってますだ。校長先生」
そして、ハグリッドは決まり悪そうにドシドシと出ていった。
「先生、僕達じゃないと、お考えなのですか?」
ハリーが祈るように繰り返した。
ダンブルドアは机の上に散らばった、鶏の羽を払いのけていた。
「そうじゃよ、ハリー」
ダンブルドアはそう言いながらも、また陰鬱な顔をした。
「しかし、君達には話したいことがあるのじゃ。」
ダンブルドアは長い指の先を合わせ、何事か考えながら二人をじっと見ていた。
は落ち着かない気持ちでじっと待った。
「ハリー、まず、君に聞こう。どんなことでもよい、わしに何か言いたいことはないかの?」
しばらくしたあと、ハリーが答えた。
「いいえ先生、何もありません」
「そうか。よろしい。次の授業に出ると良い」
ダンブルドアはハリーのために部屋のドアを開けた。
ハリーはチラリとを見て、階段を降りていった。
「先生、あの・・・・・」
部屋のドアが閉まり、ダンブルドアが椅子に座ってを見た。
は何か言わなければと、口を開いたが、ダンブルドアに制された。
「、君のご両親から今学期に入り手紙がいったと思うが、その手紙に従うのなら、休暇は家に帰るはずじゃの」
は頷いた。
「よろしい。よくお聞き。君の父上と彼の親友は学生時代、良く出来た生徒であった。そして、今に至るまで、とても多くの経験を積んできた。その二人から休暇中に出来るだけ多くの物事を学ぶのじゃ。いつかきっと役に立つ」
ダンブルドアはそこまで言うと茶化したように言った。
「まぁ、そもそも上級生をもう少し敬う心を備え付ける方が先かもしれんがの」
は赤くなっが、ダンブルドアが責めているようではなかったので安心した。
さぁ、クリスマス休暇に突入です!