Snake charmer 蛇遣い
ステューピファイ!麻痺せよ!
フリントがそう叫んだと同時に、は盾の呪文を唱えていた。 フリントは見事に吹っ飛び、後ろにいたマルフォイに激突し、マルフォイはフリントの下敷にされた。 しかし、何がおかしいのか、マルフォイは笑っている。
「武器を取りあげるだけだと言ったのに!」
ロックハートが慌てて、戦闘まっただ中の生徒の頭越しに叫んだ。 はマルフォイが「くすぐりの術」にかかっていることを理解した。 フリントはの気がそれている間にもう一度魔法をかけようとしたが、はお見通しで、見事、「妨害の呪文」にかかった。 その間にもハリーとマルフォイの組みは戦いが進行していて、いつの間にかハリーはクイック・ステップを踏んでいた。
「やめなさい!ストップ!」
ロックハートは叫んだがスネイプはもっと良く通る低い声でに言った。
「ブラック、二人を止めるのだ」
はスネイプの言いなりにはなりたくなかったが、ハリーが可哀想なので仕方なく「フィニート・インカンターテム!呪文よ、終われ!」と叫んだ。
緑がかった煙が、あたり中に霧のように漂っていた。 ネビルもジャスティンも、ハーハー言いながら床に横たわり、ロンは蒼白な顔をしたシェーマスを抱きかかえ、ハーマイオニーとブルストロードはまだ動いていた。 ブルストロードがハーマイオニーにヘッドロックをかけ、ハーマイオニーは痛みでヒーヒーわめいていた。 二人の杖は床に打ち捨てられたままだった。 は図体の大きいブルストロードのアタックを「妨害の呪文」をかけてハーマイオニーを救った。
「なんと、なんと」
ロックハートは生徒の群れの中をすばやく動きながら、決闘の結末を見て回った。
「マクミラン、立ち上がって・・・・・。気を付けてゆっくり・・・・・、ミス・フォーセット。しっかり押さえていなさい。鼻血はすぐ止まるから。ブート・・・・・」
「良い気味」
は自分の足元で倒れているマルフォイとフリントを眺めた。
「さて、誰か進んでモデルになる組はありますか?――ロングボトムとフィンチ-フレッチリー、どうですか?」
「ロックハート先生、それはまずい」
性悪な大コウモリを思わせるスネイプが、サーッと進みでた。
「ロングボトムは、簡単極まりない呪文でさえ参事を引き起こす。フィンチ-フレッチリーの残骸を、マッチ箱に入れて医務室に運び込むのがオチでしょうな」
ネビルのピンク色の丸顔がますますピンクになった。
「マルフォイとポッターはどうかね?」
スネイプは口元を歪めて笑った。
「それは名案!」
ロックハートは、ハリーとマルフォイに大広間の真ん中に来るよう手招きした。 他の生徒たちは下がって二人のために空間を空けた。
「スネイプはマルフォイに入れ知恵してハリーに恥をかかせるつもりだわ」
はロンに囁いた。
「ハリーが無事に帰って来れるといいけど」
ロンもどこか不安そうだ。 しかし、ハーマイオニーだけは平気な顔で言った。
「あら、ハリーにはロックハート先生がついていて下さるのだから大丈夫よ」
ロンとは顔を見合わせて溜め息をついた。
「一――二――三――それ!」と号令がかかった。
マルフォイはすばやく杖を振り上げ、「サーペンリーティア!ヘビ出よ!」と大声で怒鳴った。 マルフォイの杖の先が炸裂し、その先から、長い黒ヘビがニョロニョロと出てきた。
「動くな、ポッター」
スネイプが悠々と言った。 ハリーが身動きもできず、怒ったヘビと、目を見合わせて立ちすくんでいる光景を、スネイプが楽しんでいるのがはっきりわかる。
「我輩が追い払ってやろう・・・・・」
「私にお任せあれ!」 ロックハートが叫んだ。
ヘビに向かって杖を振り回すと、バーンと大きな音がして、ヘビは消えるどころか二、三メートル宙を飛び、ビシャッと大きな音をたててまた床に落ちてきた。 挑発され、怒り狂ってシューシューと、ヘビはジャスティン・フィンチ-フレッチリーめがけて滑り寄り、再び鎌首をもたげ、牙を向き出して攻撃の構えを取った。 そして、突然ハリーが前に進みでて何かを叫んだ。 すると不思議なことに、ヘビは、まるで庭の水撒き用の太いホースのように大人しくなり、床に平たく丸まり、従順にハリーを見上げた。
「ロン、ハーマイオニー!」
は小声で二人を呼んだ。 二人とも動揺していたようだったが、がハリーに向かって走り出すと、後ろからついてきてくれた。
「ハリー」
はハリーの袖を引っ張った。
「ハリー、来て――一緒に・・・・・行きましょ」
はハリーをホールの外へと連れだした。 ロンもハーマイオニーも急いでついてきた。 四人がドアを通り抜けるとき、人垣が割れ、両側にサッと引いた。 まるで病気でも移されるのが怖いとでもいうかのようだった。 人気のないグリフィンドールの談話室までハリーを延々引っ張ってきて、四人は向かい合わせに座った。
「ハリー、あなた、パーセルマウスよ!気付かなかったの?」
「知らなかった。だって、今までヘビとご対面したことがなかったんだから」
の責めるような言い方にハリーは少しムッとしたように言った。
「ハリーもも少し落ち着いて。今はハリーの立場がまずいんだから」
ハーマイオニーがハリーとの間に割って入ってきた。
「そうね・・・・・」
するとはさっきのイライラが嘘のように、疲れた様子で言った。
「どうして?サラザール・スリザリンがヘビと話が出来ることで有名だったから?」
「ハリー、今度は学校中が君のことを、スリザリンの曾々々々孫だとかなんとか言い出すだろうな・・・・・」
ロンはハリーの質問には答えずに独り言のように言った。
「だけど、僕は違う」
ハリーは言いようのない恐怖に駆られた。
「それは証明しにくいことね」
ハーマイオニーが言った。
「スリザリンは千年ほど前に生きていたんだから、あなただという可能性もありうるのよ」
「僕、もう寝る」
ハリーはそれだけ言うと寝室に上がって行った。
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ハリー、とってもショック状態です。