Genius 天才
それから一週間後掲示板の前に人だかりが出来ていて、張り出されたばかりの羊皮紙を読んでいた。 シェーマスとディーンが、興奮した顔で四人を手招きした。
「『決闘クラブ』をはじめるんだって!」
シェーマスが言った。
「今夜が第一日目だ。決闘の練習なら悪くないな。近々役に立つかも・・・・・」
「え?君、スリザリンの怪物が、決闘なんかできると思ってるの?」
そういいながらも、ロンも興味心身で掲示を読んだ。
「役に立つかもね」
四人で夕食に向かう途中、ロンがハリーととハーマイオニーに言った。
「僕たちも行こうか?」
ハリーももハーマイオニーも大乗り気で、その晩八時に四人は再び大広間へと急いだ。
食事用の長いテーブルは取り払われ、一方の壁に沿って金色の舞台が出現していた。 何千本もの蝋燭が上を漂い、舞台を照らしている。 天井は何度も見慣れたビロードのような黒で、その下にはおのおの杖を持ち、興奮した面持ちで、ほとんど学校中の生徒が集まっているようだった。
「いったい、誰が教えるのかしら?」
ペチャクチャおしゃべりな生徒たちの群れの中に割り込みながらハーマイオニーが言った。
「誰かが言ってたけど、フリットウィック先生って、若いとき、決闘チャンピオンだったんですって。たぶん彼だわ」
そのとき、女子生徒の歓声と、その他の生徒のうめき声が入り交じった声が広間に響く中、深紫の鮮やかなローブを身に纏ったギルデロイ・ロックハートが現れた。 そして、おまけとしてロックハートの背後には、恐ろしいことに、いつもの黒装束に黒マントをたなびかせたスネイプが立っていた。 ロックハートが観衆に応えるように手を振り、白い歯をあますところなく見せびらかすと、大広間のざわめきが静まった。
「みなさん、集まって!さあ、私がよく見えますか?私の声が聞こえますか?それでは助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」
ロックハートは満面の笑みを振りまいた。
「スネイプ先生がおっしゃるには、決闘についてごくわずかにご存知らしい。訓練を始めるのにあたり、手伝ってくださるというご了承をいただきました」
「相打ちで、両方やられちまえばいいと思わないか?」
ロンがこっそり言った。
「スネイプがロックハートにやられるとは思えないけど・・・・・」 は肩をすくめた。
ロックハートとスネイプは向き合って一礼した。 少なくともロックハートの方は、腕を振り上げ、くねくね回しながら体の前に持ってきて、大げさな礼をした。 スネイプは不機嫌にぐいと頭を下げただけだった。 それから二人とも杖を剣のように前に突き出して構えた。
「ご覧のように、私たちは作法に従って杖を構えています。三つ数えて、最初の術をかけます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません」
「僕にはそう思えないけど」
スネイプが歯をむき出しにしているのを見て、ハリーが呟いた。
「私もそう思う」
もぼそりと言った。
「一――二――三――」
二人とも杖を肩より高く振り上げた。 スネイプが叫んだ。
エクスペリアームズ!武器よ去れ!
目もくらむような紅の閃光が走ったかと思うと、ロックハートは舞台から吹っ飛び、後ろ向きに宙を飛んでゆっくりと地面に仰向けに倒れた。 そのとたん、マルフォイや数人のスリザリン生が歓声をあげ、多くの女子生徒は心配そうな声を上げた。 そして、スネイプはというと、すごい形相でハリーとロンとの方を見た。
「おいおい、僕たち何もしていないぜ?」
ロンがあせったように、ハリーとに言った。
「ごめんね、私がしたの。スネイプの呪文の効き目を弱くしたのよ。気づかなかったでしょう?」
はスネイプなどそ知らぬ顔で言った。
「どういうこと?」
ハリーとロンは興味津々で聞いた。 ロックハートは無残な姿で立ち上がり、生徒たちに向かって演説を始めていた。
「武装解除は見たとおり、相手から武器を取り上げて、攻撃する術なの。残念ながら、今の私には術のすべてを無効には出来ないけど、今みたいに、衝撃なら抑えられるようになったわ。だから、ロックハートはゆっくり地面に倒れたの。もし、まともに受けていたのなら、壁に激突して医務室行きでしょうね」
はもうスネイプがこちらを見ていないのを確認して言った。
「君って天才だ!すごいや!そんなことが出来るなんて」
ロンの褒め言葉に、は微笑んだだけだった。
「さぁ、模範演技はこれで十分!これからみなさんのところへ下りていって、二人ずつ組にします。スネイプ先生、お手伝い願えますか・・・・・」
二人は生徒の群れに入り、二人ずつ組ませた。 スネイプは最初にハリーとロンととハーマイオニーのところに来た。
「どうやら、名コンビもお別れのときがきたようだな」
スネイプが薄笑いを浮かべた。
「ウィーズリー、君はフィネガンと組みたまえ。ポッターは――」
ハリーは思わず、の方に寄って行った。
「そうはいかん。ブラックはもっと力の強いやつでなければ満足しない。そうであろう?」
スネイプは冷笑した。 先ほどの武装解除の術を邪魔したのが許せないらしい。
「マルフォイ君、来たまえ。かの有名なポッターを、君がどう捌くのか拝見しよう。フリント君、ブラックと組みたまえ。女だからと言って甘く見ない方が良い・・・・・手加減はなしだ。それに、君、ミス・グレンジャー――君はミス・ブルストロードと組みたまえ」
フリントはスリザリン寮のクィディッチチームのキャプテンだった。
「また会ったな。この間はナメクジをありがとう」
「そんなお礼を言われることなんてしていないわ」
二人からは見えない火花が飛んだ。
「写真で見るより良い女だな」
「あなたは写真で見る方がまだ良い男に見えるんじゃない?」
は不敵に笑った。
「相手と向き合って!そして礼!」
壇上に戻ったロックハートが号令をかけた。
「杖を構えて!」
ロックハートが声を張り上げた。
「私が三つ数えたら、相手の武器を取りあげる術をかけなさい――武器を取りあげるだけですよ――みなさんが事故を起こすのは嫌ですからね。一――二――三――」
Back Top Next
スネイプ先生、なんか大人気ないですよ。