日曜の朝、
ロン、、ハーマイオニーの3人は朝食をとり、ハリーのお見舞いに医務室に行こうとしていた。
大広間を出た時、マクゴナガル先生とフリットウィック先生が ひそひそ声で何か深刻そうに話しているのを見て、3人は眉をひそめて、じっと聞き耳を立てた。
「昨夜・・・・・コリン・クリービーが、何者かに襲われたのです」
「なんと・・・・・!もしかして、何者かというのは・・・・・」
「ええ、そうです。ミセス・ノリスに続いて、今度はついに生徒が犠牲に・・・・・」
「それで、どういった状態なのです・・・・・?」
「死んではいません。石になっている状態なのです」
3人はそれを聞いて、すぐさまポリジュース薬の製作にかかろうと マートルのトイレへ行った。
ついに生徒の犠牲者が出た。
ロンはこれで、スリザリンの継承者が誰かということについて 自身満々に言った。
「これで決定だよ。マルフォイに違いない。昨日の試合で気分が最低になったんで、腹いせにコリンをやったんだよ」
まだ腑に落ちない所はあったが、そうこうしているうちに ハリーがマートルのトイレへやって来た。
「君に面会に行くべきだったんだけど、先にポリジュース薬に取り掛かろうって決めたんだ」
ハリーがぎゅうぎゅう詰めのトイレの小部屋の内鍵をなんとか掛けなおしたとき、ロンが説明した。
「ここが薬を隠すのに一番安全だと思って」
ハリーはコリンのことを三人に話し始めたが、ハーマイオニーに遮られた。
「昨日コリンが医務室に運ばれてきたんだよ!」
「ええ。知ってるわ。今朝、マクゴナガル先生がフリットウィック先生に話してるところを聞いちゃったの。それで、すぐにこれを始めようって」
ハーマイオニーが落ち着いて言うと、ポリジュース薬の具合を確かめ、さじでかき回した。
ハリーが続けて言った。
「それだけじゃないんだ」
ハーマイオニーがニワヤナギの束をちぎっては、煎じ薬の中に投げ入れているのを眺めながら、ハリーが言った。
「夜中にドビーが僕のところに来たんだ」
「ドビー?ドビーってあの・・・・・」
の目が光った。
「そうさ。屋敷しもべ妖精のドビーさ。それで言ってたんだけど。新学期の日に僕とロンを汽車に乗れなくしたのも、昨日ブラッジャーに細工したのもドビーだったんだ。学校には闇の罠が仕掛けられているから、僕とを家に送り返すためにとかなんとか言って」
「何があっても家には帰らないわよ」
は思わずハリーを睨み付けた。
「僕も同意見だよ。それで、話を戻すけど、秘密の部屋の事も何か知ってるみたいだったんだ。秘密の部屋が再び開かれたって言ってたから、きっと前にも開かれたことがあるんだよ」
「『秘密の部屋』は以前にも開けられたことがあるの?」
ハーマイオニーが聞いた。
「これで決まったな」
ロンが意気揚々と言った。
「ルシウス・マルフォイが学生だった時に部屋を開けたんだよ!それで今度は我らが親愛なるドラコに開け方を教えたんだ。でもわかんないな。秘密の部屋の怪物が学校をうろうろしてるなら、誰も気づかないわけないだろう?」
「それ、きっと透明になれるのよ。それか、何かに変装してるのかも。『カメレオンお化け』の話、よんだことあるわ」
ヒルをつつきながら、ハーマイオニーが言った。
「ハーマイオニー、君、本の読みすぎだよ」
ロンが死んだヒルの上からクサカゲロウを、袋ごと鍋にあけながら言った。
空になった袋をくしゃくしゃに丸めながら、ロンはハリーとを振り返った。
「それじゃあ、ドビーが僕たちの邪魔をして汽車に乗れなくしたり、君の腕をへし折ったりしたのか・・・・・」
ロンは困ったもんんだ、というふうに首を振りながら言った。
「ねぇ、わかるかい?ドビーが君たちの命を救おうとするのをやめないと、結局、君たちを死なせてしまうよ」
コリン・クリービーが襲われ、今は死んだように横たわっているというニュースは、月曜日の朝には学校中に広まっていた。
疑心暗鬼が黒雲のように広がっていった。
一年生は固まってグループで城の中を移動するようになり、一人で勝手に動くと襲われると怖がっているようだった。
やがて、先生に隠れて、魔よけ、お守りなど護身用グッズの取引が、校内で爆発的にはやりだした。
十二月の第二週目に、例年のとおり、マクゴナガル先生がクリスマス休暇中、学校に残る生徒の名前を調べにきた。
はこのときやっと、自分が学校に残れないことを思い出した。
「ママが体調を崩したみたいで心配なの・・・・・昨日知らされたばっかで言う時間がなかったのよ」
はハリーたちに、我ながら苦しい言い訳だと思いながらも、そう説明した。
しかし、三人は疑うこともなく、すんなりと信じてくれた。
おまけに、の分まで頑張るのだと、張り切っていた。
だが、煎じ薬はまだ半分しか出来上がっていなかった。
あと必要なのは、二角獣の角と毒ツルヘビの皮だった。
それを手に入れることができるのはただ一ヶ所、スネイプの個人の薬棚しかない。
「必要なのは――」
木曜日の午後のスリザリンと合同の魔法薬の授業が、だんだん近づいてきたとき、ハーマイオニーがきびきびと言った。
「気をそらすことよ。そしてわたしたちのうち誰か一人がスネイプの研究室に忍び込み、必要なものをいただくの」
ハリーとロンとは不安げにハーマイオニーを見た。
「私が実行犯になるのが良いと思うの」
ハーマイオニーは平然と続けた。
「あなたたち二人は、今度事を起こしたら退校処分でしょ。それに、は機転が利くから、何かあったときに対処して欲しいし。で、私は前科がない。だから、あなたたちはひと騒ぎ起こして、ほんの五分くらいスネイプを足止めしておいてくれればそれでいいの」
ハリーとロンとは力なく笑った。
魔法薬のクラスは大地下牢の一つで行われた。
木曜の午後の授業は、いつもと変わらず進行した。
大鍋が二十個、机と机の間で湯気を立て、机の上には真鍮の秤と、材料の入った広口のビンがおいてある。
はちらりとハリーを見て、ハーマイオニーを見た。
作戦は実行された。
ハリーが投げたフレッドの「フィリバスターの長々花火」はゴイルの大鍋にポトリと落ちた。
ゴイルの薬が爆発し、クラス中に雨のように降り注いだ。
「ふくれ薬」の飛沫がかかった生徒は、悲鳴を上げた。
その騒ぎの中、ハーマイオニーがこっそり教室を出て行くのを目の端でしっかり捕らえた。
「静まれ!静まらんか!」
スネイプが怒鳴った。
「薬を浴びたものは『ぺしゃんこ薬』をやるからここへ来い。誰の仕業か判明した暁には・・・・・」
マイフォイが急いで進み出た。
鼻が小さいメロンほどに膨れ、その重みで頭を垂れているのを見て、はぼそりとつぶやいた。
「いい気味よ」
他にもたくさんの被害者がスネイプの前に並ぶ中、ハーマイオニーがするりと地下牢教室に戻ってきたのを見た。
ローブの前の方が盛り上がっている。
みんなが解毒剤を飲み、いろいろな「ふくれ」が収まったとき、スネイプはゴイルの大鍋の底をさらい、黒コゲの縮れた花火の燃えカスをすくい上げた。
「これを投げ入れた者がわかった暁には」
スネイプが低い声で言った。
「我輩が、まちがいなくそやつを退学にさせてやる」
四人が急いで「嘆きのマートル」のトイレに向かう途中、ハリーは三人に話しかけた。
「スネイプは僕がやったってわかってるよ。ばれてるよ」
ハーマイオニーは大鍋に新しい材料を放り込み、夢中でかき混ぜ始めた。
「あと二週間で出来上がるわよ」と嬉しそうに言った。
「スネイプはただ、疑っているだけよ。立証できなきゃ意味がないでしょ?」
はハーマイオニーによかったね、と声を掛けながら言った。
「そうさ。あいつにいったい何ができるっていうんだい?」
ロンがハリーを安心させるように言った。
「相手はスネイプだもの。何か臭うよ」
スネイプ先生から疑惑の視線が痛い・・・・・