Good luck がんばれ
土曜日の朝、たち3人はハリーが更衣室に入ってしまう前にひとこと伝えようと、急いでハリーのそばに来た。
「幸運を祈る」
3人はハリーを元気付けると、競技場へ向かった。 そして、グリフィンドールのメンバーたちと共に、声援を送り、試合開始を待った。 マダム・フーチがグラウンドに入場した両者、グリフィンドール選手とスリザリン選手のキャプテンに握手するように求めた。
「笛が鳴ったら開始」
観客のワーッという声にあおられるように、十四人の選手が鉛色の空に高々と飛翔した。 ハリーは空高く飛んでいた。 すると前方からブラッジャーが突進してきた。 ハリーは間一髪でかわし、そのブラッジャーをジョージがスリザリンめがけて打ち返そうとした。 しかし、ブラッジャーは途中で向きを変え、またハリーめがけて突進してきた。 観客はまったく気付いていなかった。 仕方なく、ジョージはウッドにサインを送り、ウッドはタイムを取った。
「このままじゃまけてしまうわ」
ハーマイオニーが悲痛な声で言った。
「ハリーが早くスニッチを取れればいいけど」
ロンも心配そうに呟いた。
「一体、どうしたのかしら」
は何かを真剣に話しているグリフィンドール選手を見た。
数分後、試合は再開された。 ハリーは空に舞い上がるとジグザグに飛び始め、次の瞬間には箒から逆にぶら下がり、するとジェットコースターのように動き始めた。
「一体、ハリーは何をしているのかしら」
ハーマイオニーは焦りと呆れが入れ混じった顔だ。 その瞬間、ハリーの右腕にブラッジャーが当たった。
「ハリー!」
が叫んだ。
しかし、ハリーはそのままマルフォイに向かって急降下した。
「スニッチだ!ハリーがスニッチを見つけた!」
ロンは小声で、しかし、嬉しそうに言った。 ハリーはそのまま泥のなかに落ち、動かなくなった。
「行きましょう!」
のその言葉で、三人はグラウンドに向かった。 三人がグラウンドに降りたとき、既にハリーは哀れな姿だった。 ロックハートがハリーの腕から骨を抜いてしまったようだった。 ロックハートは今来た三人に言った。
「まあ、時にはこんなことも起こりますね。でも要するに骨はもう折れてない。それが肝心だ。それじゃあ、ハリー、医務室まで気を付けて歩いて行きなさい。――、付き添って行ってくれないかね?ウィーズリー君、ミス・グレンジャーさんも。――マダム・ポンフリーがその――少し君を――あー――きちんとしてくれるでしょう」
ハリーの腕は肌色の分厚いゴム手袋のようだった。 ハリーは三人と一緒に歩きながら、試合中のことを説明した。
「ブラッジャーが僕しか追いかけて来なくなったんだ。フレッドとジョージがいくら遠くに打っても。だから、途中でタイムを取ったときに、ウッドに言ったんだ、僕一人でブラッジャーをどうにかするってね。途中までうまく行ったけど、マルフォイの頭の上の方にスニッチを見つけたとき、避けられなくて・・・・・当たったんだ。結局は見たとおり、僕が取れたけど、マルフォイがもし、気づいていたら全くの無駄骨さ。地面に降りたったとき、ロックハートがどうしても僕の腕を治すって言ってきかなくて、それでこの様さ。見事、骨なし」
マダム・ポンフリーはおかんむりだった。
「真っ直ぐにわたしのところへ来るべきでした!」
マダム・ポンフリーは憤慨して、三十分前まではれっきとした腕、そして今や哀れな骨抜きの腕の残骸を持ち上げた。
「骨折ならあっという間に治せますが――骨をもと通りに生やすとなると・・・・・」
「先生、出来ますよね?」
ハリーはすがる思いで聞いた。
「もちろん、出来ますとも。でも痛いですよ」
マダム・ポンフリーは怖い顔でそう言うと、パジャマをハリーの方に放ってよこした。
「今夜はここに泊まらないと・・・・・」
ハリーがロンの手を借りてパジャマき着替える間、とハーマイオニーはベッドの周りに張られたカーテンの外で待った。
「ハーマイオニー、これでもロックハートの肩を持つっていうの?え?」
ロンがカーテン越しに話しかけた。
「頼みもしないのに骨抜きにしてくれるなんて」
「誰にだって、間違いはあるわ。それにもう痛みはないんでしょう?ハリー?」
「ああ」
ハリーが答えた。
「痛みもないけど、おまけになんにも感じないよ」
すると、マダム・ポンフリーが「骨生え薬のスケレ・グロ」とラベルの貼ってある大きな瓶を手にして現れた。
「今夜は辛いですよ」
ビーカーに並々と湯気のたつ薬を注ぎ、ハリーにそれを渡しながらマダム・ポンフリーが言った。
「骨を再生するのは荒療治です」
薬を飲むことが既に荒療治だった。 三人はハリーが飲むのを手伝った。
「とにかく、僕たちは勝った」
ロンは顔中を綻ばせた。
「ものすごいキャッチだったなあ。マルフォイのあの顔・・・・・殺してやる!って顔だったな」
「あのブラッジャーに、マルフォイがどうやって仕掛けをしたのか知りたいわ」
ハーマイオニーが恨みがましい顔をした。
「質問リストに加えれば良いじゃない。ポリジュース薬を飲んでから聞く質問にね」
はハリーが飲み終ったビーカーを机の上に片付けた。
「ポリジュース薬がさっきの薬よりましな味だといいんだけど・・・・・」
ハリーが溜め息をついた。
「スリザリンの連中の欠片が入っているのに?冗談言うなよ」 ロンが言った。
そのとき、医務室のドアがパッと開き、泥んこでびしょびしょのグリフィンドール選手全員がハリーの見舞いにやってきた。
「ハリー、すごかったぜ」
ジョージが言った。
「たった今、マーカス・フリントがマルフォイを怒鳴りつけているのを見たよ。なんとか言ってたな――スニッチが自分の頭の上にあるのに気が付かなかった、とか。マルフォイのやつ、しゅんとしてたよ」
みんながケーキやら、菓子やら、カボチャジュースやらを持ち込んで、ハリーのベッドの周りに集まり、まさに楽しいパーティが始まろうとしていた、そのとき、マダム・ポンフリーが鼻息も荒く入ってきた。
「この子は休息が必要なんですよ。骨を三十三本も再生させるんですから。出て行きなさい!出なさい!」
ハリーはこうして一人ぼっちになり、誰にも邪魔されずに、萎えた腕のズキズキという痛みとたっぷり付き合うことになった。
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無敵のグリフィンドール・クィディッチチームです!!