その夜、四人は談話室で出来るだけ、パーシーと離れて座った。
しかし、ロンはまだ機嫌が直らず、「妖精の魔法」の宿題にインクのしみを作ってばかりいた。
インクのしみを拭おうとロンが、何気なく杖に手を伸ばした途端、杖が発火して、羊皮紙が燃え出してしまった。
ロンも羊皮紙と同じくらい、カッカと熱くなり、「標準呪文集・二学年用」をパタンと閉じてしまった。
そして、驚くことに、ハーマイオニーも右倣えをした。
となりでボーっとしていたは驚いてハーマイオニーを凝視した。
「だけど、一体何者かしら」
ハーマイオニーの声は落ち着いていた。
まるでさっきの会話のように自然だった。
「出来損ないのスクイブやマグル出身の子をホグワーツから追い出したいと願っているのは、誰?」
「それでは考えて見ましょう」
ロンはわざと頭をひねって見せた。
「我々の知っている中で、マグル生まれはクズだと思っている人物は誰でしょう?」
ロンはハーマイオニーの顔を見た。
ハーマイオニーはまさか、という顔でロンを見た。
「もしかして、あなた、マルフォイのことを言っているの――」
「モチのロンさ!」
ロンが言った。
「あいつが言ったこと聞いただろう?『次はおまえたちだぞ、穢れた血め!』って。しっかりしろよ。あいつの腐ったねずみ顔を見ただけで、あいつだってわかりそうなもんだろ」
「マルフォイが、スリザリンの継承者?」
ハーマイオニーがそれは疑わしいという顔をした。
「あいつの家族を見てくれよ。」
ハリーが教科書をパタンと閉じた。
「あの家系は全員スリザリン出身だ。あいつ、いつもそれを自慢してる。あいつならスリザリンの末裔だっておかしくはない。あいつの父親もどっから見ても悪玉だよ」
「あいつなら、何世紀も『秘密の部屋』の鍵を預かっていたかもしれない。親から子へ伝えて・・・・・」
ロンが言った。
「そうね」
ハーマイオニーは慎重だ。
「その可能性はあると思うわ・・・・・」
そのとき、が勢い良く言った。
「待ってよ。それはないわよ。ドラコにそんな度胸があるとは思えないし、それに、彼は私の――」
「私の?」
ハリーがを凝視して、聞き返した。
は思わず口が滑ったことで、慌てていた。
「――なんでもないわ・・・・・」
「そこまで言ってもったいぶるなよ。気になるじゃないか」
ロンが突っ込んだ。
「みんなに聞かれたらまずいのよ。チャンスがあったら、また今度改めて話すから」
は少し、落ち込んだ様子で答えた。
「とにかく、マルフォイが犯人でも、そうでなくとも、ここで話していたら、らちが明かないわ。それより、マルフォイが犯人か、証明する方法があるの――」
ハーマイオニーはいっそう声を落とし、部屋の向こうにいるパーシーを盗み見しながら続けた。
「もちろん、難しいの。それに危険だわ。とっても。学校の規則をざっと五十は破ることになるわね」
「あと、一ヶ月くらいして、もし君が説明してもいいというお気持ちになりましたら、そのときは僕達にご連絡くださいませ、だ」
ロンはイライラして言った。
「承知しました、だ」
ハーマイオニーが冷たく言った。
「何をやらなければいけないかというとね、私達がスリザリンの談話室に入り込んでマルフォイに正体を気づかれずに、いくつか質問するということなのよ」
「だけど、不可能だよ」
ハリーが言った。
「いいえ、そんなことないわ。ポリジュース薬が少し必要なだけよ」
「正気?あれを作るのには二角獣の角の粉末とかはちろん、変身したい相手の一部が必要なのよ?」
がハーマイオニーを疑いの眼差しの目で見た。
「ちょ、ちょっと待って」
"ポリジュース薬"を知らない、ハリーとロンが待ったをかけた。
「その、ポリジュース薬ってなんなんだい?」
「数週間前にスネイプがクラスで話していた薬のことよ」
が言った。
「魔法薬学の授業中に僕達、スネイプの話を聞いていると思うの?もっとましなことをやってるよ」
ロンがぶつぶつ言った。
「自分以外の誰かに変身できる薬なの。考えてみて!わたしたちがマルフォイ以外のスリザリン生に変身するのよ。マルフォイは多分、なんでも話してくれるわ」
ハーマイオニーが意気込んだ。
「そのポリジュースなんとかって少し、危なっかしいな」
ロンがしかめっ面をした。
「もし、戻れなくて、永久にスリザリンの誰かの姿のままだったらどうする?」
「しばらくすると効き目は切れるの」
ハーマイオニーがもどかしげに手を振った。
「むしろ――の言うとおり――材料を手に入れるのが大変なの。『最も強力な薬』という本にそれが書いてあるって、スネイプがそう言っていたわ。その本、きっと図書館の『禁書』の棚にあるはずだわ」
「禁書」の棚の本を持ち出す方法はただ一つ、先生のサイン入りの許可証をもらうことだった。
「でも、薬を作るつもりはないけど、そんな本が読みたいって言ったら、そりゃ変だって思われるだろう?」
ロンが言った。
「たぶん」
ハーマイオニーが構わず続けた。
「理論的な興味だけなんだって思い込ませれば、もしかしたら上手くいくかも・・・・・」
「なーに言ってるんだか。先生だってそんなに甘くないぜ」
ロンが言った。
「あら、いるじゃない。ちょうどいい、甘い――ちがった、鈍い先生が・・・・・」
はロンにニヤリと笑って見せた。
もしかしてその先生、今頃私室でくしゃみの連発?笑