Lesson 授業
「ハリー、!君たちに会えて嬉しいよ!君たちの素晴らしい功績はもちろん知ってるが、ハリー、私があの話を聞いたとき――もっとも、みんな私が悪いのですがね、自分を責めましたよ」
ハリーが首を傾げた。 しかし、ロックハートはそのまま言葉を続けた。
「こんなにショックを受けたことは、これまでになかったと思うぐらい。ホグワーツまで車で飛んでくるなんて!まぁ、もちろんなぜ君がそんなことをしたのかはすぐにわかりましたが。目立ちましたからね。ハリー、ハリー、ハリー
話していないときでさえ、すばらしい歯並びを一本残らず見せつけることが、どうやったら出来るのか、驚きだった。
「有名になるという密の味を、私が教えてしまった。そうでしょう?『有名虫』を移してしまった。また、そうやって君はの気を惹きたかった」
「あの――先生、違います。つまり――」
「ハリー、ハリー、ハリー
ロックハートは手を伸ばしてハリーの肩を掴みながら言った。 はロックハートに見付からないようにこっそりと欠伸をした。 はっきりいってロックハートが言っていることは間違っている、と分かっていた。
「わかりますとも。最初のほんの一口で、もっと食べたくなる――君が、そんな味をしめるようになったなは、私のせいだ。どうしても人を酔わせてしまうものでしてね――しかしです、青年よ、目立ちたいからと言って、気を惹きたいからと言って、車を飛ばすというのはいけないですね。落ち着きなさい。ね?もっと大きくなってから、そういうことをする時間がたっぷりありますよ。
えぇ、えぇ、君が何を考えているのか、私にはわかります!『彼はもう国際的に有名な魔法使いだから、落ち着けなんて言ってられるんだ!』ってね。しかしです、私が十二歳のときには君と同じくらい無名でした。むしろ、君よりもずっと無名だったかもしれない。つまり、君の場合は少しは知ってる人がいるでしょう?『名前を呼んではいけないあの人』とかなんとかで!それには君たちはずっと同じ家で育ってきているではありませんか!」
ロックハートはをチラッと見た。
「わかってます。わかってますとも。『週刊魔女』の『チャーミング・スマイル賞』に五回も続けて私が選ばれたのに比べれば、君のはたいしたことではないでしょう――それでも初めはそれぐらいでいい。ハリー、初めはね。そうだ、、悪い人に引っ掛かってはいけませんよ」
ロックハートはハリーとに思いっ切りウインクすると、すたすた行ってしまった。 彼の姿が見えなくなると、はロックハートを鼻で笑い、呆然とするハリーを引きずって温室に滑り込んだ。
スプラウト先生は温室の真ん中に、架台を二つ並べ、その上に板を置いてベンチを作り、その後ろに立っていた。 ベンチのうえに色違いの耳当てが二十個ぐらい並んでいる。 ハリーとがロンとハーマイオニーの間に立つと、先生が授業を始めた。
「今日はマンドレイクの植え替えをやります。マンドレイクの特徴がわかる人はいますか?」
みんなが思った通り、一番先にハーマイオニーの手が挙がった。
「マンドレイク、別名マンドラゴラは強力な回復薬です」
いつものように、ハーマイオニーの答えはまるで教科書を丸呑みにしたようだった。
「姿形を変えられたり、呪いをかけられたりした人を元の姿に戻すのに使われます」
「たいへんよろしい。グリフィンドールに十点」
スプラウト先生が言った。
「マンドレイクはたいていの解毒剤の主成分になります。しかし、危険な面もあります。誰かその理由が言える人は?」
ハーマイオニーの手が勢い良く挙がった。
「マンドレイクの泣き声はそれを聞いた者にとって命取りになります」
淀みない答えだ。
「その通り。もう十点あげましょう」
スプラウト先生が言った。
「さて、ここにあるマンドレイクはまだ非常に若い」
先生が一列に並んだ苗の箱を指差し、生徒はよく見ようとしていっせいに前の方に詰めた。 紫がかった緑色の小さなふさふさした植物が百個ぐらい列を作って並んでいた。
「みんな、耳当てを一つずつ取って」
スプラウト先生がそう言うと、みんないっせいに耳当てを――ピンクのふわふわした耳当て以外を――取ろうと揉合った。
「私が合図したら耳当てをつけて、両耳を完全にふさいでください。耳当てを取っても安全になったら、私が親指を上に向けて合図します。それでは――耳当て、つけ!
スプラウト先生は生徒たちが全員耳当てをしたのを確認すると、ピンクのふわふわした耳当てをつけ、ローブの袖をまくり上げ、ふさふさした植物を一本しっかりつかみ、ぐいっと引き抜いた。 土の中から出てきたのは、植物の根ではなく、小さな、泥んこの、ひどく醜い男の赤ん坊だった。 葉っぱはその頭から生えている。 肌は薄緑色でまだらになっている。 赤ん坊は声のかぎりに泣きわめいている様子だった。 スプラウト先生は、テーブルの下から大きな鉢を取り出し、マンドレイクをその中に突っ込み、ふさふさした葉っぱだけが見えるように、黒い、湿った堆肥で赤ん坊を埋め込んだ。 先生は手から泥を払い、親指を上に上げ、自分の耳当てを外した。
「このマンドレイクはまだ苗ですから、泣き声も命取りではありません」
先生は落ち着いたのもで、ベゴニアに水をやるのと同じように当たり前のことをしたような口ぶりだ。
「しかし、苗でも、みなさんをまちがいなく数時間気絶させるでしょう。新学期最初の日を気を失ったまま過ごしたくはないでしょうから、耳当ては作業中しっかりと離さないように。あとかたづけをする時間になったら、わたしからそのように合図します。一つの苗床に五人――植え替えの鉢はここに十分あります――堆肥の袋はここです――『毒触手草』に気を付けること。歯が生えてきている最中ですから」
先生は話ながら刺だらけの暗赤色の植物をピシャリと叩いた。 するとその植物は、先生の肩の上にそろそろと伸ばしていた長い触手を引っ込めた。
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黙々と授業に集中です。