翌日、はカリカリとしたハーマイオニーと大広間に行った。
未だにハリーとロンの到着の仕方が許せないらしい。
も下手な事を言って刺激するよりは、と思ってハーマイオニーのご機嫌がしぜんに直るのを待っていた。
いつもなら一緒に話をしながら食べる食事も今日はハーマイオニーは「バンパイアとバッチリ船旅」をミルクの入った水差しに立てかけて読んでいた。
「おはよう」
すると大広間にハリーとロンが入ってきて、たちの隣に腰かけた。
「おはよう」
は二人に挨拶を返した。
ハーマイオニーも返したものの、言い方がちょっとつっけんどうだった。
「ハーマイオニー、朝からこの調子だから気にしないで」
ロンがハーマイオニーに食ってかかりそうになるのをが止めた。
そしてふと頭上が騒がしいと思い、見上げると百羽を越えるふくろうが押し寄せ、大広間を旋回して、騒がしい生徒たちの上から、手紙やら小包やらを落とした。
次の瞬間、何やら大きな灰色のかたまりがハーマイオニーのそばの水差しの中に落ち、周りのみんなに、ミルクと羽のしぶきを巻き散らした。
「エロール!」
ロンが足を引っ張ってぐっしょりになったふくろうを引っ張っりだした。
エロールは気絶してテーブルの上にボトッと落ちた。
足を上向きに付きだし、嘴には濡れた赤い封筒を加えている。
「大変だ――」
ロンが息を呑んだ。
「大丈夫よ。まだ生きているわ」
ハーマイオニーがエロールを指先でチョンチョンと軽く突きながら言った。
「そうじゃなくて――あっち」
はやっとロンの指差す赤い封筒の正体に気がついた――吼えメールだ。
「ハリーは来てなくてラッキーだね」
が他人事のようにそういうと、ロンはを恨めしく見た。
「ママったら『吼えメール』を僕によこした・・・・・」
ロンがか細い声で呟いた。
「ロン、開けた方がいいよ」
ネビルがこわごわ囁いた。
「開けないともっと酷いよ。僕のばあちゃんも一度僕によこしたことがあるんだけど、ほっておいたら・・・・・」
ネビルがゴクリと生唾を飲んだ。
「酷かったんだ」
ロンは赤い封筒に全神経を集中させた。
封筒は四隅から煙を上げ始めている。
「開けて」
ネビルが急かした。
「ほんの数分で終るから・・・・・」
ロンは震える手を伸ばしてエロールの嘴から封筒をそーっとはずし、開封した。
ネビルもハリーもこの後のことを予想して、耳をふさいだ。
次の瞬間、大広間いっぱいに吼える声で封筒が喋りだし、天井から埃がバラバラ落ちてきた。
「・・・・・車を盗み出すなんて、退校処分になってもあたりまえです。首を洗って待ってらっしゃい。承知しませんからね。車がなくなっているのを見て、わたしとお父さんがどんな思いだったか、おまえはちょっとでも考えたんですか・・・・・」
大広間にいた全員があたりを見回し、いったい誰が「吼メール」をもらったのだろうと探していた。
ロンは椅子に縮こまって小さくなり、真っ赤な額だけがテーブルの上に出ていた。
「・・・・・昨夜ダンブルドアからの手紙が来て、お父さんは恥ずかしさのあまり死んでしまうのでは、と心配しました。こんなことをする子に育てた覚えはありません。おまえもハリーも、まかりまちがえば死ぬところだった・・・・・」
ハリーの名前が出たので、はどんな顔をしているのかと横顔を見ると、鼓膜がズキズキするくらいの大声を、必死で聞こえていないふりをしながら聞いているようだった。
「・・・・・まったく愛想が尽きました。お父さんは役所で尋問を受けたのですよ。みんなおまえのせいです。今度ちょっとでも規則を破ってごらん。わたしたちがおまえをすぐ家に引っ張って帰ります」
耳がジーンとなって静かになった。
どう見ても手紙はハリーとロンに十分な衝撃を与えていた。
静かだった大広間も何人かが笑い声をあげ、だんだんとおしゃべりの声が戻ってきた。
朝食の後は二年生になってからの初めての授業だ。
時間割りをみるとハッフルパフと一緒に薬草学の授業を受けることになっている。
四人は連れだって城を出て、野菜畑を横切り、魔法の植物が植えてある温室へと向かった。
温室の近くまで来ると、他のクラスメートが外に立って、スプラウト先生を待っているのが見えた。
四人がみんなと一緒になった直後、先生が芝生を横切って大股で歩いてくるのが見えた。
ギルデロイ・ロックハートと一緒だ。
スプラウト先生は腕いっぱいに包帯を抱えていた。
遠くの方に「暴れ柳」が見え、枝のあちらこちらに吊り包帯がしてあった。
「やあ、みなさん!」
ロックハートは集まっている生徒を見回してこぼれるように笑いかけた。
「スプラウト先生に、『暴れ柳』の正しい治療法をお見せしていましてね。でも、私の方が先生より薬草学の知識があるなんて誤解されては困りますよ。たまたま私、旅の途中、『暴れ柳』というエキゾチックな植物に出会ったことがあるだけですから・・・・・」
「みんな、今日は三号温室へ!」
スプラウト先生は普段の快活さはどこへやら、不機嫌さが見え見えだった。
するとそれに拍車をかけるようにロックハートがハリーの名前を呼び、肩に手を伸ばした。
「ハリー!君と話したかった――スプラウト先生、彼が二、三分遅れてもお気になさいませんよね?それに・ブラックも。、どこにいるんだい?手を挙げて!」
ロックハートはキョロキョロと生徒を見回した。
は手を挙げる気などさらさらなかったが、の名前が呼ばれた途端にに注目し始めた生徒全員のお陰でロックハートに見付かってしまった。
このときばかりはハーマイオニーさえも、は恨んだ。
「ここにいましたか!では、スプラウト先生。また後ほど」
そう言うとロックハートはスプラウト先生の鼻の先でヒシャリとドアを閉めてしまった。
さて、ロックハート先生と直接対話です。笑