Blood will tell 血はものを言う
はやれやれと思って、そのにらみあいが出来るだけ早く終わるように願った。 そのとき、ロンとハーマイオニーがロックハートの本を一山ずつしっかり抱えて、人混みを掻き分けて現れた。
「なんだ、君か」
ロンは靴の底にベットリとくっついた不快なものを見るような顔でマルフォイを見た。
「ハリーがここにいるので驚いたってわけか、え?」
「ウィーズリー、君がこの店にいるのを見てもっと驚いたよ」
マルフォイが言い返した。
「そんなにたくさん買い込んで、君の両親はこれから一ヶ月は飲まず食わずだろうね」
ロンはジニーの鍋の中に本を入れ、マルフォイにかかって行こうとしたが、ハーマイオニーとジニーがロンの上着の背中をしっかりつかまえた。
「ドラコ、何をしている」
突然、マルフォイの後ろから冷たい声が響いた。 ドラコと同じく血の気のない顔、とがった顎、息子と瓜二つの冷たい灰色の目をしている。
「これは、これは・・・・・かの有名なハリー・ポッターと・ブラックではないかね」
ドラコの父親は冷たい灰色の目でハリーとをジッと観察した。
「失礼」
突然、ルシウスはハリーの前髪を掻きあげて、稲妻形の傷跡を露にした。
「素晴らしい・・・・・」
ハリーは抵抗する様子がなかった。 はルシウスの視線に耐えられなくなり、目をそらした。
「ルシウス、息子に今後一切触れぬようにお願いしよう」
突然、ジェームズの声がしたかと思うと、ジェームズがハリーの隣に立ち、ルシウスの手首を捕まえていた。 の隣にはシリウスがいつの間にか立っていた。
「息子に手を出したら許さない。もちろんにもだ」
ジェームズはルシウスの手首を離し、にらみつけながら言った。
「ポッター、残念ながらこんな小娘に興味はないし、相手にする気もない。他の連中は知らないですがねぇ」
マルフォイ氏は薄笑いを浮かべてを見た。
「マルフォイ、娘を怯えさすのはやめてもらおう」
シリウスもマルフォイ氏をにらみつけた。 子供と同様、親同士でもにらみあいが始まってしまった。
「ロン!」
すると、そのとき人だかりの中、一生懸命こちらに来ようとするウィーズリーおじさんとジョージとフレッドが目に入った。
「何してるんだ?ここはひどいもんだ。早く外に出よう」
「これは、これは、これは――アーサー・ウィーズリー」
マルフォイ氏は新しい獲物を見つけ、薄ら笑いを浮かべた。
「ルシウス」
ウィーズリー氏は首だけ傾けてそっけない挨拶をした。
「お役所はお忙しいらしいですな。あれだけ何回も抜き打ち調査を・・・・・残業代は当然払ってもらっているのでしょうな?」
マルフォイ氏はジニーの大鍋から使い古しの擦りきれた「変身術入門」を引っ張り出した。
「どうもそうではないらしい。なんと、役所が満足に給料も支払わないのでは、わざわざ魔法使いの面汚しになる甲斐がないですねぇ?」
ウィーズリー氏が深々と真っ赤になった。
「マルフォイ、魔法使いの面汚しがどういう意味かについて、私たちは意見が違うようだが」
「さようですな」
マルフォイ氏の薄灰色の目が、心配そうになりゆきを見ているグレンジャー夫妻の方に移った。
「一見、ブラック家のようなまともな連中と付き合っているように思えたが、そうではないらしい。こんな連中と付き合ってるようでは・・・・・君の家族はもう落ちるところまで落ちたと思っていたんですがねぇ――まあ、ブラック家もまともとは言えないようだが」
「失せろ、マルフォイ」
そのとたん、シリウスもジェームズも杖をマルフォイ氏に向けて静かに言った。
「言われなくとも」
マルフォイ氏は薄笑いを浮かべたまま、ジニーの大鍋に変身術の古本を突っ込んでドラコと一緒に店を出ていった。
「大丈夫か?」
外に出て、みんなは急いで歩いていた。 ジェームズがハリーに聞いた。
「多分ね」
ハリーが肩をすくめた。一方、 はその隣であんなにも怒ったシリウスとジェームズを見て、衝撃を受けていた。 そして、無意識のうちにシリウスのローブを握っていた。
?」
シリウスがそっと自分の方にを引き付けた。
「どうした?」
「・・・・・わかんない」
シリウスはその答えを聞くと、さっきとはうって変わってにっこり笑うとに優しく言った。
「気にするな。マルフォイ家は骨の髄まで腐ってる。あいつらの言うことなんか聞く価値もない」
「そうさ。マルフォイが君に興味なくたって僕は君が好きなんだから気にすることないよ」
ジェームズもにっこり笑ってを見た。 もつられて笑った。
それにしても、一行はしょんぼりして「漏れ鍋」の暖炉に向かった。 そこから煙突飛行粉で、ポッター家とブラック家、ウィーズリー一家と、買い物一式がそれぞれの家に帰ることになった。 グレンジャー一家は、そこから裏側のマグルの世界に戻るので、みんなはお別れを言い合った。

そんなこんなで夏休みはあまりにもあっけなく終わった。 最後の夜、ハリーももホグワーツに帰るのを楽しみにしていたが、このまま家にいるのもいいかな、と思っていた。
翌朝、二人ともそれぞれの母親に叩き起こされた。 しかし、出かけるまでにかなりの時間がかかった。 キングズ・クロス駅に着いたのは十一時十五分前だった。 ちょうどそこでウィーズリー一家と再会した。 シリウスとジェームズとウィーズリーおじさんは三人でカートを数台持ってきてトランクを載せ、駅の構内に入った。 9と4分の3番線のホームに行くために、マグルに気付かれないように障壁を何気無く通り抜けて消えるのにあと五分しかなかった。
まず、とリリーが先に行った。 その次にとシリウスとジェームズ。 はホームに行くと急いで汽車にのりこんで窓から顔を出した。 柵からはパーシー、ウィーズリーおじさん、フレッドとジョージ、ジニーとウィーズリー夫人が次々に出てきた。 しかし、ハリーとロンがこちらにくる気配が一向にない。 は心配になってに聞いた。
「ハリーたち、どうしたの?」
「わからないわ」
もそうとう焦っているようだ。 そのとき、ジェームズが柵の様子を調べてこちらに戻ってきた。
「向こう側に行けない。多分、入り口が閉じてしまってこちらに来れないんだ」
「じゃあ、ハリーたちはどうなるの?」
「汽車に乗れないな。いいか、。心配するな。ハリーたちはどうにかするからお前は自分のことを心配するんだ。無茶な真似はするんじゃない。何かあったらふくろう便を出しなさい」
シリウスは心配そうに四人の大人を見つめるをなだめて窓越しに抱き締めた。 すると、それに習って、ジェームズももリリーも次々にを抱き締めた。
、危険な真似はするんじゃない」
シリウスはもう一度、にそう言うとホグワーツへと向かい始めた汽車を見送った。
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子供思いのシリウスとジェームズです。