Stop 待って
「な、なんて言ったの?」
ハリーがつっかえながら聞いた。
「私たち、ホグワーツに行かないわけにはいかないの」
も妖精に諭すように言った。
「いえ、いえ、いえ」
ドビーがキーキー声をたてた。
「ハリー・ポッターと・ブラックは安全な場所にいないといけません。あなた様方は偉大な人、優しい人。失うわけには参りません。二人がホグワーツに戻れば、死ぬほど危険でございます」
「どうして?」
二人が聞いた。
「罠です。今学期、ホグワーツ魔法魔術学校で世にも恐ろしいことが起こるよう仕掛けられた罠でございます。危険に身をさらしてはなりません。あまりにも偉大なお方を失うわけには参りません!」
「世にも恐ろしいことって?」
そう聞くの顔は心なしか青かった。
「誰がそんな罠を?」
ハリーが聞いた。 するとドビーは狂ったように壁にバンバン頭を打ち付けた。
「わかったから!」
ハリーとは二人で妖精の腕をつかんで引き戻しながら叫んだ。
「言えないんだね。わかったよ――もしかして、『例のあの人』と関係があるの?」
ハリーがそう聞くと、ドビーの頭がまた壁の方に傾いで行ったので、は慌てて止めに入った。
「首を縦に振るか、横に振るかだけしてくれればいいわ」
すると、ドビーはゆっくりと首を横に振った。
「いいえ――『名前を呼んではいけないあの人』ではございません」
ドビーは目を大きく見開いて、ハリーに何かヒントを与えようとしているようだったが、二人にはまるで見当がつかなかった。 ハリーが独り言のように言った。
「それじゃ、ホグワーツで世にも恐ろしいことを引き起こせるのは、ほかに誰がいるのか、全然思い付かないよ。だって、ダンブルドアがいるし――君、ダンブルドアは知ってるよね?」
ドビーはお辞儀をした。
「アルバス・ダンブルドアはホグワーツ始まって以来、最高の校長先生でございます。ドビーめはそれを存じております。ドビーめはダンブルドアのお力が『名前を呼んではいけないあの人』の最高潮のときの力にも対抗できると聞いております。しかし、でございます」
ドビーはここで声を落としてせっぱ詰まったようにささやいた。
「ダンブルドアが使わない力が・・・・・正しい魔法使いなら決して使わない力が・・・・・」
ハリーが止める間もなく、ドビーはベッドからポーンと飛び降り、ハリーのつくえの上にあった分厚い本を引っつかむなり、耳をつんざくような叫び声をあげながら自分の頭を殴りはじめた。
「ストップ、ドビー!わかったから!」
はドビーの手から本を取りあげた。 するとそのままはドビーに倒れかかった。 の意識はそこでプッツリと途切れた。

、起きなさい」
次にが目覚めたとき、目の前にはシリウスや、ジェームズもリリーも自分を心配そうに見つめている姿があった。
「ああ、よかった」
が本当に安心したとばかりに言った。
、大丈夫か?」
安心したと違ってシリウスはまだ心配そうにに聞いた。
「体が・・・・・痛い」
は動かそうとした右手が痛むのを感じ、顔をしかめた。
「おまえの部屋に行こう。ここじゃ、背中も冷たいだろう」
シリウスはそうに言うと、とリリーに先に寝室に戻れと指示した。 は今更ながら、自分の状態を理解しようと首をそっと動かした。 少し痛みはあるものの、首は大丈夫そうだった。 は階段の下で横たわっていた。 上半身を起こそうと体に力を入れるだけでも痛みが全身を貫く。 しかし、一番わからないのは何故、自分がこんなところにいるのかだ。 は考え込んだ。
、大丈夫だから・・・・・休めよ。疲れてるだろ」
ふと横を見ると顔を手で覆う自分の母親とそれを慰める父親の姿が目に入った。
「リリー、をお願いするよ」
は自分の頭の上から聞こえてくる声に驚いたが、声の主はジェームズだとわかった。 がじっと心配そうに見つめる中、はリリーに付き添われながら自分の寝室に向かった。
「さあ、、僕たちも行くよ」
ジェームズがそっとの頬を撫でた。
「ハリーは?」
が呟いた。
「もう夜も遅いから寝ているよ、ちゃんと話は聞いた・・・・・だから、少し僕たちに任せてくれないかな」
ジェームズが複雑そうな顔をしてを見つめかえした。 その目にいつもの茶化した様子などみじんもなかった。
「ここに長居は無用だ――、動くなよ」
シリウスはもう十分だ、とばかりにとジェームズの会話に割り込んだ。 そして優しくの腰より少し上辺りと膝の下に手を通すとゆっくりと持ち上げた。 属にいうお姫さまだっこ、というやつだ。
「どこか痛いか?」
シリウスが心配そうに聞いた。
「大丈夫」
は疲れきった様子だ。
「クリーチャーのやつ、あとで一発ぶん殴ってやる」
に負担がかからないように歩きながら、シリウスが言った。 その目は本気だった。
「何があったの?」
「明日、ゆっくり話そう。その前に君は病院に行かなきゃならないけどね」
ジェームズの口調は優しいようで、怒っているようだった。
「心配するな。おまえに怒っているわけじゃない」
シリウスがの不安気な様子に気づいて言った。
「じゃあ、なんで・・・・・」
は少し怒った様子で二人に問いかけた。
「何も聞くな。明日だ。心配することは何もない。すべては明日だ」
シリウスも怒っているのか、心配なのか、複雑そうな様子で荒々しくに言った。 は二人がいつものような茶化した様子ではなく、真面目そうに言うのでそれ以上何も言えなかった。
そのままゆっくりと進んで、三人はの部屋に入った。
はシリウスの手で優しくベッドの上に降ろされた。
。これを飲みなさい。痛みを感じずに眠れるから」
そういってジェームズがに差し出した手の中には透明な液体が入った瓶があった。
「苦いの?」
「だろうな」
シリウスが間発をいれずに答えた。
「痛みで一晩中眠ることが出来ないのと、今、苦い薬を飲んでゆっくり眠るのとどちらがいいか分かるよな?」
シリウスは脅すように不気味な笑みを浮かべながらを見た。 本能が危険のランプを鳴らしていた。
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シリウスパパ、黒いですよ。ファンの方、すみません・・・・・