Keyhole 鍵穴
夕食時、四人は石を先に手に入れるという冒険する決意を決め、後、談話室でみんなから離れて座った。 誰ももうこの四人を気にとめる様子もなかった。 夜も深まり、寮生が少しずつ寝室に行き、談話室は人気がなくなってきた。 最後にリー・ジョーダンが伸びをして欠伸をしながら出て行った。
「マントを取ってきたら。あと、フラッフィーを眠らせるための楽器とかも」
ロンがささやいた。
「いいわ。私がフルートでも吹いてあげる」
そう言ってはハリーと一緒に階段を上がった。 二人は談話室にかけ戻った。
「ここでマントを着てみたほうがいいな。四人全員入れるかどうか確かめよう・・・・・もしも足が一本だけはみ出して歩き回っているのをフィルチが見つけたら・・・・・」
「君たち、何してるの?」
部屋の隅から声が聞こえた。 ネビルが肘掛け椅子の影から現れた。 自由を求めてまた逃亡したような顔のヒキガエルのトレバーをしっかりとつかんでいる。
「なんでもないわ、ネビル」
がにっこり笑った。
「また外に出るんだろ」
ネビルは四人の後ろめたそうな顔を見つめた。
「ううん、違う。違うわよ。出てなんかいかないわ。ネビル、もう寝たら?」
ハーマイオニーが言った。 時計は四人に時間が少ないことを告げていた。
「外に出てはいけなよ。また見つかったら、グリフィンドールはもっと大変なことになる」
ネビルが言った。
「君には分からないことだけど、これは、とっても重要なことなんだ」
ハリーがそう言うが、ネビルは必死に頑張り、譲ろうとしなかった。
「行かせるもんか」
ネビルは出口の肖像画の前に急いで立ちはだかった。
「僕、僕、君たちと戦う!」
「ネビル!」
ロンのかんしゃく玉が破裂した。
「そこをどけよ。バカはよせ・・・・・」
「バカ呼ばわりゆるな!もうこれ以上規則を破ってはいけない!恐れずに立ち向かえと言ったのは君じゃないか」
「ああ、そうだ。でも立ち向かう相手は僕たちじゃない」
ロンがいりきたった。
「ネビル、君は自分が何をしようとしているのかわかってないんだ」
ロンが一歩前にでると、ネビルがヒキガエルのトレバーをポロリと落とした。 トレバーはピョンと飛んで、行方をくらました。
「やるならやってみろ。殴れよ!いつでもかかってこい!」
は時計を見ると、一歩前に出た。 もう五分も無駄にしていた。
ペトリフィカス トタルス、石になれ
は杖をネビルに向けた。
!」
ハーマイオニーが悲鳴に近い声を上げた。
「だって、もう五分も無駄にしてるのよ!ネビルに構ってる時間なんて最初っからなかったわ」
はそう言いながらネビルを仰向けにした。 ネビルの体はコチコチになっていて、目だけが動かせるようだった。
の言うとおりだ。さあ、僕たちは行かなきゃ」
ハリーはそういってネビルをまたいだ。 四人、それぞれネビルに謝りながら、廊下に出た。
四階の廊下に着いた。 四人はそれぞれの方法で心を落ち着かせると、扉を開いた。 扉はきしみながら開き、低い、グルグルといううなり声が聞こえた。 三つの鼻が姿の見えない四人のいる方向を狂ったようにかぎまわった。
「さあ、はじめよう・・・・・」
ハリーがそういったのを合図に、は持ってきたフルートに唇をあてた。 三頭犬はが奏でる音楽を聴くとすぐさまトロンとしはじめた。 その間に三人は仕掛け扉に近づき、引き手を引いて扉を開けた。
、君は一番最後に飛び降りて。どのくらい深いか分からないけど、僕たちが先に行く」
ハリーはそういって下に落ちていった。 数秒後、仕掛け扉からハリーの声が聞こえた。 どうやら無事なようだ。 ロンはそれを合図に飛び降り、また、その次にハーマイオニーも飛び降りた。 は三頭犬と二人っきりのなか、ゆっくりと仕掛け扉に近づき、思い切って飛び降りていった。 が落ちたのはなにか、柔らかい植物の上だった。 そして、が体制を立て直す前にハーマイオニーはを引っ張って、ジトッと湿った壁の方へ連れて行った。 すると、そのとき、てっきり衝撃を和らげるためのものだと思っていた植物が、ハリーとロンの体に巻きつき始めた。
「動かないで!」
ハーマイオニーが叫んだ。
「私、知ってる・・・・・・これ『悪魔の罠』だわ!」
「ああ、何て名前か知ってるなんて、大いに助かるよ」
ロンが首に巻きつこうとするツルから逃れようと、のけぞりながらうなった。
「黙ってて!どうやってやっつけるか思いだそうとしているんだから!」
ハーマイオニーが言った。
「早くして!もう息が出来ないよ!」
ハリーは胸に巻きついたツルと格闘しながらあえいだ。
「ハーマイオニー、火をつけましょう。『悪魔の罠』だってただの植物よ。植物は火に弱いわ!」
「そうだわ・・・・・それよ・・・・・でも薪がないわ!」
ハーマイオニーがイライラと両手をよじり合わせながら叫んだ。
「気が変になったのか!君はそれでも魔女か!」
ロンが大声を出した。
「あっ、そうだった!」
ハーマイオニーが正気に戻ったところで、とハーマイオニーは力を合わせて、リンドウ色の炎を作り出し、植物めがけて噴射した。
「ありがとう、二人とも」
額の汗を拭いながら、ハリーが言った。
「それにしても、『薪がないわ』なんて、まったく・・・・・・」
ロンが言った。
「さあ、行きましょう」
は奥へ続く石の一本の道を指差した。 足音以外に聞こえるのは、壁を伝い落ちる水滴のかすかな音だけだった。 通路は下り坂で、どれだけ地下にもぐるのだろうか、とは考えていた。
「何か聞こえないか?」
ロンが小声で言った。 確かに、前の方から柔らかく擦れ合う音や、チリンチリンという音が聞こえる。
「ゴーストかな?」
「わからない。羽の音みたいに聞こえるけど」
四人は通路の前に出た。 目の前にはまばやく部屋が広がった。 天井はアーチ型をしている。 宝石のようにきらきらとした無数の小鳥が、部屋いっぱいに飛び回っていた。 部屋の向こう側には分厚い木の扉があった。
「きっと僕たちが部屋を横切ったら襲ってくるんだ」
そういってハリーは走ろうとしたが、が引き止めた。
「待って。それじゃあおかしいわ。あそこに箒が何本もあるのよ?ただ駆け抜けるだけだったら箒はいらないんじゃないかしら。・・・・・たとえば、鳥が扉を開ける鍵を持っていたり・・・・・」
は不敵に笑った。
「それだ!扉に合う鍵を見つけるんだ!」
「でも、何百羽もいるよ!」
ハリーが張り切る横で、ロンはおされ気味だった。
「大丈夫よ。大きくて昔風の鍵よ。多分、取っ手と同じく銀製ね」
ハーマイオニーがいつの間に扉を見てきたのか、観察してきた感想を述べた。 四人はそれぞれの箒を取り、地面を蹴って空中へと鍵の雲の真っ只中へと舞い上がった。 ロンととハーマイオニーは魔法のかかった鍵たちに遊ばれていたが、ハリーは違った。 一分ほど虹色の渦の中を飛び回っているうちに目当ての大きな銀の鍵を見つけた。
「あれだ!」
ハリーが叫んだ。
「四人で追い込もう。ロンは上のほうから、ハーマイオニーは下から、は僕の正面からだ。それ、今だ!」
鍵は身の危険を感じたのかすばやくロンととハーマイオニーをかわしたが、ハリーだけには敵わなかったらしく、バリバリッという嫌な音を立ててハリーの片手に納まった。 四人は急いで着地し、鍵を鍵穴に突っ込んでまわした。
「いいかい?」
ハリーが取っ手に手をかけながら三人に声をかけた。
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さあ、戦いは始まりました。