Doubt 疑い
試験を一週間後に控えたある日の午後、ハリーとは図書館からグリフィンドール寮に帰るため、廊下を歩いていた。 すると、教室から誰かのメソメソ声が聞こえてきた。 近寄ってみるとクィレルの声がした。
「ダメです・・・・ダメ・・・・・・もうどうぞお許しを・・・・・」
誰かに脅されているようだった。 二人は顔を見合せ、さらに教室に近づいてみた。
「わかりました・・・・・わかりましたよ・・・・・」
クィレルのすすり泣くような声が聞こえる。 次の瞬間、クィレルが曲がったターバンを直しながら、教室から急ぎ足で出てきた。 蒼白な顔をして、今にも泣き出しそうだ。 足早に行ってしまったので、二人の存在には気づかなかったようだ。 二人はクィレルがいなくなるのを待って、教室を覗いてみた。 誰もいない。 だが、反対側のドアが少し空いていた。
「きっとスネイプだ。とうとうクィレルを降参させたんだ」
ハリーが言った。
「でも、待って。あのスネイプが私たちに気づかないなんておかしすぎるわ」
「きっと嬉しすぎて気づかなかったんだよ」
ハリーがそうは言うものの、は自分たちの推理に疑問を持ち始めていた。 二人は図書館に戻り、ロンとハーマイオニーに今、見聞きしたことをすべて話した。
「それじゃあ、スネイプはついにやったんだ!クィレルが『闇の魔術の防衛術』を破る方法を教えたとすれば・・・・・」
「でも、まだフラッフィーがいるわ」
「もしかしたら、スネイプはハグリッドに聞かなくてもフラッフィーを突破する方法を見つけたかもしれないな」
周りにある何千という本を見上げながらロンが言った。
「これだけの本がありゃ、どっかに三頭犬を突破する方法だって書いてあるよ。どうする?」
ロンの目には冒険心が再び燃え上がっていた。 しかし、すばやくハーマイオニーが答えた。
「ダンブルドアのところへ行くのよ。ズーッと前からそうしなくちゃいけなかったのよ。自分たちだけでなんとかしようとしたら、今度こそ退学になるわよ」
「だけど、証拠はなんにもないんだ!」
ハリーが言った。
「クィレルは怖気づいて、僕たちを助けてはくれない。スネイプは、ハロウィーンのとき、トロールがどうやって入ってきたのか知らないって言い張るだろうし、あの時四階になんて行かなかったってスネイプが言えば、それでおしまいさ・・・・・みんなどっちの言うことを信じると思う?僕たちがスネイプを嫌っていることは誰だって知ってるし、ダンブルドアだって僕たちがスネイプをクビにするために作り話をしていると思うだろう。フィルチはどんなことがあっても、僕たちを助けたりしないよ。スネイプとべったりの仲だし、生徒が追い出されて少なくなればなるほどいいって思うだろうよ。もう一つおまけに、僕たちは石のこともフラッフィーのことも知らないはずなんだ。これは説明のしようがないだろう」
ハーマイオニーは納得したようだが、ロンはねばった。
「ちょっとだけ探りを入れてみたらどうかな・・・・・」
「だめよ。私たちがこれ以上探りを入れるわけにはいかない・・・・・探りを入れすぎてるわ」
はきっぱりと言った。
翌朝、朝食のテーブルにハリーとハーマイオニーとネビル宛の手紙が届いた。 今夜十一時、処罰らしい。 ハリーとハーマイオニーは十一時前になると、ロンとに別れを告げた。 ロンとは彼らに帰ってくるまで起きていると約束し、暖炉の前に座り込んだ。 そのうちに、ロンは寝てしまい、談話室にも人がいなくなった。
はロンに自分のローブをかけてやり、最近の出来事を思い返していた。 最近はいろんなことが起こりすぎていた。 すると、そのとき談話室の肖像画が開き、ハリーとハーマイオニーが帰ってきた。 二人ともとても疲れた様子だ。
「大丈夫・・・・・・じゃないわね」
は暖炉に杖を向けて火を大きくした。
「ロン、起きて!二人とも帰ってきたわ!」
二人が暖炉の火に暖まっている間に、はロンをたたき起こした。 ロンは寝ぼけ眼でを見た後、ハリーを見て、ハーマイオニーを見た。
「僕たち、禁じられた森に行かされたんだ」
突然、ハリーが口を開いた。
「なんで・・・・・なんで、あんなところに?」
は開いた口が塞がらない。
「傷ついたユニコーンを探し出すためよ。最近、死んだユニコーンが森で発見されるようになったの」
「そう、だから僕たちは森に入った・・・・・詳しくはあんまり言いたくないんだ。だけど、これだけは言える――僕はヴォルデモートに会ったんだ」
ハリーはハーマイオニーをさえぎり、きっぱりと言った。
ヴォルデモートですって?
は素っ頓狂な声を上げた。 すると、ロンがに劣らず怯えた声でその名前を言わないように頼んだ。 しかし、二人の耳には入っていないようで、話は続いた。
「ケンタウルスのフィレンツェが助けてくれたんだ。彼が説明してくれた。ユニコーンの血はたとえ死のふちにいたとしても長らえさせてくれる。でも、その血が唇に触れたとたん、そのものは呪われた命を生きる、生きながらの死の命なんだ。ヴォルデモートは賢者の石を手に入れる間、ユニコーンの血を飲んで生きているんだ。スネイプはヴォルデモートのためにあの石が欲しかったんだ・・・・・・」
ハリーはパニックになっているようで、熱に浮かされたように話し続けた。
「スネイプが石を手にしてヴォルデモートがよみがえる。そして僕の息の根を止めるんだ」
もその話は衝撃的だったが、ハリーに慰めの言葉をかけた。
「ハリー、ダンブルドアはヴォルデモートが唯一恐れている人だって、みんなが言ってるじゃない。ダンブルドアがそばにいる限り、彼はあなたに手出しはできないわ」
話し込んでいるうちに、空が白み始めていた。 ベッドに入ったときは四人ともクタクタで、話しすぎて喉がヒリヒリした。
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ヴォルデモート復活説。笑