Cold heart 冷たい心
その次の週はノロノロと過ぎた。 水曜日の夜、みんなが寝静まり、ハリーとの二人だけが談話室に残っていた。 壁の掛時計が零時を告げたとき、肖像画の扉が突然開き、ロンとハーマイオニーがどこからともなく現れた。 ハリーの透明マントを脱いだのだ。 ロンもハーマイオニーもハグリッドの小屋でノーバートに餌をやるのを手伝っていた。
「かまれちゃったよ」
ロンは血だらけのハンカチにくるんだ手を差し出してみせた。
「案外傷が深くて・・・・・」
ハーマイオニーは疲れたようにイスに座り込んだ。
「ロン、座って。ハンカチじゃなくて、包帯にしましょ――フェルーラ、巻け!」
すると、がほどいたロンのハンカチの先から、包帯が巻かれていった。
「今夜くらいはこれで出血の心配はないわ。だけど・・・・・行った方がいいわね、医務室に」
「あ、ありがとう、
ロンは自分の手に巻かれている包帯が信じられないとばかりにまじまじと見た。
「あぁ、気にしないで。呪文は正しいし、ちゃんと包帯は巻けているわ」
ロンの驚いている様子をは不安になっていると勘違いし、呪文の正確さを話した。 すると、そのとき暗闇の中で窓を叩く音がした。
「ヘドウィグだ!」
ハリーは急いでフクロウを中に入れた。
「チャーリーの返事を持ってきたんだ!」
ロンが手紙を開けた。

ロン、元気かい?

手紙をありがとう。喜んでドラゴンを引き受けるよ。だけど、ここにつれてくるのは大変だ。来週、僕の友達が訪ねてくることになっている。 だから彼等にドラゴンを預けるのが一番いいと思う。問題は見られてはいけないということだ。 土曜日の真夜中、一番高い塔にそのドラゴンをつれてこれるかい?そしたら彼等が君達とあって暗いうちに運び出せる。
できるだけ早く返事をくれ。 がんばれよ・・・
                                  チャーリーより

四人は互いに顔を見合わせた。
「透明マントがある」
ハリーが言った。
「できなくはないよ・・・・・僕ともう一人とノーバートぐらいなら隠せるんじゃないかな?」
ハリーの提案に三人はすぐに同意した。
「私、抜けるわ」
はそう言ってハリーたちの意見を聞く前に急いで寝室に上がっていった。 自身も何故こんなことをしたのかわからないが、自分は行ってはいけないような気がしたのだ。
翌朝、がハーマイオニーと一緒に談話室に下りていくと深刻な顔をしたロンとハリーがいた。 ロンの手が二倍くらいに膨れ上がっていたのだ。 しかし、ロンはドラゴンに噛まれたことがばれるのを恐れてマダム・ポンフリーのところへ行くのをためらっていた。 だが、昼過ぎにはそんなことも言ってられなくなった。 傷口が気持ちの悪い緑色になったのだ。 どうやらノーバートの牙には毒があったようだ。 その日の授業が終った後、三人は急いで医務室に飛んでいった。 ロンは酷い状態で横になっていた。
「手だけじゃないんだ」
ロンが声をひそめた。
「もちろん手のほうもちぎれるように痛いけど。マルフォイが来たんだ。あいつ、僕の本を借りたいってマダム・ポンフリーに言ってきやがった。僕のことを笑いに来たんだよ。なんにかまれたか本当のことをマダム・ポンフリーに言いつけるって僕を脅すんだ――僕は犬にかまれたって言ったんだけど、たぶんマダム・ポンフリーは信じてないと思う――クィディッチの試合のとき、殴ったりしなけりゃよかった。だから仕返しに僕にこんな仕打ちをするんだ」
ハリーももハーマイオニーもロンをなだめようとした。
「土曜日の真夜中ですべてが終るわ」
ハーマイオニーの慰めはロンを落ち着かせるどころか逆効果になった。 ロンは突然ベッドに起き上がり、すごい汗をかき始めた。
「土曜零時!」
ロンの声はかすれていた。
「あぁ、どうしよう・・・・・大変だ・・・・・今、思い出した・・・・・チャーリーの手紙をあの本に挟んだままだ。僕達がノーバートを処分しようとしていることがマルフォイに知られてしまう」
三人がそれに答える間はなかった。 マダム・ポンフリーが入ってきてロンは眠らないといけないから、と病室から追い出してしまったのだ。
「いまさら計画は変えられないわ」
はハリーとハーマイオニーにそう言った。
「チャーリーにまたフクロウ便を送る暇はないし、ノーバートを何とかする最後のチャンスだし。危険でもやってみなくっちゃ。それにこっちには透明マントがあるってこと、マルフォイは知らないわ」
ハグリッドのところに行くとファングがしっぽに包帯を巻かれて小屋の外に座り込んでいた。 ハグリッドは窓を開けてから二人に話しかけた。
「中には入れてやれない」
ハグリッドはフウフウいっている。
「ノーバートは難しい時期でな・・・・・いや、決して俺の手に負えないほどではないぞ」
すると窓がカタカタ揺れた。 きっとノーバートの仕業だろう。 三人は一刻も早く土曜日が来て欲しいと思いながら城へ帰っていった。

日曜日、ノーバートは無事に引き取られたのだろうかと、は自分の隣のベッドを見た。 しかし、ハーマイオニーの姿はそこにはなく、は談話室に下りて行った。 すると、フレッドやジョージを中心としてグリフィンドール生が何か、噂話をしていた。
「ねえ、一体どうしたの?」
は興味津々で身を乗り出した。
「ああ、。グリフィンドールの得点が一晩にして150点も減っていたんだ。その犯人がハリーとハーマイオニーと・・・・・ああ、ネビルらしいんだ」
フレッドが疑わしくを見た。
、君、何か知ってる?」
「いいえ、何も・・・・・」
は眉をひそめた――ノーバートの引渡しに失敗したとしても、ネビルは関係ないはずだ。 そして、いそいでハリーとハーマイオニーの姿を探しに行った。 彼らは図書館にいた。
「ねえ、一体昨日の晩、何があったの?」
がすごい勢いで二人と問い詰めると、二人はバツが悪そうな顔をした後、ロンを迎えに行こうということで、図書館を出て、すべてを話してくれた。
「昨日、僕らがノーバートを塔に連れて行く途中、マルフォイに出会ったんだ。あいつはマクゴナガル先生に捕まって怒られてた。もちろん僕らは透明マントを着てたから気づかれなかった。で、そのままノーバートを引き渡して、塔の下に降りていったんだ。そのとき、僕らはマントをかぶってなかった。塔のてっぺんにおいてきてたんだ。もちろんフィルチに見つかってそのままマクゴナガル先生のところに連れてかれた。そしたらネビルがいたんだ。ネビルは僕たちにマルフォイが僕らを捕まえる、ってことを伝えようとしてたらマクゴナガル先生に見つかったらしいんだ・・・・・」
ハリーは苦々しげに言葉を吐き出した。
「そう、だから・・・・・」
がそういったそのとき、ハッフルパフの生徒が横を通った。
「ああ、ポッターだ。馬鹿なポッターは他の同類の一年と自分の寮の点数を150点も一気に減点された。馬鹿なポッターに馬鹿な仲間達」
ハッフルパフの生徒はおおっぴらにハリーたちの悪口を言った。 すると、今度はレイブンクローの生徒が通ってに声をかけた。
「やあ、、おはよう。馬鹿なポッターと一緒にいると馬鹿になっちゃうわよ!」
そんな悪口をは無視し、ハリーとハーマイオニーを慰めた。 しかし、二人にどんな言葉をかけても二人は落ち込む一方だった。
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沈む一方のハリーとハーマイオニーにかける言葉がありません・・・