結局、もう一つ心配を抱えることになってしまった。
ハグリッドが法を犯して小屋にドラゴンを隠しているのがバレたらどうなるんだろう。
「あーあ、平穏な生活って、どんなものかなぁ」
次々に出される宿題と来る日も来る日も格闘しながら、ロンがため息をついた。
ある朝、ヘドウィグがハリーにハグリッドからの手紙を届けた。
たった一行の手紙だ。
「いよいよ孵るぞ」
ロンは薬草学の授業をサボって、すぐ小屋に向かおうとしたが、ハーマイオニーがガンとして受け付けない。
「だって、ハーマイオニー、ドラゴンの卵が孵るところなんて、一生に何度も見られると思うかい?」
「授業があるでしょ。さぼったらまた面倒なことになるわよ。でも、ハグリッドがしていることがバレたら、私たちの面倒とは比べものにならないくらい、あの人ひどく困ることになるわ・・・・・」
「黙って!」
ハリーが小声で言った。
「どうしたんだい?」
「マルフォイがあそこにいるのよ・・・・・どこまで聞かれたかしら・・・・」
は深刻そうに言った。
ロンとハーマイオニーは薬草学の教室に行く間ずっと言い争っていた。
とうとうハーマイオニーも折れて、午前中の休憩時間に四人で急いでいくことにした。
授業の終わりを告げるベルが、塔から聞こえてくるやいなや、四人は移植ごてを放り投げ、校庭を横切って森のはずれへと急いだ。
ハグリッドは興奮で紅潮していた。
「もうすぐ出てくるぞ」
そういいながら四人を招きいれた。
卵はテーブルの上に置かれ、深い亀裂が入っていた。
中で何かが動いている。
コツン、コツンという音がする。
椅子をテーブルのそばに引き寄せ、みんな息をひそめて見守った。
突然キーッと引っかくような音がして卵がパックリ割れ、赤ちゃんドラゴンがテーブルにポイと出てきた。
可愛いとはとてもいえない。
やせっぽちの真っ黒の胴体に不似合いな、巨大な骨っぽい翼、長い鼻に大きな鼻の穴、こぶのような角、オレンジ色の出目金だ。
赤ちゃんがくしゃみをすると、鼻から火花が散った。
「すばらしく美しいだろう?」
ハグリッドがそう呟きながら手を差し出してドラゴンの頭を撫でようとした。
するとドラゴンは、尖った歯を見せてハグリッドの指に噛み付いた。
「こりゃすごい、ちゃんとママがわかるんじゃ!」
「ハグリッド、ノルウェー・リッジバック種ってどれくらいの早さで成長するの?」
ハーマイオニーが聞いた。
答えようとしたとたん、ハグリッドの顔から血の気が引いた――はじかれたように立ち上がり、窓際に駆け寄った。
「どうしたの?」
「カーテンの隙間から誰かが見ておった・・・・・子供だ・・・・・学校の方へかけて行く」
は急いで窓に駆け寄り、外を見た。
マルフォイにドラゴンを見られてしまった。
次の日、四人が魔法薬学のクラスへつくと、スネイプが今回は特別に三人、一グループでやると言い出した。
「絶対、僕たちをバラバラにするためさ」
ハリーがいまいましげに言った。
「だけど、どうしようもないわ」
がため息をつくと、その後ろからスネイプの声がした。
「ここの四人・・・・・ブラック、君はミスター・マルフォイたちのところへ行きたまえ」
そう言ってスネイプはさっさと移動してしまった。
四人は顔を見合わせた。
「偶然だと思う?」
ハーマイオニーが眉をひそめた。
すると、ハリーもロンも心配そうにを見たので、はわざと明るい声を出して言った。
「でも、出来る限り探ってみるわ。それに、誰が抜けるか争わなくってよかったじゃない」
「無理はしないで、」
心配そうな三人に見送られ、はマルフォイたちのグループに移動した。
「やあ、」
マルフォイはご機嫌そうにを見た。
「今日はあなたの用心棒の一人はお休みみたいね」
「いや、パンジーたちの方で一人足りないようでクラッブを行かせたんだ。そうしたら、君と話せると思ってね」
マルフォイは不敵に笑った。
そして、いきなりに向き直るとくどくどとお説教を始めた。
「、まだあの木偶の坊たちと付き合っているのか?君の両親も頭が可笑しいけど、ポッター家の連中だってそれ以上に頭が可笑しいんだ。それにマグルと付き合うなんてもってのほかだ」
だってこんなのを聞かされて黙っていたくはなかったが、どうやらスネイプの方もグルらしく、厳しくの方を見ていた。
「マルフォイ、早く魔法薬を作り始めましょうよ。私たちだけよ、始めてないの」
は出来るだけ機嫌良く笑ってマルフォイの説教を止めた。
「そうだな。話は作りながらでも出来る」
そういって作業を始めたマルフォイの手先はスネイプが気に入るのも頷けるような正確さだった。
「案外、手先が器用なのね」
は思わずそう言った。
「君ほどじゃないさ」
珍しく自分を謙遜したマルフォイには目を丸くした。
「あなたでも謙遜することはあるのね」
「そりゃあるさ。僕が嫌味で傲慢な弱いものいじめが好きなやつだとでも思ってたのか?」
「あら、その通りじゃない。なにか違う?」
マルフォイは手を休め、を見た。
「、僕を怒らせない方が身のためだ。僕は男で君は女だ。いくら威勢が良くてもこの事実は変えられない」
「私を襲ったってなんの利益もないわよ」
は平静を装い、答えた。
「だけど、それでショックを受けるやつも何人かいるだろう?向こうの列で作業しているポッ――」
「やめて!」
は今が授業中なのも忘れ、叫んだ。
すると、すぐさまスネイプが来た。
「何事だ」
冷たい目でを見た。
「僕が材料を切っていて、手元が狂い、自分の手を切りそうになったので、彼女は叫んだんです、スネイプ先生」
マルフォイはスネイプに見えないようにハリーの顔を盗み見た。
ハリーの顔にはを心配しながらも、マルフォイに一発食らわせたいと書いてあった。
「マルフォイ、手元には十分注意するように。グリフィンドール2点減点」
そういってスネイプはグリフィンドールの机を見回り始めた。
ここのサイトには裏なんてありませんっ!!笑