The conversation 会話
四人は闇の魔術に対する防衛術のクラスで狼人間に噛まれた時の応急処置の授業を受けていた。
「僕、試合に出るよ」
ハリーは三人に言った。
「出なかったらスリザリンの連中はスネイプが怖くて僕が試合にでなかったと思うだろう。目にものを見せてやる・・・僕たちが勝って、連中の顔から笑いを拭い去ってやる」
「グラウンドに落ちたあなたを、わたしたちが拭い去るようなハメにならなければね」
ハーマイオニーが言った。
「ハリー、気をつけて」
「心配しないで、
ハリーはに笑いかけたが、顔は引きつっていた。

次の日の昼過ぎ、三人は更衣室の前で「幸運を祈る」とハリーを見送った。 しかし、言葉とは裏腹には、はたして再び生きてハリーに会えるかと、不安でしかたなかった。 は試合など、見たくもなかったが、スネイプがハリーを傷つけようとしたとき、ロンだけでは心配だというハーマイオニーの意見をどうしても断れず、一緒にクィディッチを観戦するとこになった。 三人はネビルの隣に座った。
「いいこと?忘れちゃだめよ。ロコモーター モルティスよ」
ハーマイオニーが杖を袖の中に隠そうとしているロンにささやいた。
「わかってるったら。ガミガミ言うなよ。それにだっているんだから。彼女一人だって大丈夫だろ?」
「人に頼りっぱなしっていうのはいけないと思うわ!」
ロンとハーマイオニーはを挟み、言い争いを始めたが、はそんなことを気にする余裕もなかった。
「二人とも、スネイプの顔、見て。あんな意地悪な顔、見たことない」
「本当だわ。何事もなく済むといいけど・・・・・さあ、プレイ・ボールよ」
とハーマイオニーが心配そうに見つめる中、試合は始まった。 すると、そのとき、誰かがロンの頭を小突いた。
「アイタッ!」
「ああ、ごめん。ウィーズリー、気がつかなかったよ」
マルフォイはクラッブとゴイルに向かってニヤッと笑った。
「この試合、ポッターはどのくらい箒に乗っていられるかな?誰か、賭けるかい?ウィーズリー、どうだい?」
ロンは答えなかった。 ジョージがブラッジャーをスネイプの方に打ったという理由で、スネイプがハッフルパフにペナルティー・シュートを与えたところだった。
「グリフィンドールの選手がどういう風に選ばれたか知ってるかい?」
しばらくしてマルフォイが聞こえよがしに言った。 ちょうどスネイプが何の理由もなくハッフルパフにペナルティー・シュートを与えたところだった。
「気の毒な人が選ばれているんだよ。ポッターはの家に居候していて家がないし、ウィーズリー一家はお金がないし・・・・・ネビル・ロングボトム、君もチームに入るべきだね。脳みそがないから」
ネビルは顔を真っ赤にしたが、座ったまま後ろを振り返ってマルフォイの顔を見た。
「マルフォイ、ぼ、僕、君が十人束になってもかなわないくらいの価値があるんだ」
ネビルがつっかえながら言った。 マルフォイもクラッブもゴイルも大笑いした。 ロンは試合から目を離す余裕がなかったが、ネビルに賛成した。
「ロングボトム、もし脳みそが金で出来ているなら、君はウィーズリーより貧乏だよ。つまり生半可な貧乏じゃないってことだな」
はハリーのことが心配で、神経が張り詰めて切れる寸前だった。
「マルフォイ、これ以上ここで口を開かないで。もし開いたら・・・・・」
!」
突然、ハーマイオニーが叫んだ。
「ハリーが!」
「何、どこ?」
ハリーが突然ものすごい急降下をはじめた。 その素晴らしさに観衆は息を呑み、大歓声を上げた。 ハーマイオニーは立ち上がり、指を十字に組んだまま口にくわえ、は瞬きもせずに、ハリーの動きを見つめた。 ハリーは弾丸のように地上に向かって突っ込んでいく。
「運がいいぞ。ウィーズリー、ポッターはきっと地面にお金が落ちているのを見つけたのに違いない!」
マルフォイがそう言ったとたん、ロンはついに切れ、マルフォイが気がついたときにはもうロンがマルフォイに馬乗りになっていた。 クラッブとゴイルはマルフォイを助けようとしたが、が縛り術をかけたので、助けることは出来なかった。 すると、ネビルがロンに助勢した。 は流石に二対一では不公平なので、ゴイルの方だけ呪文をといてやった。
「ハリー・・・・・!」
は彼らの戦いより、ハリーの試合の方が気になるようで、すぐに試合観戦にもどった。 しかし、そのときにはハリーの手にスニッチが握られていた。

「ハリー、無事に終って本当によかったわ」
は一人で更衣室の前でハリーを待っていた。 ロンはマルフォイとの喧嘩で医務室に行っているし、ハーマイオニーはそれの付き添いだ。
、本当だよ、素晴らしいことばかりだ」
ハリーはまだ興奮しているようだった。
「箒置き場に行くけど、一緒に行くだろう?」
がコクンと頷いたのを確認すると、ハリーは先立って歩き始めた。
「ロンとハーマイオニーは?」
「ロンはマルフォイとの喧嘩で怪我したから医務室。ハーマイオニーはそれの付き添い。あ、ネビルもいるのよ。勇敢に一人でゴイルに立ち向かったんだから。クラッブの方は私が縛り術をかけておいたの」
の行いにとても驚いたハリーだったが、これもらしい、と思って笑顔がこぼれた。 すると、突然、が大真面目な顔になり、ハリーに向き直った。
「ハリー、私の家から出て行かないよね?」
「出て行かないよ。シリウスだって、だっている。父さんも母さんも幸せそうだし。――何か言われたのかい?」
ハリーははっとしてを見た。
「マルフォイが・・・・・ハリーは居候だって・・・・・」
は俯いた。
「大丈夫、元気を出して。僕はあの家が好きだし、家がないことを気になんかしていない。せっかく試合に勝ったんだ。浮かない顔しないで」
ハリーは優しくの頭を撫でた。 は嬉しそうにハリーを見た。
「昔から何かあったら頭を撫でてくれたよね」
「でも、君は父さんに撫でられたら泣きそうだったよね、いつも」
二人は顔を見合わせて笑った。 そんなことをしているうちに二人は箒置き場に着いた。 何気なく外を見ていたは大声でハリーを呼んだ。
「ハリー、ハリー、スネイプよ!禁じられた森の方へ向かっているわ!」
すると、ハリーは急いでに手近な箒に乗るようにいうと、城の上までそっと滑走し、スネイプの後をつけた。 はハリーに置いて行かれないように、癖の強い箒を手なずけながら進んだ。 木が深々と繁り、ハリーとはスネイプを見失った。 円を描きながらだんだんと高度を下げ、木の梢の枝に触るほどの高さになったとき、誰かの話し声が聞こえた。 ハリーはに合図しながら、ひときわ高いぶなの木に音を立てずに降りた。 もスネイプに気づかれないようにハリーの跡を追うと、そっと枝を上り、葉っぱの影から下を覗き込んだ。 木の下の薄暗い平地にスネイプがいた。 一人ではなかった――クィレルがいた。
「・・・・・な、なんで・・・・・よりによって、こ、こんな場所で・・・・・・セブルス、君にあ、会わなくちゃいけないんだ」
「このことは二人だけの問題にしようと思いましてね」
スネイプの声は氷のようだった。
「生徒諸君に『賢者の石』のことを知られてはまずいのでね」
二人は身を乗り出した。 クィレルが何かもごもご言っている。 スネイプがそれを遮った。
「あのハグリッドの野獣をどう出し抜くか、もうわかったのかね?」
「でも、セブルス・・・・・私は・・・・・」
「クィレル、私を敵に回したくなかったら」
スネイプはグイっと一歩前に出た。
「ど、どういうことなのか、私には・・・・・・」
「私が何が言いたいか良く分かっているはずだ・・・・・あなたの怪しげなまやかしについて聞かせてもらいましょうか」
「で、でも私は、な、何も・・・・・」
「いいでしょう」
スネイプがさえぎった。
「それでは近々、またお話することになりますな。もう一度良く考えて、どちらに忠誠を尽くすのか決めておいていただきましょう」
スネイプはマントを頭からスッポリかぶり、大股に立ち去った。
ハリーたちはこの事実をロンとハーマイオニーに知らせようと出来るだけ急いで大広間に向かった。 二人の反応は思った通りだった。
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スネイプの黒さもだけど、マルフォイの意地悪さにも驚きます。(^^;)